科目 | (款)建設費 | (項)新線建設費 | |
部局等の名称 | 東京支社 | ||
補償件名 | 鐙(あぶ)島地区飲料水渇水対策費 | ||
補償の概要 | 北越北線薬師峠ずい道工事に伴う飲料水の渇水に対して補償したもの | ||
補償金額 | 365,000,000円 | ||
補償の相手方 | 十日町市鐙島地区渇水対策協議会 | ||
契約 | 昭和55年3月 | ||
支払 | 昭和55年3月 |
この補償は、補償の目的とした簡易水道施設の大部分が既に国庫補助事業で実施されているのにこれに対する調査が十分でなかったため、約2億5690万円が過大に支払われていると認められる。
(説明)
この補償は、日本鉄道建設公団(以下「公団」という。)が、北越北線建設工事の一環として、昭和48年度から新潟県十日町市地内において施行している北越北線薬師峠ずい道工事に伴い、同市鐙島地区の207世帯及び小学校、保育所等が飲料水源として利用している井戸に減渇水が生じたため、その対策としての簡易水道施設の設置に要する費用相当額334,300,000円及び維持管理費相当額30,700,000円総額365,000,000円を補償することとして、55年3月31日に十日町市鐙島地区渇水対策協議会(以下「対策協」という。)と補償契約を締結し、同日全額を支払ったものである。
しかして、公団が上記補償契約を締結するに至るまでの経緯についてみると、公団では、上記のずい道工事を48年8月に着手し、同年12月から掘削を開始したが、その後49年10月ごろから施工箇所の湧(ゆう)水が順次増加し、これに伴って上記の井戸に減渇水の現象が生じ、同市からその対策を施すよう要望があったため、応急対策として仮給水施設を設置し、被害地域を対象に52年12月から給水を実施するとともに、減渇水の原因及びその範囲を調査した。その結果、減渇水がずい道工事に起因するものであると認めたが、ずい道の覆工によって減渇水の事態が解消されることもあり得るところから、引き続き調査を続行する一方、対策協及び十日町市との間で本件補償について協議し、53年8月に補償の形態を基本的には被害地域を対象に簡易水道施設を設置する工事補償とすることとした。そして、補償工事の実施については、公団は工事に要する費用を対策 協に支払い、対策協は、工事の施行を十日町市に依頼して55年7月31日までに完成することを補償契約の条件として上記の補償を行ったものである。
一方、十日町市においては、52年ごろから本件補償対象地区を含む鐙島地区の全域を対象に簡易水道事業を56年度に実施することとしていたものであるが、前記地区に減渇水の現象が生じたため、54年度に繰り上げて実施することとし、54年4月、十日 町市鐙島地区簡易水道事業経営認可を新潟県知事から受け、更に7月厚生省所管の国庫補助事業として厚生省から国庫補助金の交付決定を受けるとともに、自己資金の大部分は起債によることとし、工事は厚生省から内示を受けて6月に着手し12月に完成して、55年1月10日から給水を開始しており、これに伴う国庫補助事業の実績報告及び国庫 補助金の交付額の確定が行われていた。
以上の経緯によっても明らかなように、補償契約締結時においては、補償の対象とした簡易水道施設が十日町市において既に設置され給水されており、補償の対象とした工事は施行する必要がなくなっていたものである。
しかして、公団は補償交渉の過程において十日町市が補償金と国庫補助金とは重複させない旨を再三言明していたため、これを信頼して上記の補償金を支払ったものであるが、補償対象地区において、本件補償工事と同一目的を有する簡易水道施設の設置が国庫補助事業として先行して行われていて、本件補償工事がこれと重複していることは容易に確認することができたものであるのに、何ら調査確認を行わないまま補償金を支払ったのは適切とは認められない。
したがって、本件補償は、前記の補償対象簡易水道施設のうち、国庫補助事業の対象とならない本管又は枝管から蛇口までの設備等を対象とするのが妥当であり、これにより補償額を計算すると108,091,820円となり、本件補償額は約2億5690万円が過大に支払われていると認められる。