日本住宅公団では、公団住宅等の建設の用に供する宅地の造成工事を毎年多数施行しているが、首都圏宅地開発本部ほか2支社(注)
において、昭和54年度中に施行している千葉東南部地区4工区整地(その2)工事ほか12工事(工事費合計43億2831万円)について検査したところ、次のとおり、機械土工費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の13工事は、いずれもスクレーパ等の土工機械を使用して、宅地造成地内の土の掘削、運搬、盛土を行うなどの工事であって、その機械土工費の積算についてみると、同公団で、52年10月に改定した土木工事積算要領により、造成地内の土質が砂質土及び普通土で、運土距離が中程度の場合には、運土距離の短い方から順次スクレープドーザ(ボウル容量6.4m3
)、21t級トラクタでけん引するスクレーパ(ボウル容量9.2m3
)、モータスクレーパ(ボウル容量11.0m3
)及びトラクタショベル(バケット容量1.8m3
)とダンプトラック(積載重量11t)の組合せの4種類の作業により施工することとして、本件対象土工数量、4.933,370m3
について、1m3
当たり120円から278円、工事費9億4583万余円と算定していた。
しかし、近年、この種の土工事には大型のトラクタが普及するとともに、走行速度等の作業能力も従来のものに比べて向上したことによって、本件各工事のように土質が砂質土及び普通土で掘削等の土工量が10万m3 以上と多量で、かつ、造成面積が大規模にわたる場合には、上記土工機械を運土距離によって区別して使用するよりは大型のトラクタでけん引する大型のスクレーパを使用するのが効率的、経済的であると認められる。現に、本件各工事の作業の実態をみても、大部分が32t級トラクタでけん引するボウル容量17m3 級の大型スクレーパを使用して作業を行っている状況であった。
したがって、本件各工事について、作業の実態等に即した大型スクレーパにより施工することとして積算したとすれば、積算額を約2億9200万円程度低減できたと認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、日本住宅公団では、55年9月に土木工事積算要領をこの種機械土工作業の実態に適合したものに改め、同年10月以降契約する工事からこれを適用することとする処置を講じた。
(注) 首都圏宅地開発本部ほか2支社 首都圏宅地開発本部、関西支社、中部支社