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  • 昭和54年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第8 通商産業省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

中小企業設備貸与事業における繰上げ貸与料の取扱いについて処置を要求したもの


 中小企業設備貸与事業における繰上げ貸与料の取扱いについて処置を要求したもの

(昭和55年11月25日付け55検第549号 中小企業庁長官あて)

 中小企業庁では、中小企業近代化資金等助成法(昭和31年法律第115号)に基づき、中小企業の設備近代化を促進するために、都道府県が中小企業設備貸与事業を行う機関(注1) (以下「貸与機関」という。)に対して貸与設備の購入に要する資金を貸し付ける場合、当該都道府県に対し、その貸付けに要する資金の一部に充てるため中小企業機械類貸与補助金を交付することとしており、その交付額は、昭和52年度22億7897万余円、53年度20億5915万余円、54年度21億4103万余円に上っている。
 この事業は、貸与機関が、中小企業者の申込みに基づいて購入した機械類を、原則として貸与期間4年半(公害防止施設については11年半)で当該中小企業者に貸与し、この間に貸与設備の購入価格に相当する金額を貸与料として賦払で徴収し、完済後に所有権を移転するものである。そして、貸与機関においては、この事業の実施に当たっては毎年度貸与設備の購入に関する事業計画を作成し、都道府県知事の承認を受け、承認後この事業計画に基づいて貸与設備の購入に要する資金を都道府県及び中小企業金融公庫(沖縄県にあっては沖縄振興開発金融公庫)からそれぞれ2分の1ずつ借り入れることとしている。

 また、都道府県における貸与機関に対する貸付けは、無利子で、その償還期間は原則として5年(公害防止施設については12年)、償還方法は1年すえ置き4年(同11年)均等の年賦又は半年賦償還となっている。そして、都道府県では、この貸付事業を行うため特別会計を設け、この特別会計の資金として既往の貸付金に係る貸与機関からの償還金、国からの補助金、補助金と同額の都道府県の一般会計からの繰入金等を充てており、貸付事業の実施に当たっては、毎年度、国の定める基準に従い設備貸与資金の貸付事業に関する事業計画を作成し、国の承認を得ることになっている。

  しかして、55年中、財団法人青森県中小企業振興公社ほか44貸与機関の52、53、54各年度における貸与料の受入状況等について調査したところ、同公社ほか42貸与機関(注2) において、貸与先から設備貸与に係る契約の約定による貸与料の賦払額のほかに、貸与先の事業の中止等の理由により約定期限前に繰上償還された貸与料(以下「繰上げ貸与料」という。)を受け入れており、その繰上げ貸与料の額は、52年度2億6358万余円、53年度3億1936万余円、54年度3億4887万余円と各年度とも多額に上っていて、これらはすべて当該貸与機関に滞留しており、貸与機関ではこれを余裕金として定期預金等に運用し、府県との約定償還期日まで保有している状況であった。そして、これらの54年度末現在における滞留金額は4億2441万余円(府県の貸付金相当額2億1220万余円(国庫補助金相当額1億0610万余円)、中小企業金融公庫の貸付金相当額2億1220万余円)となっていた。

 しかし、上記の繰上げ貸与料は、府県の特別会計に償還金として受け入れ、府県の事業計画に組み込んで新規に貸付けをしない限り、貸与機関においては設備貸与事業の資金として使用することはできないものであるから、繰上げ貸与料のうち府県の貸付金相当額については速やかに府県へ繰上償還させる処置を執り、資金を有効に使用すべきであると認められるのに、前記のように貸与機関に保有されたままとなっているのは適切とは認められない。
 このような事態を生じているのは、府県及び貸与機関が繰上げ貸与料の取扱いについての配慮を欠いていたことにもよるが、同庁においてその取扱いに関する規定が明確を欠き、かつ、府県に対する指導が十分でなかったことによると認められる。
 ついては、貸与機関に対する道府県の貸付けは今後も増加することが見込まれるので、中小企業庁において、都道府県に対し中小企業設備貸与資金の貸付けに係る契約書の条項を整備させるなどの処置を講じるよう指導するなどして、貸与機関における繰上げ貸与料を早期に都道府県に繰上償還させることにより、国庫補助金を原資の一部とする本件設備貸与資金の効率的な運用を図る要があると認められる。

(注1)  中小企業設備貸与事業を行う機関 地方公共団体の全額出資により設立された公益法人であって、中小企業者の事業の用に供する設備で中小企業の近代化に著しく寄与すると認められるものを譲り渡し、又は貸し付ける事業を行う機関
 54年度末現在で、東京都及び大阪府を除く45の道府県にそれぞれ1機関ずつ設置されている。

(注2)  同公社ほか42貸与機関 青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島各府県中小企業振興公社等の貸与機関