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  • 昭和55年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第6 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

農業用構造物の基礎工費等の積算について


(1) 農業用構造物の基礎工費等の積算について

 農林水産省では、農用地の改良、開発、保全等土地改良事業を国の直轄事業又は地方公共団体等が行う国庫補助事業として多数実施しているが、これら事業として東北農政局ほか6農政局(注1) が昭和55年度に施行した92工事(工事費総額182億8947万円)及び岩手県ほか16府県(注2) が54、55両年度に施行した292工事(工事費総額177億0262万余円、国庫補助金相当額93億2929万余円)について検査したところ、次のとおり、これらの工事で施工した各種構造物の基礎工費及び裏込工費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
 すなわち、上記各工事において、栗(ぐり)石等を用いて各種構造物の基礎等を施工した基礎工及び裏込工の労務費の積算についてみると、44年及び46年に農林水産省が制定した「土地改良事業等請負工事の価格積算要綱等」(以下「積算要綱等」という。)及びこれを基にして各府県が定めた積算基準等に基づき、基礎工では、その労務歩掛かりを1m3 当たり普通作業員0.37人から0.66人とし、栗石等の総量27,952m3 分の基礎工費(資材費を含む。)を計218,701,876円と算定し、また、裏込工では、その労務歩掛かりを1m3 当たり普通作業員0.42人から0.69人とし、栗石等の総量163,768m3 分の裏込工費(資材費を含む。)を計1,172,075,560円と算定して、総額1,390,777,436円としていた。

 しかして、上記の労務歩掛かりは、基礎工にあっては径15cm内外の栗石を人力によりコバ立て(注3) て敷き並べ、目つぶし砂利を入れて仕上げる、いわゆる「敷並べ」工法により、また、裏込工にあっては人力により径15cm内外の栗石を、構造物の裏側に積み上げた後盛土したり、切土面に積み上げて裏型枠代わりにする、いわゆる「築き立て」工法により、それぞれ施工することを前提として定められたものである。
 しかし、近年「敷並べ」工法又は「築き立て」工法に適する径15cm内外の栗石の入手が困難になったことや、仕様書において特にこれらの工法を指定しているものではないことなどから、実際には、基礎工では、径5cmないし15cmの栗石又は切込砕石等を使用した「敷きならし」工法(掘削整形された床に材料を投じ指定の厚さに敷きならしてつき固め仕上げる工法)により、また、裏込工では、基礎工の場合と同様の資材を使用した「かき込み」工法(構造物と切土又は盛土の間に材料を投入してつき固め仕上げる工法)により施工するのが通例となっており、本件各工事の施工の実態をみても「敷並べ」工法又は「築き立て」工法に比べ相当経済的な「敷きならし」工法又は「かき込み」工法により施工されていた。また、本件各工事と同種の工事を多数施工している他機関が制定した建設工事積算資料等及び農林水産、運輸、建設三省の協議により定めた「災害査定用積算参考資料」においては、近年の施工の実態に適合した歩掛かりを定めており、これに比べて本件各工事で適用している農林水産省及び各府県の歩掛かりは相当高いものとなっていた。
 したがって、上記各工事の基礎工費及び裏込工費について施工の実態に適合した歩掛かりにより積算したとすれば、積算額を約4億2300万円(直轄事業分6700万円、補助事業分3億5500万円(これに対する国庫補助金相当額1億9000万円))程度低減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、56年10月に「積算要綱等」を改正して、基礎工及び裏込工の歩掛かりを施工の実態に適合したものとし、同年11月以降積算する工事から適用することとする処置を講じ、これを各農政局に対して通知するとともに、各都道府県に対しても「積算要綱等」の改正内容を通知した。

 (注1)  東北農政局ほか6農政局 東北、関東、北陸、東海、近畿、中国四国、九州各農政局

 (注2)  岩手県ほか16府県 岩手、山形、栃木、群馬、千葉、石川、長野、愛知、滋賀、島根、広島、山口、徳島、福岡、熊本、大分各県、京都府

 (注3)  コバ立て 栗石などを面の小さい部分を下にして縦に据え付けること

(参考図)

(参考図)