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  • 昭和54年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第10 日本鉄道建設公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

青函ずい道建設工事において貸与している蓄電池機関車の機械損料の積算について


 青函ずい道建設工事において貸与している蓄電池機関車の機械損料の積算について

 日本鉄道建設公団では、青函ずい道建設工事を実施しているが、昭和54年9月に契約し、施行中の青函ずい道(吉岡)その10工事及び青函ずい道(竜飛)その10工事(工事費総額254億8095万余円)について検査したところ、次のとおり、同公団が請負業者に無償で貸与している蓄電池機関車(以下「貸与機関車」という。)の機械損料の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記2工事は、青函ずい道建設工事の一環として北海道側海底部のずい道工事(吉岡工区延長14.7km)のうち2.45kmを、本州側海底部のずい道工事(竜飛工区延長13km)のうち1.92kmを施行しているものである。 そして、この貸与機関車(吉岡工区58台、竜飛工区60台)は掘削土砂及び資材等を運搬する鋼車等をけん引するもので、ずい道建設当初の47年度に52台、48年度に57台、51年度に4台及び52年度に5台をそれぞれ新たに購入のうえ貸与し、55年度末でその多くが耐用年数7年を経過することとなるので、53年8月に、残工事の見直しを行い段階的に業者持ちの蓄電池機関車に切り換え貸与機関車と併用することに決め、その際この機械損料については残工事すべてに適用することとして、新たに運転1時間当たり機械損料を吉岡工区9,040円、竜飛工区8,560円と定めている。そして、本件2工事においても、上記機械損料を適用して吉岡工区では延べ運転時間132,170時間分1,189,625,628円、竜飛工区では延べ運転時間91,149時間分780,896,442円と算定している。

 しかして、上記の運転1時間当たり機械損料の算定に当たり貸与機関車の維持修理費率については、建設省の請負工事機械経費積算要領に定められている維持修理費率に本件工事の作業条件を加味して264%と算定しているが、この維持管理の実態をは握するため、同公団の工事用機器管理運用規程に基づく維持修理費等の実績を示方書に明示して請負業者から毎月提出させている。
 したがって、同公団では貸与機関車についてその維持修理費の実績を容易には握できるのであるから、維持修理費率はこの実績値によるべきであったと認められた。そして、建設省の積算要領においても請負業者に無償で貸与する機械損料については過去の実績により求めた維持修理費率を使用することとなっている。
 しかして、前記貸与機関車の維持修理費率の実績についてみると、54年7月に耐用年数が経過した15台については220%程度、55年3月までに耐用年数が経過した52台の実績については224%となっている状況である。

 いま、仮に維持修理費率を224%として本件工事に適用して試算してみても約1億1500万円の開差を生ずる計算となり、また、55年以降引き続いて施行される残工事についても上記と同様の維持修理費率を適用して積算したとすれば積算額を約1億3700万円程度低減できると認められた。
 上記についての本院の指摘に基づき、日本鉄道建設公団では、55年10月に貸与機関車の維持修理費率224%により機械損料を算定することとして、同年11月以降契約する工事から適用することとする処置を講じた。