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  • 昭和52年度|
  • 第3章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第3 日本電信電話公社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

とう道工事における材料費の積算について


とう道工事における材料費の積算について

 日本電信電話公社において、通信ケーブルを布設する方法としては、地下に直接埋設する方式、地下の管路内に収容する方式及びとう道(トンネル)内に収容する方式とがあるが、近年、都市内においては、大規模、複雑化している既設通信網を整備拡充し、防災を図るとともに、将来の多様な電気通信サービスに対応することを目的としてとう道の新設が積極的に推進されており、その工事量は毎年増加する傾向にある。
 しかして、東京電気通信局ほか6電気通信局(注1) が昭和52年度中に施行している大森局舗装先行工事(土木)ほか53工事(工事費総額110億0242万円)について検査したところ、次のとおり、とう道を建設する際の親ぐい横矢板土留工(注2) に使用する横矢板及びとう道等に通信ケーブル布設用の鋼材を設置するためのアンカーボルトの材料費の積算が適切でないと認められた。

(1) 親ぐい横矢板土留工費(設置面積108,062m2 分)については、公社が制定した「電気通信設備請負工事予定価格の積算要領(土木)」(以下「積算要領」という。)及び「電気通信設備請負工事予定価格のための複合単金表(土木)」の複合単金を適用して、5億2333万余円と積算していた。
 しかして、複合単金は、横矢板の設置や撤去など各種工程ごとに労務費、材料費及び機械経費等を算出合計して工程ごとの単位数量当たりの金額として公社が示しているものであり、本件横矢板に関する複合単金の内容についてみると、横矢板の材料費については、一律に厚さ6cmの松矢板を1m2 当たり0.06m3 使用する(所要量は埋め殺し分(注3) については全量、築造工事完了後撤去する分についてはその60%)ものとし、その単価を物価資料による各電気通信局所在都市(札幌を除く。)における長さ4m物の小口取引価格1m3 当たり41,600円から51,000円の単純平均により1m3 当たり47,000円として算定しており、上記の積算額のうちに含まれている横矢板の材料費相当額は横矢板5,332m3 分2億5062万余円となっている。

 しかし、各電気通信局では、施工の安全性を確認するなどのため、各工事の設計の際、土留工等の仮設構造物についても設計計算をしていて、各工事ごとに掘削する深さ、土質等に応じた松矢板の厚さ、数量等が判明しているのであるからこれを計算の基礎とすべきであり、他方、親ぐいの間隔は1.5m程度となっているのであるから松矢板の取引価格については4m物より低価な2m物によることとすべきであり、かつ、地域及び時期によって相当の開差があり、また1工事当たりの所要量が多量に上っているのであるから施行地域及び施行時期ごとの大口価格によるべきであったと認められた。したがって、これらの点を適正なものに修正して積算したとすれば、横矢板の所要量は5,366m3 となるが材料費相当額が1億9704万余円となり、積算額を約5300万円程度低減できたと認められた。

(2) とう道及び立坑等に通信ケーブルを布設するなどのために必要な鋼材の取付けを行う金物設備工費については、前項同様積算要領及び複合単金を適用して、3億2418万余円と積算していた。この複合単金の内容についてみると、鋼材をとう道のコンクリート壁面に固定するせん孔式アンカーボルトの材料費については、その所要数量をとう道の形式別、種類別の標準所要数量にとう道の形式別、種類別の推定施工比率を乗じるなどして鋼材1トン当たり一律に74.7本(52年1月までは83本)とし、その単価は物価資料に基づく小口価格1本当たり280円又は290円として算定しており、上記の積算額のうちに含まれているアンカーボルトの材料費相当額は251,100本分7074万余円となっている。

 しかし、上記の鋼材1t当たりアンカーボルトの所要数量は鋼材使用量が多い割りにその所要数量が少ない立坑や大型な特殊断面部の場合を計算の基礎に含めないで、最も所要数量が多いとう道の直線部の場合だけを基礎として算出しているものであったり、上記の推定施工比率が最近の施工の実態とかなりかけはなれていて実情に沿わないものとなっているのにこれをそのまま使用して算定したものであって適切とは認められず、前項同様事前に実施している設計計算により判明している数量と著しい開差を生じている。また、単価については前項同様小口価格を採用して一律に計算しているが、1工事当たりの所要数量が多量に上るものについては大口価格によるべきであると認められた。
 したがって、これらの点を適正なものに修正して積算したとすれば、アンカーボルトの所要量は148,109本となり、材料費相当額も3650万余円となって、積算額を約3400万円程度低減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、日本電信電話公社では53年10月に積算要領及び複合単金に所要の改正を加え、工事の実態に合った積上げ積算をすることとし、同年12月以降契約するものからこれを適用する処置を講じた。

(注1)  東京電気通信局ほか6電気通信局 東京、関東、東海、近畿、九州、東北、北海道各電気通信局

(注2)  親ぐい横矢板土留工 H形鋼くいを一定の間隔で地中に打ち込み、又はせん孔して建て込み、掘削の進行に伴って、くい間に矢板を横にそう入して土留めする工法

(注3)  埋め殺し 土留矢板など地表下に施工した仮設の工作物を、目的とする工事が完了した後、撤去回収しないで地中に埋没させてしまうこと

(参考図)

(参考図)とう道工事における材料費の積算についての図1