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  • 昭和54年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第15 年金福祉事業団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

業務委託手数料の算定について


業務委託手数料の算定について

 年金福祉事業団では、厚生年金保険又は船員保険の被保険者が自ら居住するための住宅の建設又は購入に必要な資金を当該被保険者の事業主等又は公益法人(以下これらを「転貸者」という。)を通じて貸し付けており、昭和54事業年度中の貸付額は86,646件3192億3330万円に上っているが、このうち65,694件2466億0240万円は株式会社第一勧業銀行ほか469の金融機関(以下「代理店」という。)に委託して貸し付けており、これに係る初年分の委託手数料として約21億6500万円を支払うことが見込まれている。
 しかして、この手数料について検査したところ、次のとおり、代理店における委託業務処理の実態からみて、これに適用する手数料率に引下げの余地があるものと見受けられた。

 すなわち、上記の委託業務の内容は、借入申込みの受理及び審査、資金の貸付け(貸付決定を除く。)、貸付金の管理、回収並びにこれらの附帯業務であり、代理店は転貸者を直接の相手方として、当該転貸者が被保険者に転貸するのに要する資金(以下「転貸資金」という。)を貸し付けているが、貸付契約は転貸を受ける被保険者ごとにそれぞれ1件として締結する取扱いとなっている。そして、代理店に支払う手数料は、当該代理店が貸し付けた転貸資金に係る利息(54年中は利率を年6.5%として算定した額、55年以降は実収利息)又は延滞損害金の額に、1件の貸付契約金額が2000万円以下の場合は17%(55年1月以降は16%)、2000万円を超え5000万円以下の場合は13%(同12%)、5000万円を超え1億円以下の場合は10%(同9%)、1億円を超える場合は7%の料率をそれぞれ乗じて得た額となっているが、転貸資金は上記のとおり被保険者単位に契約していて1件当たりの貸付契約金額が最高500万円(同居親族中に老齢者が含まれているなどの場合は最高120万円まで加算することができる。 55年4月以降は最高550万円、加算額最高180万円)であるため、上記手数料率のうちの最高の料率(17%、55年1月以降は16%)が適用される結果となっていた。

 しかし、転貸資金は、貸付案件ごとに個別の事務処理を要する他の資金と異なり、貸付対象が被保険者の個人住宅に限定されていること、貸付金額も被保険者期間の長短により定まること、近年、信用保証制度も整備されていることなどのため、その貸付業務は画一的に処理できる要素が多く、代理店における実際の委託業務処理をみても、多数の貸付案件を一括して事務処理しているのが実態である。しかも、近年、取扱件数が著しく増加し、かつ、転貸資金の貸付けを主たる業務とする公益法人の取扱量が多くなる傾向が強まっており、その結果、貸付契約1件当たりの業務処理手数は著しく低減していると認められた。
 しかして、手数料率の改定については代理店の合意を要することから、昨年においても、年金福祉事業団は代理店と折衝を重ね、その結果、55年1月から1%引き下げるなどの処置を講じ、なおその後も検討を続けてはいたが、本件手数料の算定は早急に上記の実態に即したものに改める要があり、そのようにしたとすれば支払手数料を相当程度節減できると認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、年金福祉事業団では、55年10月に本件転貸資金に係る代理店の手数料率を56事業年度から取りあえず12%とすることとして各代理店に通知した。これにより、代理店に対する支払手数料は、54事業年度の代理店における貸付実績を対象に計算すると、初年分で約5億4000万円程度節減されることとなる。なお、同事業団では、今後更に調査検討のうえ、手数料率を段階的に改定することとしている。