(昭和56年11月28日付け56検第392号 食糧庁長官あて)
食糧庁では、飼料需給安定法(昭和27年法律第356号)に基づき、ふすまを中心とするそうこう類飼料の需給及び価格の安定を推進し、もって畜産経営の安定に資することを目的としてふすまの増産を図るため、毎年度飼料用外国産小麦(以下「飼料用小麦」という。)の売渡しを行っており、昭和55年度中に日本製粉株式会社小樽工場ほか128工場「増産ふすま工場」と「飼料小麦加工専門工場」とがあり、以下これらの工場を「加工工場」という。)に対し売り渡した数量は合計1,180,464t、売渡金額は総額658億7159万余円に上っている。
そして、上記の飼料用小麦は、農林水産大臣の指定した上記の加工工場に売り渡したうえ飼料用のふすまを生産させることとしているものであって、その売渡しに当たっては、ふすまの生産量を原麦重量の55%以上とするとともに、含有水分(以下「水分」という。)の最高限度を14%又は14.5%とするよう条件を付している。また、売渡予定価格については、原麦1tから生産されるふすまを550kgとし、その際小麦粉450kgが生産されるものとして、加工工場におけるふすまの販売価格相当額を19,250円、小麦粉の販売価格相当額を49,054円計68,304円(基準銘柄であるアメリカ産ウェスタンホワイト小麦の場合)と積算し、これから加工経費等の諸経費12,858円を差し引いて原麦1t当たりの価格を55,446円と算定している。
しかし、本院において、本件飼料用小麦の加工状況につき、北海道食糧事務所ほか17食糧事務所(注1)
管内所在の計84工場について加工工場が提出した報告書等により調査したところ、次のとおり、売渡予定価格の積算において原麦1tからの小麦粉の生産量を450kg(以下「織込数量」という。)としているのは加工の実態を反映しておらず、ひいて小麦粉の販売価格相当額が過少に計算されることとなっていて、その積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の84工場で55年度中に加工した飼料用小麦は合計815,984tで、これら原麦の水分は9%ないし12%であるが、その加工に当たっては、原麦の水分のままではばん砕効率が良くないので、ばん砕前に各加工工場とも加工の最適水分である15%ないし16%程度となるよう原麦に加水を行っている。このため、加工完了までの間における水分の発散と若干の入れ目 (注2)
等による減量分2%程度を考慮しても、製品であるふすまと小麦粉は、加水による増量分とこの減量分との開差分だけ加工前の原麦重量を上回って生産されることとなるが、加工工場においては、ふすまを加工前における原麦重量の55%となるよう生産しているのが実態であるので、ふすまは550kg生産され、ふすまの水分と同程度の水分で生産される小麦粉は前記の織込数量の450kgを上回って生産されることとなるものである。
現に、前記84工場のうち、織込数量を上回って小麦粉を生産しているものが加工工場の報告書によってみても79工場あり、これらの工場において55年度中に加工した原麦数量802,061tから生産された小麦粉は374,976tであって、このうち織込数量相当分を上回ったものは上記原麦数量の1.75%に当たる14,049t、総額15億9108万余円に上っている状況であった。
上記のように、飼料用小麦の加工に当たって、小麦粉が織込数量を上回って生産されているのに、このような加工の実態を十分調査しないで売渡予定価格を積算したのは適切とは認められない。
いま、仮に55年度中に売り渡した飼料用小麦1,180,464tについて、小麦粉の増加生産率を1.5%として計算しても、その増加生産量は約17,000t、売渡価格算定の基礎となる小麦粉の販売価格相当額は約19億9000万円となる。
ついては、飼料用小麦は今後も引き続き大量に売渡しを行うものであるから、その売渡しに当たっては、加工の実態を売渡予定価格に反映させ、もって売渡価格の適正を図る要があると認められる。
(注1) 北海道食糧事務所ほか17食糧事務所 北海道、宮城、茨城、栃木、群馬、千葉、東京、神奈川、富山、静岡、愛知、大阪、兵庫、奈良、和歌山、広島、香川、宮崎各食糧事務所
(注2) 入れ目 加工工場で袋詰めする際、出荷後消費者に流通するまでの間に運送等によって生ずる欠減が見込まれることから所定の量目以上に加える量