会計名及び科目 | (款)住宅等建設費 (項)住宅建設費 | |||
1 | 部局等の名称 | 中部支社 | ||
工事名 | (1) 50-長期特別分譲東自由ケ丘団地C地区建築工事 | |||
(2) 51-長期特別分譲東自由ケ丘団地E地区建築工事 | ||||
工事の概要 | 東自由ケ丘団地のC地区1棟92戸(3DK、4LDK、11階建)及びE地区1棟132戸(3LDK、11階建)の建築工事 | |||
工事費 | (1) 770,320,000円 | } | 計1,724,720,000円 | |
(2) 954,400,000円 | ||||
請負人 | (1) 住友建設株式会社 | |||
(2) 小田急建設株式会社、水野建設株式会社共同企業体 | ||||
契約 | (1) 昭和51年3月 指名競争契約 | |||
(2) 昭和51年4月 指名競争契約 | ||||
しゅん功予定期日 | (1) 昭和53年12月9日 | |||
(2) 昭和53年12月9日 | ||||
検査 (既済部分の確認) |
(1) 昭和51年12月〜53年6月(9回) | |||
(2) 昭和52年3月〜53年4月(8回) | ||||
既済部分に対する 代価の支払 | (1) 昭和51年8月〜53年6月(10回) | |||
(支払額 701,580,000円) | ||||
(2)昭和51年9月〜53年4月(9回) | ||||
(支払額 863,280,000円) | ||||
2 | 部局等の名称 | 関西支社 | ||
工事名 | (1) 長期特別分譲千代田団地A地区建築その他工事 | |||
(2) 長期特別分譲千代田団地第2期A地区建築その他工事 | ||||
工事の概要 | 千代田団地のA地区4、5、6号棟70戸(3DK、3LDK、5階建)及び第2期A地区7、8、9、10号棟112戸(3LDK、6階建)の建築工事 | |||
工事費 | (1) 337,450,000円 | } | 計1,286,700,000円 | |
(2) 949,250,000円 | ||||
請負人 | (1) 株式会社浅川組 | |||
(2) 大末建設株式会社 | ||||
契約 | (1) 昭和51年3月 指名競争後の随意契約 | |||
(2) 昭和51年8月 指名競争契約 | ||||
しゅん功検査 | (1) 昭和52年11月 | |||
(2) 昭和53年4月 | ||||
支払 | (1) 昭和51年10月〜52年12月(5回) | |||
(2) 昭和51年10月〜53年4月(6回) |
上記の各工事は、住宅建築工事の施行に当たって、監督及び検査が適切でなかったため、基礎ぐいの施工が設計と相違した不良なものとなっていて、基礎ぐい工事費相当額が1において136,704,000円、2において82,225,000円、計218,929,000円不当となっていると認められる。
これを1、2の別に説明すると以下のとおりである。
(説明)
1 中部支社では、昭和54年4月及び55年4月に分譲を予定して、名古屋市東自由ケ丘団地内に上記の建築工事を53年12月上旬までを工期として施行しているが、これらの各工事について検査したところ、次のような事態が見受けられた。
すなわち、上記建築工事のうち、建物本体の荷重を支持するために施工する基礎ぐいについては、C地区建築工事(以下「C地区」という。)において219本(工事費相当額71,204,000円)を、また、E地区建築工事(以下「E地区」という。)において296本(工事費相当額65,500,000円)をそれぞれ51年10月から12月までの間に施工し、これらすべてが設計どおり施工されているとして、既済部分確認の検査を完了し、52年12月及び53年3月までに、この基礎ぐい工事費総額相当分(計136,704,000円)を上記部分払い額のうちに含めて支払っている。
しかして、この基礎ぐい工事は、施工に伴う騒音及び振動等の発生を抑制するため、PCぐいを使用した埋め込みぐい工法のうちのセメントミルク工法(注1) を採用したもので、設計書、図面及び仕様書等契約内容を明らかにした書類によると、径60cmのオーガースクリュー(注2) で地盤を深さ19mから24m付近に所在する支持層まで掘削し(この際、掘削孔壁の崩落を防ぐためベントナイトとセメントと水の混合溶液を孔中に満たしておく。)、支持層に達したらオーガースクリューの先端から孔底部にセメントミルク(1m3 当たりセメント969kg、水692kg配合)1.72m3 から2.15m3 を注入し(この際、上記の溶液はセメントミルクより比重が小さいので上に押し上げられる。)、オーガースクリューでこのセメントミルクと支持層の砂れきとをかくはんして混合させた後、孔の深さに応じて長さ20mから25mのPCぐい(径50cm)を孔と中心が一致するように沈下させてくいを支持地盤に建て込むとともに、セメントミルクを地盤面までくいの周囲に充満させ、このセメントミルクの硬化によって、地盤とPCぐいとが一体化して建物基礎としての必要な支持力を得ることとなっており、また、この硬化後のセメントミルクの圧縮強度については、152kg/cm2 が基準とされている。
しかるに、施工した基礎ぐいのうち117本(C地区50本、E地区67本)について建築物の基礎コンクリート底面から1〜10m程度の深さまでくいの外側を掘削して調査したところ、うち102本(C地区48本、E地区54本)は、基礎コンクリート底面からC地区においては0.45mから4.45m(平均2.04m)、E地区においては0.45mから7.30m(平均2.71m)の深さまでの間は、いずれも硬化したセメントミルクが見受けられず、くい周面に空げきが生じていたり、土砂等が入り込んでいたりしているなど、設計と相違した施工状況となっていた。
また、くい下部のセメントミルクが存在している箇所から試料を採取して圧縮強度を測定してみたところ、C地区では平均65kg/cm2
、E地区では平均51kg/cm2
と強度が低いものとなっていた。
上記のように、基礎ぐいの施工は、監督及び検査が適切でなかったため、設計と相違した不良なものとなっていて、本件基礎(工事費相当額136,704,000円全額支払済み)は、くい基礎としての強度が設計に比べて低いものとなっていると認められる。
2 関西支社では、54年3月及び8月に分譲を予定して、大阪府河内長野市千代田団地に前記の建築工事を施行しているが、これら各工事について検査したところ、次のような事態が見受けられた。
すなわち、上記建築工事のうち建物本体の荷重を支持するために施工する基礎ぐいについては、A地区建築その他工事のうち4号棟工事(以下「4号棟」という。)において118本(工事費相当額16,422,000円)、第2期A地区その他工事のうち9号棟工事(以下「9号棟」という。)において219本(工事費相当額36,918,000円)、10号棟工事(以下「10号棟」という。)において219本(工事費相当額28,885,000円)をそれぞれ施工し、設計どおり施工されているとしてしゅん功検査を了している。
しかして、この基礎ぐい工事は、施工に伴う騒音及び振動等の発生を抑制するため、PCぐいを使用した埋め込みぐい工法のうちのセメントミルク工法を採用したもので、設計書、図面及び仕様書等契約内容を明らかにした書類によると、径50cmのオーガースクリューで深さ10mから19m付近に所在する支持層まで掘削し(この際、掘削孔壁の崩落を防ぐためベントナイトとセメントと水の混合溶液を孔中に満たしておく。)、支持層に達したらオーガースクリューの先端から孔底部にセメントミルク(1m3 当たりセメント969kg、水692kg配合)0.58m3 を注入し(この際、上記の溶液はセメントミルクより比重が小さいので上に押し上げられる。)、オーガースクリューでこのセメントミルクと支持層の砂れきとをかくはんして混合させた後、更に、その上部にオーガースクリューの先端からくい周辺固定用ミルク(1m3 当たりセメント298kg、ベントナイト37.2kg、水892kg配合)0.18m3 から0.81m3 を注入し(この際にも、比重が小さい上記の溶液が上に押し上げられる。)、その後、孔の深さに応じて長さ11mから20mのPCぐい(径40cm)を孔と中心が一致するように沈下させてくいを支持地盤に建て込むとともに、セメントミルクとくい周辺固定用ミルクを地盤面までくいの周囲に充満させ、このセメントミルク及びくい周辺固定用ミルクの硬化によって地盤とPCぐいとが一体化して建物基礎としての必要な支持力を得ることとなっており、また、この硬化後のセメントミルクの圧縮強度については200kg/cm2 が基準とされている。
しかるに、施工した基礎ぐいのうち52本(4号棟18本、9号棟10本、10号棟24本)について建築物の基礎コンクリート底面から2〜4.3m程度の深さまでくいの外側を掘削するなどして調査したところ、うち51本(4号棟18本、9号棟9本、10号棟24本)は、基礎コンクリート底面から4号棟においては0.45mから8.4m(平均4.51m)、9号棟においては1.8mから6.8m(平均3.82m)、10号棟においては1.0mから5.1m(平均2.83m)の深さまでの間は、いずれも、硬化したくい周辺固定用ミルク又はその下部に施工するセメントミルクが見受けられず、くい周面に空げきが生じていたり、土砂等が入り込んでいたりなどしており、設計と相違した施工状況となっていた。このような施工状況であったことから、上記の調査したくいのうちから4号棟の長さ12.2mのくい2本を選んで更にくいの最下端まで掘削のうえ調査したところ、うち1本については、くいの最下端に至るまでくいと地盤との間に硬化したセメントミルク及びくい周辺固定用ミルクが見受けられず、くいの最下端に接している地盤は掘削時に掘りゆるめられた状態で、基礎ぐいとしての支持力が得られないものとなっており、また、他の1本についても、基礎コンクリート底面から5m以下の部分はセメントミルクが充てんされてはいるものの、そのうち上部2m程度は、採取した試料の圧縮強度が平均41kg/cm2 しかなく、その下部は、くいの最下端まで粘土状の粗悪なものとなっていた。
上記のように、基礎ぐいの施工は、監督及び検査が適切でなかったため、設計と相違した不良なものとなっていて、本件基礎(工事費82,225,000円)は、くい基礎としての強度が設計に比べて低いものとなっていると認められる。
(注1) 埋め込みぐい工法のうちのセメントミルク工法 PCぐいや、鋼ぐいなどの既製ぐいを、打撃によらないで設置する工法の一種であって、くいを埋め込もうとする位置をあらかじめ掘削したうえ、その孔の中にくいを建て込んで、孔とくいの間にセメントミルクを注入硬化させて地盤とくいを一体化する工法
(注2) オーガースクリュー 土を掘り取るための機械の一種。らせん形をしていて、くい孔を掘削するもので、先端部に溶液の噴出口がある。
(参考図)