日本国有鉄道では、東北新幹線等の建設工事においてプレストレストコンクリート箱けた(以下「PCけた」という。)の製作及び架設工事を施行しているが、仙台新幹線工事局ほか3工事局等(注) が昭和54年度中に施行している東北幹岩切BI上部工他工事ほか11工事(工事費総額56億7108万余円)について検査したところ、次のとおり、PCけたに配筋するPC鋼棒等の組立て費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記各工事は、いずれもPCけたを押し出し工法により施工するもので、その施工方法は、橋台後方に地上より組み立てた広い製作作業台上でPCけたの型枠(わく)の組立て、鉄筋の組立て、PC鋼棒等の組立て、コンクリート打設等を行って1ブロック長約10mから30mの大型のPCけたを製作し、架設するけたの先端に手延(てのべ)機(鋼製の架設用けた)を接続し、順次PCけたを継ぎ足しながら押し出し架設するものであるが、このうちPC鋼棒等の組立てに要する労務費の積算についてみると、PC鋼棒等の組立ての施工方法は張り出し工法に類似しているとして、その歩掛かりは日本国有鉄道が52年4月に制定した「連続PCけた製作架設積算要領(張出し工法)」を適用し、PC鋼棒1t当たり組立てに要する作業人員を20人、継ぎ手及び定着に要する作業人員を5人計25人とするなどして、その労務費をPC鋼棒777t分で2億8011万余円と算定していた。
しかして、上記の張り出し工法は、橋脚上の柱頭部の左右に1基ずつ架設作業車を設置し、この架設作業車内で1ブロック長約2mから3.5mのPCけたを柱頭部の左右に均衡を保ちながら製作していくもので、PC鋼棒等の組立て作業は、架設作業車内で行うため作業空間が制約されるほか、架設作業車がPCけたの張り出しに伴って移動するためPC鋼棒等を柱頭部につり上げたうえ橋上を架設作業車まで運搬する必要があるものである。
(参考図)
しかしながら、本件押し出し工法は、前記のとおり橋台後方に設置された広い製作作業台の上でPC鋼棒の組立て、継ぎ手及び定着などの一連の作業を効率的に行うことができるほか、現場内のPC鋼棒等の運搬もほとんど要しないなど現場の作業条件等が著しく相違しており、本件積算に適用したPC鋼棒等の組立て歩掛かりは相当程度低減できると認められた。現に、本院が押し出し工法におけるPC鋼棒等の組立て作業の実態を調査したところ、その作業人員は継ぎ手及び定着を含め1t当たり15人程度となっている状況であった。
したがって、本件各工事について施工の実態を考慮して積算したとすれば積算額を約1億0900万円程度低減できたと認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、日本国有鉄道では、55年10月「PCけた製作架設積算要領(押出し工法)」を制定し、同月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。
(注) 仙台新幹線工事局ほか3工事局等 仙台新幹線、東京第二、東京第三各工事局及び仙台新幹線工事局福島工事事務所