運輸省では、航空局、海上保安庁及び気象庁が使用する通信回線としてI−1規格回線(注1)
を昭和44年頃から東京〜大阪間等に11回線及びD−1又はD−2規格回線(注2)
(以下「D規格回線」という。)を51年頃からI−1規格回線とほぼ並行する区間の所沢〜大阪間等に34回線それぞれ専用する契約を日本電信電話公社と締結しており、55年度中の専用料支払額は計527,150,400円となっているが、これら専用回線の使用状況について検査したところ、次のとおり、その利活用が適切でないため専用料の支払が不経済となっていると認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の専用回線は、いずれも関係部局内部相互間の直通電話等に使用するものであるが、I−1規格回線の場合、その1回線は12チャンネル(注3)
(12通話路)に分割して使用することができ、その1チャンネルはD規格回線1回線の機能を有しているのであるから、上記I−1規格11回線132チャンネルのうち使用されていない18チャンネルはD規格回線に代えて使用することができると認められた。
しかして、運輸省が、D規格回線を新たに契約する際、この未使用チヤンネルを使用しなかったのは、I−1規格回線に障害が生じたとき、代替回線が設定できない場合があると想定するなど信頼性が低いとしていたことによるものである。
しかしながら、近年における通信回線は、伝送路の拡充、搬送技術の進歩等により、障害時に対応する回線系統の多ルート化及び代替回線の整備が図られているため、I−1規格回線の信頼性を確保し得る状態になっているので、上記未使用のI−1規格回線の18チャンネルのうち、並行するD規格回線が少ないために利活用できない2チャンネルを除く16チャンネルを利活用することとし、D規格回線の中から、I−1規格回線に収容換えできるものを収容することとすれば、これに要する若干の経費を考慮しても、本件D規格回線の専用料支払額を約4500万円程度節減できたと認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、運輸省では56年10月に日本電信電話公社に所定の手続きを済ませ、D規格回線の専用契約を解除又は専用区間を短縮することとして、I−1規格回線未使用チヤンネルの利活用を図る処置を講じた。
(注1) I−1規格回線 48キロヘルツの周波数帯域を使用して電話等に利用する専用回線
(注2) D−1又はD−2規格回線 3.1キロヘルツの周波数帯域を使用して電話等に利用する専用回線
(注3) チャンネル 一つの通話信号の伝送可能な通信路数を表わす単位