ページトップ
  • 昭和54年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第4 中小企業金融公庫|
  • 不当事項|
  • 貸付金

設備資金の貸付けが不当と認められるもの


(141)−(148) 設備資金の貸付けが不当と認められるもの

科目 貸付金
部局等の名称 中小企業金融公庫
貸付けの根拠 中小企業金融公庫法(昭和28年法律第138号)
貸付けの内容 中小企業者に対する設備資金の貸付け
受託金融機関 株式会社三和銀行ほか7受託金融機関
貸付件数 8件
貸付金の合計額 178,000,000円

 上記の設備資金の貸付けは、貸付けの目的に沿わない結果になっていて貸付金67,741,051円が不当と認められる。これらについては、本院の注意によりすべて繰上償還の措置が執られた。
 これを貸付先別に掲げると、別表 のとおりである。

(説明)

 中小企業金融公庫では、中小企業金融公庫法第19条の規定に基づき、中小企業者に対し、その事業の振興に必要な長期資金であって、一般の金融機関から融通を受けることが困難な設備資金及び長期運転資金を貸し付けている。
 このうち、設備資金の貸付けは、中小企業者の経営合理化に資する事業用資産の取得等に要する資金を、原則として、償還期限7年以内、基準利率年7.1%(昭和53年3月から54年5月まで)、7.7%(54年6月から同年8月まで)、8.0%(54年9月から同年12月まで)で貸し付けるものでその貸付けは同公庫が直接又は金融機関に委託して行うこととしている。

 そして、金融機関に委託して貸付けを行う場合は、受託金融機関が借入申込者の作成する借入申込書とその添付書類等について審査した後、所定の条件に合致していると認定したものについて貸付決定し、同公庫から資金の送金を受けて貸付金を交付することになっており、また、貸付け後においては事業完成及び貸付対象事業費の支払状況の確認等を行い、貸付金が適正な使途に充てられているかどうかを調査することとしている。
 しかして、この設備資金の貸付けについては、既往の検査において適切を欠いている事例が一部に見受けられたので、同公庫に対して適切な処置を執るよう指摘してきたところであるが、上記の貸付け8件についてみると、貸付けの対象とならない設備を対象としていたり、値引きなどにより貸付対象事業費よりも低額で事業が実施されていたりしていたのに、同公庫の指導監督が十分でなく、受託金融機関における審査及び調査確認が適切でなかったため、貸付けが不当と認められるものが67,741,051円見受けられた。

(別表)

受託金融機関
(取扱店)
貸付先 貸付対象 貸付年月 貸付金額 貸付金額のうち不当と認めた額 摘要
千円 千円
(141) 株式会社三和銀行
(東京都千住支店)
板金プレス加工業者 機械の設置 53年5月 25,000 8,575 低額設置
この貸付けは、産業安全衛生施設等貸付として、安全装置付プレス一式の設置に必要な資金25,000,000円の全額を貸し付けたものであるが、実際は、貸付対象事業費より低額な16,425,000円で設置していた。したがって、本件貸付金額との差額8,575,000円は過大な貸付けとなっている。
(142) 中央信用組合(札幌市美香保支店) 機械工具製造業者 倉庫及び工場の建設 53年8月 20,000 6,872 貸付対象外
この貸付けは、倉庫及び工場の建設に必要な資金21,000,000円の一部として貸し付けたものであるが、貸付対象事業費のうちには公庫資金の貸付けの対象とならない住居部分の工事費が含まれており、実際の貸付対象事業費は13,127,753円となる。
 したがって、本件貸付金額との差額6,872,247円は過大な貸付けとなっている。
(143) 株式会社徳陽相互銀行(仙台市長町支店) 家庭用電気製品小売業者 店舗の開設 53年12月 23,000 4,850 低額設置
この貸付けは、店舗の開設に必要な資金23,300,000円の一部として貸し付けたものであるが、実際は、貸付対象設備のうち冷暖房設備をリースに変更したことなどにより18,149,840円で事業を完成していた。したがって、本件貸付金額との差額4,850,160円は過大な貸付けとなっている。
(144) 鯖江信用金庫(鯖江市神明支店) 電気配線工事業者 配電線工具の購入等 54年11月 17,000 3,315 低額設置
この貸付けは、配電線工具購入及び電柱置場盛土・整地工事等に必要な資金18,000,000円の一部として貸し付けたものであるが、実際は、貸付対象施設のうち電柱置場盛土・整地工事を取りやめたことなどにより13,685,000円で事業を完成していた。
 したがって、本件貸付金額との差額3,315,000円は過大な貸付けとなっている。
(145) 株式会社近畿相互銀行(大阪市城東支店) 試験機械製造業者 機械の購入 53年9月 25,000 7,000 低額購入
この貸付けは、マシニングセンターの購入に必要な資金26,742,000円の一部として貸し付けたものであるが、実際は、借受人が購入代金の値引きを受けて貸付対象事業費より低額な18,000,000円で購入していた。したがって、本件貸付金額との差額7,000,000円は過大な貸付けとなっている。
(146) 株式会社山口銀行(北九州市門司支店) 採石業者 機械の購入 53年10月 20,000 1,530 低額購入
この貸付けは、トラクタショベル1台の購入に必要な資金22,000,000円の一部として貸し付けたものであるが、実際は、借受人が購入代金の値引きを受けたことなどにより貸付対象事業費より低額な18,469,456円で購入していた。
 したがって、本件貸付金額との差額1,530,544円は過大な貸付けとなっている。
(147) 愛媛信用金庫(松山市潮見支店) 石油製品販売業者 ガソリンスタンドの設置 53年7月 25,000 25,000 貸付対象外
この貸付けは、ガソリンスタンドの設置に必要な資金28,500,000円の一部として貸し付けたものであるが、実際は、この貸付対象の設備は49年5月既に完成しており、設備資金の貸付対象とならないものである。
 したがって、本件貸付金額25,000,000円は不当な貸付けとなっている。
(148) 株式会社肥後相互銀行(熊本市川尻支店) 食料・飲料卸売業者 店舗及び倉庫の新築等 53年11月 23,000 10,598 低額設置
この貸付けは、店舗、倉庫の新築及び冷凍設備の設置に必要な資金23,644,000円の一部として貸し付けたものであるが、実際は、借受人が冷凍設備について冷凍庫はリースに変更し、冷凍機械は無償貸与を受けるなどしていて12,401,900円で事業を完成していた。
 したがって、本件貸付金額との差額10,598,100円は過大な貸付けとなっている。
178,000 67,741