日本中央競馬会で、昭和54年3月、随意契約により、日本トータリゼータ株式会社に、中央競馬会型トータリゼータシステム(勝馬投票券の発売、払いもどし等の投票業務を電子計算機で処理するシステム)に係る機器の保守整備を、勝馬投票券発売機及び払戻機は1日1台当たり1,020円から4,410円、電子計算機は1日当たり70,180円から514,290円で請け負わせ、54事業年度分の保守整備料3,538,897,240円を支払っている。
しかして、55年3月、同会社の経理の内容を調査したところ、次のように本件保守整備料の契約単価の基礎である人件費の積算内容が同会社における人件費支給の実態と著しく相違した点が見受けられた。
すなわち、上記保守整備業務の請負単価は、保守整備の所要人工数に1日当たりの人件費を乗じた額、測定器具経費等及び諸経費の合計額を保守日数で除するなどして算定しているものであって、このうち人件費は、従事職種を技術職、技術助手及び技能員に区別し、各職種ごとに前年度の積算の内訳である給与、時間外手当及び旅費等の月額に民間の賃金上昇率などを加味して54事業年度の1日当たり単価を技術職29,900円、技術助手20,080円及び技能員17,240円と算定している。そして、この方法は当初の43年に同種の民間企業の人件費を調査して算出したものをその後毎年一般の民間企業の賃金水準等によって改定してきているが、上記の算定単価の内訳である平均月額給与及び時間外手当並びに旅費等についてみると、技術職として従事している常勤嘱託及び技能員は平均勤続年数が短いのに長期間雇用されているものとして平均月額給与を算定していたり、また、全職種について勤務時間内に保守整備が行われているのに多額の時間外手当を要するとしていたり、他競馬場等への出張応援が少なくなったのに旧態のままであるとしていたりして積算しているなど、その積算は実情から遊離している状況であった。
しかしながら、同会社は、同会の勝馬投票券発売業務の機械化に伴い、電子計算機、同周辺機器等の保守業務及び運用についての援助業務を請け負うことを目的として設立され、その資本金も同会の全額出資によるものであり、かつ、随意契約により毎年継続して同会の上記業務を行ってきているものであるから、同会は、同会社の経理及び業務内容を十分は握するなどして保守整備料を算定する要があったのに、その配慮を欠き同会社の実態をは握しないまま積算していたのは適切でないと認められた。
したがって、同会社の支給実態を基として、従事職種別の1日当たり単価を修正すれば、技術職26,990円、常勤嘱託22,410円、技術助手18,800円及び技能員13,260円となるので、これにより各機器の保守整備請負単価を算定すると、勝馬投票券発売機及び払戻機は1日1台当たり870円から3,520円、また、電子計算機は1日当たり63,660円から466,650円となって、保守整備料は約4億円割高になっていると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、日本中央競馬会では、今後は実情に即した積算方法によることとして、55年6月、55事業年度から従来の単価契約方式を年間の総額契約方式に改めるとともに、同会社の常勤嘱託及び技能員の平均月額給与については54年12月末日現在の現員現給表などにより算定し、時間外手当及び旅費については54営業年度の支給実績を参考とするなどして実情に合わせた経費により積算することとするなどの処置を講じた。