資源エネルギー庁では、石炭に関する技術の試験研究を助成し、その研究成果を普及して石炭鉱業の生産性の向上等を図り、我が国の石炭鉱業の安定に資することを目的として財団法人石炭技術研究所(以下「石炭技研」という。)に対し石炭技術振興費補助金を交付しているが、その交付額は毎年度多額に上っていて、この補助事業は今後も引き続き実施されることが見込まれている。
しかして、石炭技研では、石炭技術振興費補助金の交付を受けて取得した処分制限財産(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)第22条に基づく同法施行令第13条に規定するもの)のうち、試験研究を了し、石炭鉱業の生産性の向上に寄与しその実用化に資するものについて、通商産業大臣の承認を得て処分することとし、昭和49年度から52年度までの間に146,544,000円(補助金額73,272,000円)で取得した中傾斜シールド支保(注1)
等の処分制限財産を54年3月27,138,000円で住友石炭鉱業株式会社に、50、51両年度に31,344,000円(補助金額15,672,000円)で取得したバーンカット用掘進機(注2)
等の処分制限財産を54年11月6,746,000円で三井石炭鉱業株式会社にそれぞれ譲渡している。そして、資源エネルギー庁では、当該処分制限財産の処分価額に係る収入金として54年度に石炭技研から530,000円(住友石炭鉱業株式会社に係る分)を徴収しているが、その撤収額の算定に当たり、次のとおり適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、本件収入金の徴収額は、同庁が定めている石炭技術振興費補助金交付要領(昭和47年鉱第1028号)及びこれに基づく「石炭技術振興費補助金により取得した処分制限財産の処分の承認基準について」(昭和44年鉱第2130号。以下「承認基準」という。)に基づいて算定することとしているもので、これによると、処分制限財産を処分したことによって収入があった場合には、交付した補助金の額を限度としてその収入金の全部又は一部に相当する金額を原則として国に納付させることとなっており、その納付額については、処分価額又は残存価額のいずれか高い額から加工費、処分のための撤去費等補助事業終了後当該処分制限財産に加えられた費用を控除した額が、当該処分制限財産の取得価額から補助金確定額を控除した金額(自己負担相当額)を超えるときに限り、当該超過額を納付させることとなっている。
しかしながら、処分制限財産を処分したことによって収入があった場合、処分制限財産の取得額には補助率相当分の国費が含まれており、この比率は処分価額についても変らないから、収入金をまず石炭技研の自己負担相当額に充当し、残余があるときに初めて国に納付させる取扱いは妥当と認められず、処分価額相当額のうち補助率相当分の金額を国に納付させるべきであると認められた。そして、通商産業省所管の補助金で、本件補助金と補助目的が類似している重要技術研究開発費補助金等については、処分価額相当額に補助率を乗じて得た額を納付させることとなっている。
いま、仮に本件収入金の徴収額について処分制限財産の処分価額相当額に補助率を乗ずるなどの方法により算定したとすると、徴収額は16,942,000円となり、本件徴収額との間に16,412,000円の開差を生ずることとなる。
上記についての本院の指摘に基づき、資源エネルギー庁では、55年10月に承認基準を改め、本件石炭技術振興費補助金について、今後、処分価額から費用を控除した額に補助率を乗じて得た額を納付させるよう同月以降処分するものについて適用することとする処置を講じた。
(注1) シールド支保 鉱坑を掘る時に落盤を防止し坑内作業員を保護する枠(わく)
(注2) バーンカット用掘進機 坑道掘進のため切羽の中心部に大口径の孔をせん孔したりする機械