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  • 昭和52年度|
  • 第3章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第3 日本電信電話公社|
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  • 役務

プッシュ式ボタン電話装置の修理に当たり、修理に要する作業時間の算定が適切でなかったため、契約額が割高になったもの


(86) プッシュ式ボタン電話装置の修理に当たり、修理に要する作業時間の算定が適切でなかったため、契約額が割高になったもの

科目 (損益勘定) (項)保守費
部局等の名称 中国電気通信保全工事事務所
修理の概要 加入電話の移転等の各種工事により撤去したプッシュ式ボタン電話装置(T−104P電話機ほか8機種)のうち、再用可能なもの3,264個をそれぞれの製造業者に修理させるもの
契約額 45,269,013円
契約の相手方 日本通信工業株式会社ほか3会社
契約 昭和52年4月〜53年1月 67回 随意契約
支払 昭和52年12月〜53年3月 67回

 この修理の予定価格の積算に当たり、修理に要する作業時間の算定が適切でなかったため、契約額が約600万円割高になったと認められる。

(説明)
 中国電気通信保全工事事務所(以下「中国保全事務所」という。)で、加入電話の移転工事等に伴って撤去したプッシュ式ボタン電話装置(注1) (T−104P電話機ほか8機種)のうち再使用可能なものを修理して使用することとし、この電話装置が技術的に新しい装置であり、また、修理専門業者の受注体制も整っていないことから、技術力のあるこの電話装置の製造業者に修理させるのが適当であるとして、昭和50年度以降製造業者に修理を請け負わせており、52年度では、総計3,264個の修理を確定契約により請け負わせ実施している。

 しかして、本件各契約の予定価格の積算についてみると、予定価格のうち80%以上を占める労務費については、その算定の基礎となる修理に要する作業時間(以下「修理工数」という。)は、本件電話装置が在来型の回転式ボタン電話装置(注2) に類似しているがこれに比べて機構的に複雑であるとして、この点を加味して回転式ボタン電話装置の修理工数を推定により割増ししたものを基とし、これに修理作業を要する状況を勘案して修理工数を決定し、それに1時間当たり加工費1,830円を乗じて労務費を算出し、更に、使用材料費等を加えたものを修理費の予定価格としていた。その結果、本件電話装置の1個当たり平均修理工数は、機種によって異なるが、4時間579から9時間827、また、1個当たりの平均修理費は11,911円から25,065円となっている。

 他方、本件電話装置で修理を要するものは中国保全事務所以外の東京電気通信保全工事事務所ほか4電気通信保全工事事務所(注3) (以下「東京保全事務所等」という。)においても発生しており、52年度当時その修理を中国保全事務所と同一の製造業者に請け負わせて実施していたので、本院においてその状況を調査したところ、東京保全事務所等においては、この電話装置がいずれも新しい製品であり、確定契約によって修理を請け負わすにはなお不確定な要素が多いとし、これらの修理に当たっては、その修理実績を十分に参考とすることとし、概算額で請け負わせた後、これらの業者から対象機種ごとの修理実績を提出させ、これを調査検討のうえ契約額を確定していた。そして、そのように実績を勘案して修理費を算定した結果、これら電話装置1個当たりの平均修理工数は機種によって異なるが、3時間470から6時間007、また、1個当たり平均修理費は9,124円から18,180円となっていた。

 しかし、中国保全事務所では、上記のような本件電話装置の修理の実績工数を調査しなかったばかりでなく東京保全事務所等における積算事例も調査しないまま、推定により修理工数を計算しその修理費を算定しているため、東京保全事務所等の平均修理費に比べて17%から38%も割高な修理費となっており、適切とは認められない。
 いま、仮に上記の東京保全事務所等の対象機種ごとの平均修理工数のうち最高となっているものによって、本件修理費を修正計算しても39,190,825円となり、本件契約額はこれに比べて約600万円割高であったと認められる。

(注1)  プッシュ式ボタン電話装置 ダイヤル部分がプッシュ式となっていて、外線1回線、内線4回線まで使用でき、内線の切換等を押ボタンで行う家庭用の電話装置(「ホームテレホン」と呼ばれている。)及び外線2〜6回線、内線20回線まで使用でき、内線の切換等を押ボタンで行う業務用の電話装置(「ビジネスホン」と呼ばれている。)

(注2)  回転式ボタン電話装置 ダイヤル部分が在来の電話機と同じ回転式となっているホームテレホン及びビジネスホン

(注3)  東京電気通信保全工事事務所ほか4電気通信保全工事事務所 東京、近畿、四国、東北、北海道各電気通信保全工事事務所

(参考図)

(参考図)