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  • 昭和52年度|
  • 第3章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第6 日本道路公団|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

高速道路新設工事における土工工事費の積算について処置を要求したもの


高速道路新設工事における土工工事費の積算について処置を要求したもの

(昭和53年11月24日付け53検第423号 日本道路公団総裁あて)

 日本道路公団では、自動車交通の発達に寄与することを目的とする高速自動車国道整備計画を実施するため、建設大臣の認可を受けて高速道路建設工事を毎年多数実施しているが、そのうち、札幌建設局ほか8建設局(注) が昭和52年度に施行している土工事を主体の道央自動車道志文工事ほか65工事(工事費総額1360億9050万円)について検査したところ、次のとおり、積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

1 特殊自動車運転手及び自動車運転手の労務単価について

 上記66工事のうち、道央自動車道志文工事ほか62工事は、いずれも機械施工による土量が多量に上るものであるが、これら63工事の道路掘削等の工費の積算(積算額合計277億6141万余円)についてみると、ブルドーザ等の特殊自動車運転手及びダンプトラック等の自動車運転手の労務費については、同公団制定の「土木工事積算要領」(以下「積算要領」という。)により、運転手の基本賃金に当該機械の供用日数に対する実働日数及び機械のか働率による補正を行うほか、期末手当等臨時的給与の割増しを行って単価を算出し、これを基として運転手の労務費を算定(積算額合計70億8296万余円)している。
 しかして、積算要領で定めている運転手の基本賃金は、農林、運輸、建設の3省が協議して決定した公共工事設計労務単価を採用しているものであるが、この労務単価は基本給、基準内手当、現物支給評価額等の定常的給与だけでなく賞与等の臨時的給与も含めて決定されているものであるから、運転手の労務単価の算出に当たって更に期末手当等の割増しをする必要はなかったと認められる。
 いま、仮に運転手の労務単価算出に当たり期末手当等の割増しを行わなかったとすると、前記労務費の積算額を約10億2900万円程度低減できたと認められる。

2 道路掘削等における路体部盛土の転圧費について

 上記66工事のうち、道央自動車道糸井東工事ほか41工事は、いずれも路体部盛土を砂質土等で施工しているものであるが、これら42工事における道路掘削等の工費の積算(積算額合計132億0699万余円)についてみると、路体部盛土の砂質土等16,047,455m3 の締め固め作業は、タイヤローラ(8〜20t自走式)で施工することとし、その転圧費については、積算要領により、タイヤローラの転圧回数を1層の仕上がり厚さ30cmにつきすべて16回として、締め固め工費を算定(積算額合計7億2705万余円)している。
 しかして、同公団では50、51両年度に掘削機械等による施工方法、締め固め方法等を検討するため、契約締結後、工事施行の初期において請負人にモデル施工を行わせており、その結果により、本件各工事と同様な土質の締め固め作業については転圧回数を上記積算の2分の1程度として指示しており、また、本件各工事におけるモデル施工の結果も同程度となっていて、これに基づいて転圧回数を請負人に指示している状況である。
 したがって、工事費の積算に当たっては、上記の実態に即して積算すべきであったと認められる。
 いま、仮に転圧回数を同公団積算の2分の1としたとすると、前記締め固め工費の積算額を約3億3700万円程度低減できたと認められる。

3 構造物掘削等の埋めもどし工費について

 上記66工事のうち、道央自動車道糸井東工事ほか25工事は切土区間において架道橋等の構造物を多数施工するものであるが、これら26工事における構造物掘削等の工費の積算(積算額合計54億0099万余円)についてみると、架道橋の橋台、橋脚等の掘削箇所の埋めもどし及び切土部に位置する構造物の埋めもどしの土量431,197m3 の埋めもどしの工費については、積算要領により、埋めもどし土砂の敷きならし作業はすべて人力で、また、転圧は振動ローラでそれぞれ施工するものとして算定(積算額合計5億7204万余円)している。
 しかして、上記のうち、敷きならしについてみると、すべて人力施工としているのは作業箇所が狭あいで機械施工が困難なためであるとしているが、本件各工事で埋めもどしを行う上記箇所のうちには、1箇所当たりの土量が多量で、敷きならし幅も4m以上あって、小型ブルドーザによる施工が可能であり、かつ経済的であると認められる箇所が相当数あり、これらについては機械施工によるものとして積算すべきであったと認められる。
 いま、仮に本件各工事において、埋めもどし1箇所当たりの土量が500m3 以上で、敷きならし幅が4m以上あって小型ブルドーザで施工することが可能と認められる約159,000m3 について、敷きならし作業を機械施工するものとしたとすると、埋めもどしの工費の積算額を約1億2300万円程度低減できたと認められる。
 このような事態を生じたのは、労務賃金の内容の検討が十分でなかったこと、施工の実態を積算要領に反映していなかったことによると認められる。
 ついては、同公団においては今後も引き続き同種工事を多数施行するのであるから、前記各項についてその実態を早急に調査検討して、積算要領を適切なものに改定し、もって予定価格積算の適正を期する要があると認められる。

(注)  札幌建設局ほか8建設局 札幌、仙台、東京第一、東京第二、新潟、名古屋、大阪、広島、福岡各建設局