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  • 昭和54年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第2 日本国有鉄道|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

空気調整設備工事における矩(く)形ダクトの製作取付け費の積算について


(2) 空気調整設備工事における矩(く)形ダクトの製作取付け費の積算について

 日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)では、東北新幹線等の建設工事の一環として建設された駅建物及び在来線の改築駅建物等において、空気調整設備工事を毎年多数施行しているが、東京第一工事局ほか5工事局(注) 等が昭和54年度中に施行している宇都宮駅(幹)空調新設他4工事ほか28工事(工事費総額41億7060万円)について検査したところ、次のとおり、送風用の矩形ダクト(以下「ダクト」という。)の製作取付け費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
 すなわち、上記各工事において設置したダクトは、空気調和機から送り出された空気を旅客待合室等に送るための亜鉛鉄板を材料とした矩形の管であるが、その製作取付け費については、国鉄制定の「機械関係一般工事予定価格積算要領」に定める製作取付け歩掛かり(以下「歩掛かり」という。)等を適用して計算した1m2 当 たりの複合単価により算出することとしており、上記29工事の施工総面積約123,000m2 分について合計8億1294万余円と積算していた。

 しかして、上記歩掛かりは、47年12月に制定されたものであるが、この歩掛かりは、当時のダクト1m2 当たりの市場における製作取付け価格に占める加工取付け費をダクト工の賃金で除して算定したものである。したがって、この歩掛かりは、その算定要素としたダクト1m2 当たりの製作取付け価格に占める加工取付け費又は賃金の変動に応じて改定する必要があり、国鉄においては歩掛かり制定後52年9月までの間に、加工取付け費及び賃金の変動に応じてこの歩掛かりを数次にわたり改定してきたが、その後55年4月まで歩掛かりの改定は行っていない。
 しかし、この間、製作取付け価格に占める加工取付け費は、オイルショック時に急激に上昇したこともあってその後ほとんど変動していないのに対し、賃金は30%程度上昇しているから、このように加工取付け費と賃金とが跛(は)行的に変動している場合に上記のような方法により算定した歩掛かりをそのまま適用して積算すると、その積算額は市場価格と乖(かい)離し、加工取付け費が割高となるものである。
しかるに、国鉄においては、歩掛かりの改定を行わないまま推移し、55年4月に至り、他機関が使用していたダクト1m2 当たりの製作取付け費を参考として歩掛かりを約10%減ずる改定を行っている。

 このため、改定前の歩掛かりを適用して計算した上記各工事の1m2 当たりの複合単価は、本院の調査による1m2 当たの単価に比べて25%程度割高なものとなっており、また、55年4月の改定後の歩掛かりにより計算した複合単価も、なお16%程度割高となっていた。
 なお、上記の他機関においては、国鉄で55年4月の改定に際し参考とした製作取付け費の歩掛かりを同月約27%減ずる改定を行っている状況である。
 したがって、国鉄が55年4月に改定した歩掛かりは、改定時既に実情に沿わないものであったと認められ、仮に本件各工事におけるダクト製作取付け費を適正と認められる歩掛かりを適用して計算した複合単価により修正計算すると6億4652万余円となり、約1億6600万円程度低減できたと認められるが、国鉄では前記のとおり55年4月に歩掛かりを改定しているので、仮にこの歩掛かりを適用して計算した複合単価により修正計算すると7億4904万余円となり、なお約1億0200万円程度低減できる計算となる。
 上記についての本院の指摘に基づき、日本国有鉄道では、55年9月に「機械関係一般工事予定価格積算要領」を改定し製作取付け歩掛かりを適正なものに改め、同年10月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。

(注)  東京第一工事局ほか5工事局等 東京第一、盛岡、仙台新幹線、信濃川、岐阜各工事局及び仙台新幹線工事局福島工事事務所