会計名及び科目 | 一般会計 (組織)建設本省 | (項)住宅建設等事業費 | (項)都市計画事業費 | |
道路整備特別会計 | (項)道路事業費 | (項)北海道道路事業費 | ||
(項)街路事業費 | ||||
治水特別会計(治水勘定) | (項)河川事業費 | (項)北海道河川事業費 | ||
(項)砂防事業費 | ||||
部局等の名称 | 北海道、青森、埼玉、長野、岐阜、三重、兵庫、奈良、鳥取、島根、高知、熊本、大分、宮崎各県 | |||
補助の根拠 | 砂防法(明治30年法律第29号)、道路法(昭和27年法律第180号)、下水道法(昭和33年法律第79号)等 | |||
事業主体 | 県8、市町8、計16事業主体 | |||
補助事業 | 北海道士別市市道11丁目道路南星橋架替等18事業 | |||
上記に対する国庫補助金交付額の合計 | 580,786,292円 |
上記の18補助事業において、工事の設計又は工事費の積算が適切でなかったり、工事の施工が設計と相違していたり、事業を実施していないのに完了したとして補助金の交付を受けていたりなどしていて国庫補助金191,555,028円が不当と認められる。このうち、147,592,870円は一般会計の分(5事業)、35,004,568円は道路整備特別会計の分(9事業)、8,957,590円は治水特別会計の分(4事業)である。これを道県別に掲げると、別表のとおりである。
(説明)
建設省所管の公共事業関係補助事業は、地方公共団体等が事業主体となって施行するもので、一般会計では、公営住宅、下水道施設、都市公園等の建設並びに公共土木施設が台風等で被災したものについての災害復旧の工事等に要する費用について、道路整備特別会計では、国道及び地方道の新設、改良の工事等に要する費用について、また、治水特別会計では、河川の改修及び砂防ダムの新設の工事等に要する費用について、それぞれの法律等で定められた率により補助金を交付している。
しかして、これら補助事業の実施及び経理について検査したところ、前記の16事業主体が実施した公共土木施設の新設、改良等の18事業は設計、積算又は施工等が適切でないと認められた。
いま、これらについて不当の態様別に示すと次のとおりである。
工事の設計又は工事費の積算が適切でないもの | ||
12事業 | 不当と認めた国庫補助金 | 21,080,464円 |
工事の施工が設計と相違しているもの | ||
3事業 | 不当と認めた国庫補助金 | 14,974,292円 |
事業を実施していないのに完了したとして補助金の交付を受けていたものなど | ||
3事業 | 不当と認めた国庫補助金 | 155,500,272円 |
道県名 | 事業 | 事業主体 | 事業費 | 左に対する国庫補助金 | 不当と認めた事業費 | 不当と認めた国庫補助金 | 摘要 | |
(112) |
北海道 |
士別市市道11丁目道路南星橋架替 |
士別市 |
千円 58,701 |
千円 45,885 |
千円 13,455 |
千円 10,477 |
工事の施工不良 |
(うち剣渕川中小河川改修分) | (北海道) | (11,157) | (2,317) | |||||
この工事は、剣渕(けんぶち)川の改修の一環として、同河川の支川に架かる士別市市道11丁目道路の木橋(橋長21.6m、幅員3.6m)を鋼橋(横長32.7m、幅員12m)に架け替えるため、士別市が昭和54年度に橋台2基及び護岸工1,190m2
(延長99m、法(のり)長10mから15m)等を施工したもので、橋長の増加分等については北海道が事業主体となっているが、工事の施行に当たっては、同市が北海道の委託を受けて施行したものである。 しかして、設計書及び図面によると、うち護岸工は、堤防の法尻(じり)部に法留めコンクリートを打設した後、法面には既成の法枠(わく)ブロック(長さ90cm、幅10cmから45cm、厚さ20cm)を縦、横に配置して正方形のブロック枠に組み立て、ブロック内部に埋め込まれた鉄線(直径4mm)で相互にブロックを結束し、その結束部分の空げき(縦、横各10cm、深さ20cm)にコンクリートを充てんして法枠全体を一体化させるとともに、それぞれの法枠内には中張りコンクリート板をはめ込み、中張りコンクリート板と法枠との空げき(幅3cm、深さ15cm)には目地モルタルを充てんし、流水が法枠背面に浸透するのを防止することとしている。 しかるに、ブロックの鉄線は全く結束されていないばかりでなく、結束部分の空げきはコンクリートの代わりに砂を充てんし、その上部を厚さ3cm程度のモルタルで被覆しているにすぎないなどのため、法枠が1体となってお |
(参考図)
らず、更に、法枠ブロックを凍土の上にそのまま設置したため、法枠の一部が沈下しき裂を生じていたり、法枠背面の土砂が流水により吸い出されていたりしている状況で、施工が著しく不良となっており、護岸工としての目的を達していない。 | ||||||||
(113) | 北海道 | 目梨郡羅臼町町道市街9号線道路改良 | 羅臼町 | 92,000 | 69,000 | 3,353 | 2,514 | 工事の施工不良 |
この工事は、羅臼町地内の町道市街9号線の延長347mを改良するため、昭和54年度にコンクリートブロック練り積み擁壁727.3m2
(延長180m)、その上部にコンクリートブロック法枠(のりわく)626.4m2
を施工したもので、このうち、コンクリートブロック練り積み擁壁は、仕様書によると、法面の切り取りは、切りすぎないように施工し、埋めもどし土は、氷雪、凍土など容積変化を生ずるような不良土を使用しないで、良質土で埋めもどし、周囲の地盤の密度と同程度になるまで十分締め固めることになっていた。 しかるに、上記のうちコンクリートブロック練り積み擁壁71.8m2 (延長15.5m)は、擁壁背後の法面を過大に切り取ったうえ埋めもどし土に雪混じりの凍土を使用し、その締め固めも十分でなく、施工が粗雑であったため、その後埋めもどし土が融解して沈下し、コンクリートブロック練り積み擁壁背後の全面にわたり幅0.7mから0.9m、深さ0.6mから1.2m程度の空どうを生じ、コンクリートブロック練り積み擁壁が不安定となっているばかりでなく、この空どうの中にコンクリートブロック法枠165.3m2 の下部が落ち込んで折れ曲っていたり、各所にき裂を生じていたりしている状況で、工事の目的を達していない。 |
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(114) | 青森県 | 十和田市中央第1汚水幹線管きょ築造(第8工区) | 十和田市 | 48,000 | 28,800 | 1,575 | 945 | 工事費の積算過大 |
この工事は、昭和54年度に、十和田市大字相坂地内に、公共下水道管きょとして開削工法により内径900mm遠心力鉄筋コンクリート管延長412mの布設及びマンホール5箇所の築造を施行したもので、工事費の積算についてみると、それぞれの基礎として打ち込んだPCぐい(2本継ぎ、径300mm、長さ17m)225本の価格については、1本当たり上ぐい(長さ7m)23,300円、下ぐい(長さ10m)28,300円、くいの継ぎ手1個当たり6,000円、計57,600円とし、また、その打ち込み費については、1本当たり、くい打ち機械運転費等25,041円、くいの現場内運搬等の補助作業のためのクレーン運転費12,480円、計37,521円とし、その他の工事費を含め総額48,078,000円と算定していた。しかし、上記PCぐいの価格には、継ぎ手分が含まれているので、これを別途に計上する必要はなく、また、打ち込み費については、くいの現場内小運搬等の作業は、くい打ち作業に伴うものとしてその歩掛かりの中に見込まれており、本件の場合は、搬入したくいを施工現場に近接して仮置きできるのであるから、くいの現場内運搬等の補助作業のためのクレーン運転費を計上する必要はなかったなど、積算が過大になっていると認められる。いま、仮にこれらにより工事費を修正計算すると、積算不足となっていた仮設費等の経費を考慮しても総額46,424,442円となり、本件工事費はこれに比べて約1,575,000円割高となっていると認められる。 | ||||||||
(115) | 埼玉県 | 比企郡小川町中爪川貯留池 | 小川町 | 172,520 | 57,506 | 6,305 | 2,101 | 工事費の積算過大 |
この工事は、小川町中爪、下里地内の66.7haの宅地造成に伴い増加する雨水の流出量を調節する貯留池(総貯水量103,000m3
)を築造するため、昭和54年度に貯留池法(のり)面の切土(軟岩)17,212m3
及び盛土2,271m3
のほか、その法面7,167m2
にコンクリート吹付け等を施工したもので、工事費の積算についてみると、コンクリート吹付けについては、切土部5,303m2
及び盛土部1,864m2
法面に現場練りコンクリートを厚さ10cmに吹き付けることとし、この吹付け工費の算出に当たっては、埼玉県が制定した「災害査定用標準歩掛」により、吹付け面積100m2
当たりのコンクリートの練り混ぜ及び吹付けの要員を普通作業員9.7人、法面工5.3人等計16.3人としたほか、吹付け工費に含まれるコンクリート費に、コンクリートの練り混ぜ、打設等の要員として普通作業員12人を見込み、コンクリート吹付け工費を1m2
当たり切土部5,063円、盛土部5,164円として総額36,477,862円と算定していた。 しかし、上記のコンクリート吹付け工100m2 当たり普通作業員等16.3人は、コンクリートの練り混ぜ、吹付けの作業に要するすべての要員を見込んでいるものであるから、コンクリート費としては、セメント、砂等の材料費を見込むだけで足り、普通作業員12人は見込む必要がなかったと認められ、これにより、コンクリート吹付け工費を計算すると、積算不足となっていた送水ポンプの運転費等を考慮しても1m2 当たり切土部4,312円、盛土部4,595円総額31,434,747円となる。また、前記の軟岩17,212m3 ついては、岩石を削岩機でで切りくずした後人力で処理する場合に適用する歩掛かりにより、切土費を1m3 当たり2,497円として総額42,978,364円と算定していた。 しかし、上記切土量のうち、2,082m3 の切り取り箇所は、切り取り面をほぼ水平に施工でき、リッパ付きブルドーザ等で掘削した岩石の破砕片をブルトーザ等の機械で処理できる広い箇所であるから、このような場合は、これに適用する歩掛りにより積算すべきであったと認められ、これによると、切土費は1 m3 当り654円又は1,624円総額40,142,278円となる。 いま、仮に上記により工事費を修正計算すると、切土量の計算誤りによる切土費等の積算不足額を考慮しても総額166,214,651円となり、本件工事費はこれに比べて約6,305,000円割高になっていると認められる。 |
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(116) | 埼玉県 | 比企郡玉川村槍沢通常砂防 | 埼玉県 | 20,698 | 13,798 | 1,295 | 863 | 工事の設計数量の過大 |
この工事は、荒川水系の小支川槍(うつぎ)沢の荒廃による土砂流出の危険を防止するため、昭和54年度に玉川村五明(ごみょう)地内に砂防えん堤高さ8.5m、長さ33.5mを築造したもので、堤体のコンクリート所要量については、設計書によると、堤体を7ブロックに区割りし、各ブロックごとにその断面積に上辺と下辺の平均長を乗ずる方法により算定した総体積から水抜き等の部分の体積を差し引いて所要量を730.1m3
と算出し、これにより工事費を算定していた。 しかして、上記コンクリート所要量の算出に当たり、堤体の中間部の第3ブロックの体積は581.3m3 としているが、その形状は堤体の正面からみて上辺が下辺に比べて著しく長く、また、側面からみて上幅が下幅に比べて著しく短く、しかも高さも相当あるから、上記のように四角柱の体積を求める方法で算出するのは適切ではなく、このような場合はオベリスクの体積を求める方法(注) により正確に算出すべきであったと認められる。 いま、これにより第3ブロックの堤体の体積を算出すると512m3 となって、堤体全体のコンクリート所要量は660.8m3 となり、コンクリート所要量は69.3m3 が過大となっている。 (注) オベリスクの体積を求める方法オベリスクの形状をした堤体の体積は、次の算式により求められる。 |
(参考図)
(117) | 長野県 | 上伊那郡箕輪町 都市計画公園 (番場原公園) |
箕輪町 | 31,000 | 12,000 | 6,899 | 2,281 | 補助金の過大交付 |
この事業は、箕輪町が、昭和51年度から55年度までの間に都市計画公園番場原公園を新設する事業の一環として、51年度及び52年度に公園用地8,800m2
の取得等を行ったもので、同町は用地費として畑7,630m2
を1m2
当たり2,300円、山林1,170m2
を1m2
当たり1,400円、計19,187,000円、立木の伐採等に係る補償費として768,800円、合計19,955,800円で地主から直接取得したこととし、これに造成工事費等を合わせ両年度の事業費31,000,000円に対する国庫補助金12,000,000円の交付を受けていた。 しかし、実際は、上記用地は、同町が地主から直接取得したものではなく、箕輪町土地開発公社が49年12月、地主から3.3m2 当たり3,700円又は3,800円(1m2 当たり約1,119円又は1,149円)、計10,049,800円、立木補償費478,730円、合計10,528,530円で取得していたものを、52年3月、8月及び10月に改めて取得したものであった。 しかして、同公社は同町の公共用地の取得等を実施するために設立されたものであるから、本件用地取得費は同公社が地主に支払った額に、建設省が土地の先行取得の場合の取扱いとして定めている計算方法に倣って算定した利子相当額及び事務費を加えた額とすべきであると認められる。 いま、これにより修正計算すると、用地費は12,726,466円、立木補償費は607,888円、計13,334,354円となり、これに造成工事費等を合わせた事業費は24,100,916円となって、これに対する国庫補助金相当額は9,718,596円となり、結局、国庫補助金2,281,404円が過大に交付されていた。 |
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(118) | 岐阜県 | 揖斐郡大野町県道上大須・長瀬・大野線特殊改良 | 岐阜県 | 37,703 | 18,851 | 23,957 | 11,978 | 事業の不実施 |
この事業は、揖斐郡大野町稲富地内の県道上大須・長瀬・大野線延長1,580mの交通緩和を図るための道路改良工事(事業計画昭和47年度から56年度)に必要な土地の取得及びその土地の上にある物件等の補償を行うもので、51年度には436m2
を12,740,000円、52年度には3,268m2
を11,313,000円、53年度には4,741m2
を13,650,000円、計8,445m2
を37,703,000円で実施し、いずれも当該年度内に完了したとして、これらに対する国庫補助金計18,851,500円の交付を受けていた。 しかして、岐阜県においては、上記土地の取得等について土地所有者の同意を得ることができなかったため、51年度には114m2 を11,451,400円、52年度には362m2 を1,122,355円、53年度には941m2 を1,171,507円、計1,417m2 を13,745,262円で実施したにすぎず、残りの7,027m2 、23,957,738円相当分については、55年1月の会計実地検査当時においてもなお事業を実施していない状況であった。 しかるに、同県では、土地取得等ができなかった分についてもすべて事業が完了したとして、国庫補助金の請求を行い、51年度から53年度までに11,978,868円の交付を受け、これを別途に銀行預金としていた。 |
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(119) | 三重県 | 安芸郡安濃町生水川通常砂防 | 三重県 | 29,137 | 19,424 | 3,226 | 2,150 | 工事の設計数量の過大及び工事費の積算過大 |
この工事は、安濃(あのう)川水系の支川生水(しょうず)川の荒廃による土砂流出の危険を防止するため、安濃町草生(くさわ)地内に砂防えん堤高さ10m、長さ66.5mを築造する工事のうち、昭和53年度に基礎掘削及び堤体下部コンクリート(高さ3.5m、長さ44m)の打設等を施工したものである。 しかして、堤体下部のコンクリート所要量については、設計書によると堤体を7ブロックに区割りし、各ブロックの体積を計算して、算定した総体積から水抜き等の部分の体積を差し引いて所要量を1,189m3 と算出していた。しかし、上記コンクリートの所要量の算出に当たり、7ブロックのうち下部の第2ブロックの体積は277.8m3 とすべきところを計算を誤って435.8m3 としたため、コンクリート所要量は158m3 が過大となっている。 また、工事費の積算についてみると、堤体下部等のコンクリートはクレーンを使用して打設することとしているのにその労務歩掛かりは、人力で打設する場合のものを適用して1m3 当たりの打設労務費を2,022円と算定している。しかし、本件打設労務費はクレーンで打設する場合の歩掛かりで算出すべきであり、これによれば1m3 当たり1,272円となる。 いま、仮に上記により工事費を修正計算すると、積算不足となっていた機械運搬費を考慮しても総額25,910,393円となり、本件工事費はこれに比べて約3,226,000円割高となっていると認められる。 |
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(120) | 同 | 度会郡南勢町通常砂防 | 三重県 | 35,802 | 23,868 | 1,913 | 1,275 | 工事費の積算過大 |
この工事は、五ヶ所川水系の支川フカクズ谷川の荒廃による土砂流出の危険を防止するため、南勢町切原地内に砂防えん堤(高さ12m、長さ75m)を築造する工事(事業計画昭和53年度から56年度)のうち、53年度に基礎の岩石等の掘削及び堤体下部コンクリート(高さ1.5m、長さ42.5m)の打設等を施工したもので、工事費の積算についてみると、岩石等の掘削のうち中硬岩967.7m3
の掘削については、ダイナマイトで爆破して切りくずした後、人力で処理する場合に適用する歩掛かりにより掘削費を1m3
当たり5,259円と算定していた。 しかし、中硬岩のうち、流水を排水するための仮設備を設置する箇所等393.5m3 を除いた574.2m3 掘削箇所は、切り取り面をほぼ水平に施工でき、爆破後の岩石の破砕片をブルドーザ等の機械で処理できる広い箇所であるから、このような場合は、これに適用する歩掛かりにより積算すべきであったと認められ、これによると掘削費は1m3 当たり1,778円又は2,403円となる。 いま、仮に上記により工事費を修正計算すると、積算不足となっていた仮排水設備等に要する経費を考慮しても総額33,888,242円となり、本件工事費はこれに比べて約1,913,000円割高となっていると認められる。 |
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(121) | 兵庫県 | 出石郡但東町県道宮津八鹿線道路防雪 | 兵庫県 | 21,712 | 14,474 | 3,528 | 2,352 | 工事費の積算過大 |
この工事は、県道宮津八鹿(ようか)線の但東(たんとう)町地内での防雪のため、昭和54年度に道路延長30.8mの区間に鉄骨アーチ型のスノーシェッドを施工したもので、工事費の積算についてみると、スノーシェッドは、屋根材に既成のコルゲートシート10.7t、主構アーチ材及び梁(はり)材にH形鋼等20.8t、計31.6tを工場で加工したうえ使用することとし、その工場加工費については、加工工数は鋼橋の各種けた製作のなかでも製作難度の最も高いアーチけた等の製作工数1t当たり11.2工数を適用し、これに上記の材料の重量31.6t を乗じて延べ353.9工数とし、この工数に1工数当たりの労務単価8,300円を乗じて直接労務費を2,937,718円、二次労務費を4,259,691円(直接労務費の145%)、計7,197,409円と算定していた。 しかし、鋼橋のアーチけた等の製作は、原板(鋼板等)の矯(きょう)正、切断、孔(あな)明け、鍛(か)治、削成等の加工、組立て、溶接及び仮組立てなどの複雑な諸作業を行うのに対し、本件の場合その作業は既成の製品を使用することからコルゲートシートについては主構アーチ材等とボルトで連結するための孔明け程度、また、H形鋼については半円形の曲げ加工及び孔明け程度であるから鋼橋のアーチけた等の場合と同一の工数を適用しているのは適切とは認められない。そして、この種工事費の積算については、通常、建設省が定めた「積算基準及び標準歩掛表」記載のスノーシェッド工の場合の工場製作歩掛かりが適用されており、これによれば屋根材に既成の製品を使用する場合は1t当たり1.1工数、主構材等にH形鋼を使用する場合は1t当たり7.8工数となり、また、使用材料31.6tのうちに含まれている鋼板等2.3tについても10.5工数となるので、前記353.9工数は167.7工数で足り、結局、186.2工数 |
(参考図)
が過大となっている。 いま、仮にこれらにより工事費を修正計算すると、直接労務費は1,392,009円、二次労務費は2,018,413円、計3,410,422円となり、積算不足となっていたコルゲートシート費等を考慮しても総額18,183,016円で足り、本件工事費はこれに比べて約3,528,000円割高となっていると認められる。 |
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(122) | 奈良県 | 吉野郡吉野町県道桜井多武峯吉野山線特定交通安全施設等整備 | 奈良県 | 46,101 | 23,050 | 2,405 | 1,202 | 工事費の積算過大 |
この工事は、吉野町内の吉野川に架かる県道桜井多武峯吉野山線の桜橋に並列して、歩道橋(橋長143m、幅員2m)を新設するため、昭和53年度に既設の橋台及び橋脚を拡幅するとともに、橋脚の洗掘を防止するための根固めブロック132個等を施工したもので、工事費の積算についてみると、うち根固めブロック(1個当たり重量4t)については、1m2
当たりの型枠(わく)費を型枠の組立て、解体等の費用535円と型枠損料2,610円との計3,145円とし、これに1個当たり型枠面積11.72m2
を乗ずるなどして1個当たり製作費を54,234円とし、132個分で7,158,888円と算定していた。 しかし、上記1m2 当たりの型枠損料2,610円は一般の無筋構造物を築造する場合に適用する型枠費であって、その内容は型枠の損料だけではなく、組立支持材等の損料と型枠の組立てから解体までのすべての経費を含んだものであるのに対し、本件根固めブロックの型枠は、所定の根固めブロックの形状に合わせて作られている既成の鋼製型枠で、その損料については、県で別に1m2 当たり610円と定めているのであるからこれを適用すべきであり、これに上記の組立て、解体等の費用535円を加えると本件型枠費は1m2 当たり1,145円となり、根固めブロックの1個当たり製作費は30,795円、132個分で4,064,940円となる。 いま、仮に上記により工事費を修正計算すると、積算不足となっていた工事用資材の現場内運搬費等を考慮しても総額43,695,585円となり、本件工事費はこれに比べて約2,405,000円割高となっていると認められる。 |
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(123) | 奈良県 | 吉野郡下市町一般国道309号道路改良 | 奈良県 | 33,151 | 24,863 | 3,010 | 2,257 | 工事費の積算過大 |
この工事は、一般国道309号の改良の一環として、昭和54年度に下市町地内の道路延長43.5mの区間において、土留め及び地すべり防止のため、ボーリングマシンで地山に直径450mm、深さ10.8mから13.1mを削孔してこの中にH形鋼を建て込み、モルタルを充てんして場所打ちぐい30本を施工したもので、工事費の積算についてみると、H形鋼を建て込むなどのために必要なトラッククレーンの費用は、くい10本当たりの運転時間を42.6時間とし、この1時間当たりの単価を44,600円として、くい30本分で5,699,880円と算定していた。 しかし、上記の単価44,600円は1日当たりの単価であるのに誤って1時間当たりの単価としたもので、トラッククレーンの1時間当たりの正しい単価は6,452円であり、また、くい10本当たりの運転時間42.6時間はロッドの継ぎ足し回数等を誤っており、これを正しく計算すると46.4時間となるから、これらによってトラッククレーン費を計算すると、くい30本分で898,116円となる。 いま、仮に上記により工事費を修正計算すると、積算不足となっていた発動発電機の燃料費等を考慮しても総額30,140,333円となり、本件工事費はこれに比べて約3,010,000円割高となっていると認められる。 |
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(124) | 鳥取県 | 西伯郡中山町県道高橋下市停車場線道路災害防除施設新設 | 鳥取県 | 11,558 | 5,779 | 3,964 | 1,982 | 工事の施工不良 |
この工事は、県道高橋下市停車場線の中山町地内での落石による災害を防止するため、昭和54年度に覆式ロックネット2箇所1,954m2
、ネット張り種子吹付け892m2
等を施工したもので、設計書及び図面によると、このうちの覆式ロックネット工1箇所1,601m2
は、斜面上方にルーフアンカーボルト(長さ1m、径25mm)29本及び羽根付きアンカーボルト(長さ1.5m、径25mm)19本を3m程度の間隔で設置し、これらのアンカーボルトに取り付けた径12mmのワイヤロープを縦方向に斜面の下側までおろした後、斜面に金網を張り渡し、更に、金網の左右両側の上部と下部及び法(のり)面中央上部付近にルーフアンカーボルト2本及び羽根付きアンカーボルト4本を設置して、径12mmのワイヤロープを横方向に取り付けて金網を固定することとしている。そして、ルーフアンカーボルトは、岩盤を深さ90cm削孔してこの中にそう入し、その先端部に取り付けられているコーンとくさびで岩盤に定着させることとしていた。 しかるに、ルーフアンカーボルト31本(これに固定されている金網の面積1,089m2 )についてみると、岩盤を削孔してそう入することなく、うち25本は先端部を15cmから38cm切断してコーン及びくさびがないものをそのまま打ち込んでおり、残りの6本はコーン及びくさびを取りはずして打ち込んでいるなどしていて、施工が著しく粗雑となっているため、これらのルーフアンカーボルトに支えられている覆式ロックネット1,089m2 は極めて不安定な状態となっていた。 |
(参考図)
(125) | 島根県 | 仁多郡仁多町都市計画街路本町上三成線道路改良 | 仁多町 | 4,986 | 2,493 | 2,761 | 1,380 | 工事の設計不適切 |
この工事は、仁多町三成(みなり)地内の町道本町上三成線改良事業の一環として、昭和53年度に在来の道路を拡幅し嵩(かさ)上げするため盛土884m3
、重力式土留めコンクリート擁壁延長36.5m等を施工したもので、このうち、重力式土留めコンクリート擁壁の設計に当たっては、基礎地盤の支持力を20t/m2
程度と見込み、擁壁に対する十分な支持力があると判断して土質調査を行わず、また、擁壁の断面については高さが3mであるので天端(ば)幅0.3m、底面幅1.2mとすれば土圧等の荷重に十分耐えられるものと判断して擁壁の転倒等に対する安定計算を行っていなかった。 しかし、現地について調査したところ、基礎地盤は、支持力5t/m2 程度にすぎない軟弱な砂質土であって、基礎地盤としての支持力が不足しているため、擁壁は延長16.5mにわたって前面に3cmから7.5cm程度傾斜している。また、転倒に対する安定計算を行った結果によっても、著しく安定性を欠いている状況である。 |
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(126) | 高知県 | 下知下水処理場築造 | 高知市 | 635,000 | 418,200 | 635,000 | 141,240 |
事業の不実施 |
国庫補助金418,200千円のうち53年度に交付した額 | ||||||||
この工事は、高知市小倉町に下水処理場(日最大汚水処理量29,751m3
)を整備する事業(第2期事業計画、昭和53年度から57年度)の一環として、計量機室を53年度に、最初沈殿池、エアレーションタンク、最終沈殿池を53年度及び54年度に事業費866,000,000円で建設するもののうち53年度事業に係るものであって、53年度に事業費635,000,000円(事務費12,000,000円を含む。国庫補助決定額418,200,000円)で実施したとして国庫補助金141,240,000円の交付を受け、残余の276,960,000円は54年度以降57年度までに交付を受けることになっていた。 しかして、高知市においては、本件処理場の第1期事業(37年度から48年度までの間に実施)を実施したときに、第2期事業に着手する際には、地元住民に対して事前に協議を行うこととしていたのであるが、本件第2期工事の実施に当たって、地元住民との協議が整わないまま53年12月上記諸施設の工事請負契約を締結したため、地元住民の強硬な反対にあって結局着工するに至らず、事業を全く実施していない。 しかるに、同市では、本件53年度事業に係る分の工事が53年度末ですべて完成したとして、国庫補助金の請求を行い、54年4月上記141,240,000円の交付を受け、これを別途に銀行預金としていた。 |
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(127) | 熊本県 | 阿蘇郡南小国町県道竹田小国線道路改良 | 熊本県 | 64,833 | 43,222 | 4,765 | 3,176 | 工事費の積算過大 |
この工事は、県道竹田小国線の改良事業の一環として、昭和53年度に南小国町地内の道路延長402mを新設するため、岩石等の掘削、土留めコンクリートブロック練り積み工等を施工したもので、工事費の積算についてみると、岩石等掘削量19,471m3
のうち軟岩3,626m3
の掘削については、ダイナマイトで爆破して切りくずした後、人力で処理する場合に適用する歩掛かりにより掘削費を1m3
当たり3,091円として総額11,207,966円と算定していた。 しかし、上記の軟岩3,626m3 の掘削箇所は、切り取り面をほぼ水平に施工でき、爆破後の岩石の破砕片をブルドーザ等の機械で処理できる広い箇所であるから、このような場合は、これに適用する歩掛かりにより積算すべきであったと認められ、これによると掘削費は1m3 当たり1,293円総額4,688,418円となる。 いま、仮に上記により工事費を修正計算すると、積算不足となっていた残土処分費、伐開費等を考慮しても総額60,068,000円となり、本件工事費はこれに比べて約4,765,000円割高となっていると認められる。 |
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(128) | 大分県 | 宇佐市駅館川中小河川改修 | 大分県 | 31,430 | 15,715 | 4,701 | 2,350 | 工事の設計数量の過大 |
この工事は、宇佐市上田地内の駅館(やつかん)川左岸の本堤を防護するため、昭和53年度に同川河川敷に低水護岸として延長181mの間に法枠(のりわく)工1,712m2
等を施工したもので、うち法枠工は、設計書及び図面によると、横枠のコンクリートを天端(ば)部に1本及び天端から2m間隔で下部に3本、また、縦枠のコンクリートを2m間隔で施工して格子枠を造り、格子枠の中にぐり石を敷き並べてその上に張りコンクリートを施工することとしていた。 しかして、法枠工費1m2 当たり8,505円の算定の基礎となる設計数量の算出に当たっては、法枠工106.2m2 (延長11.8m、法長9m)を単位として計算し、その単位当たりの数量を、天端の横枠のコンクリートは2.5m3 、下部3本の横枠のコンクリートは22.7m3 、また、6本の縦枠のコンクリートは7.1m3 とするなどしていた。 しかし、上記106.2m2 当たりの数量のうち、下部3本の横枠のコンクリートは、その断面が上辺0.58m、下辺0.705m、高さ0.25mの台形であり、上辺と下辺の平均長0.6425mに高さを乗じた断面積0.1606m2 に延長及び本数を乗じて設計数量を5.6m3 とすべきであるのに、誤って、上辺と下辺の平均長に高さを乗ずることなく断面積を0.6425m2 として設計数量を22.7m3 と算出したため、17.0m3 が過大となっており、正しい数量に基づいて計算すると法枠工は1m2 当たり6,314円となり、結局、本件工事費は約4,701,000円が過大となっている。 |
(参考図)
(129) | 宮崎県 | 日南市公共下水道雨水幹線築造 | 日南市 | 34,690 | 20,814 | 1,708 | 1,024 | 工事費の積算過大 |
この工事は、日南市公共下水道事業の一環として、昭和54年度に同市園田町地内に雨水幹線下水路延長136.5mを新設するため、現場打ちの鉄筋コンクリート基礎の上に既製品の門型カルバート(以下「カルバート」という。)をすえ付けて施工したもので、工事費の積算についてみると、うち延長102.5m区間のカルバート(内空断面幅2m、高1m)の所要本数は10m当たり10本とし、1本当たり価格を101,700円,10m当たり1,017,000円と算出し、その他の工事費を合わせ総額35,177,000円と算定していた。 しかし、実際は、上記区間に使用することとしていたカルバート1本の長さは1.5mであるから、10m当たりの所要本数は6.6本、その価格は677,322円となり、102.5m分で3,481,699円が過大となっている。また、このほか、カルバート133.5mを接合するための目地モルタルの所要量及び水替用ポンプの運転経費の算定等を誤ったため、958,995円が過大となっている。 いま、仮にこれらにより工事費を修正計算すると、積算不足となっていた土留め用鋼矢板の打ち込み費等を考慮しても総額32,981,946円となり、本件工事費はこれに比べて約1,708,000円割高となっていると認められる。 |