日本道路公団においては、高速道路等の建設を毎年多数実施しているが、そのうち、札幌建設局ほか3建設局(注)
が昭和54年度に施行している道央自動車道岩見沢東工事ほか21工事(工事費総額589億3000万円)について検査したところ、次のとおり、鋼矢板工費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の22工事においては、構造物基礎等の掘削に際して、土留め及び締切りのために鋼矢板工を施工しているが、この鋼矢板の打ち込み及び引き抜き費の積算については、本社制定の土木・事積算要領(以下「積算要領」という。)により、鋼矢板打ち込み費を4億9799万余円、同引き抜き費を4億4433万余円、計9億4233万余円と算定している。
しかして、上記の鋼矢板の打ち込み及び引き抜き費の積算に当たっては、鋼矢板の長さに応じて出力22kWから45kW の振動くい打ち機及びそれに適合した組合せ機械を使用することとし、また、1日当たりの施工枚数を鋼矢板の打ち込み及び引き抜き長さ別に定め、これを鋼矢板の種類及び地盤強度(N値)により補正することとしていて、例えば、長さ10mのIII型鋼矢板をN値7以下の箇所に全長打ち込み又は引き抜く場合、1日当たりの施工枚数を、打ち込みは12枚、引き抜きは13枚としている。
しかしながら、近年、この種施工機械が大型化し、作業能率が向上しており、本院が既往年度契約のものを含め鋼矢板の打ち込み及び引き抜きの施工実態について調査したところ、振動くい打ち機はほとんど出力40kWから60kWのものが使用されているなど施工機械が大型化していて、1日当たりの施工枚数は積算要領で定めている枚数を大幅に上回っており、打ち込みでは1.8倍以上、引き抜きでは1.9倍以上となっている状況であった。
したがって、前記各工事について施工の実態に即して鋼矢板工費を積算したとすれば、積算額を約3億3600万円程度低減できたと認められる。
上記についての本院の指摘に基づき、日本道路公団では、55年9月に積算要領の鋼矢板打ち込み及び引き抜き費を施工の実態に適合したものに改め、同年10月以降契約する工事から適用することとする処置を講じた。
(注) 札幌建設局ほか3建設局 札幌、東京第1、東京第2、新潟各建設局