(昭和55年11月25日付け55検第547号 郵政大臣あて)
郵政省では、全国で発行されている定期刊行物のうち、昭和54年度末現在で15,128件を郵便法(昭和22年法律第165号。以下「法」という。)に定める第三種郵便物として認可しており、同年度中に郵便局で取り扱った第三種郵便物は11億6490万余通に達し、これによる郵便業務収入は273億0026万余円に上っている。
この第三種郵便物は、新聞、雑誌等の定期刊行物を内容とする開封の郵便物であって、その料金額については、法第23条第4項で、同一重量の第一種郵便物(封書)の料金額より低額でなければならないとされており、現在では第一種郵便物のおおよそ2分の1ないし5分の1の低い料金となっている。このような取扱いもあって、第三種郵便物の損益は、同省の調査でも毎年大幅な損失を生じており、54年度においては、総収入273億0026万余円に対し総原価555億6168万余円で、差引き282億6142万余円の損失となっている状況である。
第三種郵便物については、上記のように低料金で取り扱うため、認可の条件として、法第23条第3項において、毎月1回以上号を逐(お)って定期に発行し、掲載事項の性質上、発行の終期を予定し得ないもので、政治、経済、文化その他公共的な事項を報道し、又は論議することを目的とし、あまねく発売されるものに限られ、これを受けて認可の具体的基準が郵便規則(昭和22年逓信省令第34号)等で定められており、また、いったん認可された定期刊行物が上記の条件を具備しなくなったときは、法第24条でその認可を取り消すことができると規定し、その具体的基準は郵便規則等で定められている。
そして、第三種郵便物の認可の取扱いは郵政大臣の委任を受けて、発行地を管轄する地方郵政局長(沖縄郵政管理事務所長を含む。)が行うことになっており、定期刊行物の発行人から認可申請書等が郵便局を経由して提出されると、これを審査のうえ認可することとしているが、認可後は郵便局において発行人から提出された見本により発行状況等を監査することになっている。
しかして、第三種郵便物について、本院が55年中に東京郵政局ほか10地方郵政局管内の東京中央郵便局ほか56郵便局で取り扱った4,462件のうち2,356件について、発行人から提出された認可申請書、見本、各郵便局に備付けの関係帳簿等により検査したところ、当該定期刊行物が前記の法定条件を具備せず、その取扱いが適切でないと認められる事態が東京郵政局ほか9地方郵政局管内の東京中央郵便局ほか46郵便局で計198件見受けられた。
これらの不適切な事態を、同省が郵便規則及び関連通達において定めている認可等の具体的基準に照らして態様別に示すと次のとおりである。
(1) 毎月1回以上号を逐って発行しなければならないのに、最近6月間に発行すべき回数の4分の1以上を休刊しているもの(趣味団体の機関誌等) | |
5件 |
(2) 団体又はその構成員の消息、意見の交換等が主たる内容となっているものであって、政治、経済、文化その他公共的な事項を報道し、又ほ論議することを目的としているとは認められないもの(学校の同窓会誌、会社の社内報、業界紙) |
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10件 |
(3) あまねく発売されているとは認められないもの | |
ア 1回の発行部数が1,000部に満たないもの(各種事業団体の会報、地方公共団体の公報等) | |
52件 |
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イ 無料配布数が1回の発行部数の20%を超えているもの(地方公共団体の広報、会社の宣伝誌、業界紙等) | |
119件 |
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ウ 発売先が限定されているもの(発行人から一括買上げしている会社等の宣伝誌等) | |
12件 |
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(注 二つ以上の態様に該当するものについては、代表的なものに整理した。) |
したがって、これら第三種郵便物としての法定条件を具備していないと認められる定期刊行物について、地方郵政局長が、上記のような事態があるにもかかわらず、十分に審査をしないで認可し又は認可を取り消さないまま低い料金の第三種郵便物として取り扱ってきたことは、法の趣旨に反するばかりでなく、郵便料金の徴収が適正を欠く結果となっていて、適切とは認められない。
いま、仮に前記の定期刊行物198件について54年度中の差出通数計1705万余通を第一種郵便物として取り扱ったとして料金を計算すると、その料金額は12億0934万余円となり、第三種郵便物として取り扱った料金4億3102万余円に比べて計7億7832万余円の開差を生ずることとなる。
このような事態を生じたのは、主として、同省において、第三種郵便物の前記のような実態についてのは握が十分でなく、認可の際の審査及び認可後の監査について地方郵政局に対する指導監督が十分でないこと、また、地方郵政局において、認可の際の審査及び認可後の監査に当たって、法定条件の具備状況、特に発行部数、有料発売又は無料配布の数・割合、発売先の制限等発売状況についての調査を十分に行っていないこと、及び認可後において、発行人からの関係資料の提出が郵便規則等に定められていないこともあって、発売状況をは握していないことによると認められる。
ついては、第三種郵便物の認可件数、差出通数は年々増加する傾向にあり、また、その損失が郵便事業の経営ひいては郵政事業特別会計の損益に与える影響が多大であることにかんがみ、第三種郵便物の認可の際の審査に当たっては、法定条件の具備状況、特に発売状況を的確には握することができるよう調査方法等を検討し、認可後の監査に当たっては発行人から関係資料を提出させることを郵便規則等に明記するなどして審査及び監査の体制を整備し、地方郵政局に対する指導監督の徹底を図るとともに、現在、第三種郵便物として認可しているもののなかにも前記と同様な事態が相当数あることが思料されるので、これらの見直しを行い、法定条件を具備しないものについては認可を取り消すなどの処置を講じ、もって適正な郵便料金の徴収を期する要があると認められる。