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  • 昭和55年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第9 郵政省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

外務職員の募集に係る定額郵便貯金の契約に対する貯蓄奨励手当の支給について


 外務職員の募集に係る定額郵便貯金の契約に対する貯蓄奨励手当の支給について

 郵政省では、郵便貯金法(昭和22年法律第144号。以下「法」という。)に基づき通常郵便貯金、定額郵便貯金など6種類の郵便貯金を取り扱っており、昭和55年度末現在における郵便貯金残高は60兆8449億余円に達しているが、このうち大部分を占めているのは定額郵便貯金であり、その残高は54兆5648億余円となっている。郵便貯金については、法により、特定の法人又は団体を除き預金者ごとの貯金総額は300万円(住宅積立郵便貯金及び財産形成非課税貯蓄については別の額が定められている。)に制限されており、貯金総額がこの制限額を超えたときは、預金者にその旨を通知し預金者は貯金総額を制限額以内に減額しなければならないことになっている。また、同省では、定額郵便貯金等の契約を職員の勧奨によって成立させたときは、郵政事業職員特殊勤務手当支給規程(昭和49年公達第1号郵政大臣名)に基づき、当該職員に対して上記制限額を超える分を除き契約を成立させた額に応じて貯蓄奨励手当(以下「手当」という。)を支給することとしている(55年度の手当支給額338億6430万余円)。

 しかして、本院が、56年1月27日から3月5日までの間に、東京郵政局ほか4地方郵政局管内の成城郵便局ほか16郵便局(注1) において55年4月から12月までの期間に外務職員の勧奨による定額郵便貯金254,995件50,797,818,000円(これに係る手当相当額2億7430万余円)について、1回の預入額が高額のもの、同一住所で多数の名で預入しているもの、短期間に預入を重ねているものなど9,018件13,600,392,000円を抜き出して同一郵便局での制限額超過の有無及びこれに対する手当支給の適否を検査したところ、制限額を超えているものが454件超過額660,186,000円(うち架空の名義又は住所による預入274件超過額473,976,000円)あり、これについて手当3,565,001円が支払われていたほか、制限額を超えていないが、架空の名義又は住所による預入が86件137,450,000円あり、これについても手当742,230円が支払われていた。

 法に定める制限規定を遵守励行し、架空の名義等による預入を防止することについては、45年3月以降数次にわたり貯金局長通達による指示が行われているが、なおこのような事態を生じたのは、外務職員が預金者の住宅等を訪問して勧奨し募集してきた契約に対しては郵便局の貯金業務の責任者による預金者の住所、氏名の確認及び預入額の制限額超過の有無を調査点検する態勢が十分でなかったこと、並びに、これらのことに関する本省の各地方郵政局に対する指導が的確でなかったことによるものと認められた。
 したがって、このような事態の再発を防止するためには、預金者の住所、氏名が真実であるか否かを郵便局の内部資料等により調査し、制限額超過の有無を点検することを郵便局の上記責任者に義務付けることによって、その調査点検の態勢を確立し、また、たとえ制限額以内の預入であっても、架空の名義又は住所による預入については手当を支給しないことを明確にするよう適切な措置を講じ、もって、法の趣旨の徹底を図る要があると認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、郵政省では、56年3月及び4月、通達を発して、従来実施していなかった当該郵便局の責任者による調査点検(以下「自局監査」という。)の実施を義務付けるとともに、制限額以内の預入であっても架空の名義又は住所による預入について職員がその事情を知りながら受理したものについては手当を支給しない処置を講じた。
 なお、本院が、その後56年3月16日から5月30日までの間に、東京郵政局ほか5地方郵政局管内の東京中央郵便局ほか37郵便局(注2) における自局監査の実施状況を検査したところ、監査結果では55年度中の定額郵便貯金等の預入額について制限額を超えているものなどが7,789件6,962,429,000円、これに係る手当支給済額36,770,087円となっていたが、このほかに制限額を超えているものなど469件617,708,000円、これに係る手当支給済額3,335,616円が見受けられた。これは、自局監査の実施方法等が明確に示されていなかったため、監査の精度が十分でなかったことによるものと認められたが、本院の指摘により、郵政省では、56年6月、自局監査の実施方法等について具体的に定めた通達を発して、自局監査の実効を確保する処置を講じた。

 (注1)  東京郵政局ほか4地方郵政局管内の成城郵便局ほか16郵便局(東京郵政局管内)成城、練馬、江戸川各郵便局、(関東郵政局管内)中原、港北各郵便局、(東海郵政局管内)千種、瑞穂、松阪、岐阜中央各郵便局、(近畿郵政局管内)鳳、浜寺、柏原、松原、和泉、藤井寺各郵便局、(九州郵政局管内)筑紫、久留米各郵便局

 (注2)  東京郵政局ほか5地方郵政局管内の東京中央郵便局ほか37郵便局(東京郵政局管内)東京中央、下谷、目黒、大森、渋谷、豊島、足立北、八王子各郵便局、(関東郵政局管内)横浜中央、戸塚、平塚、小田原、浦和、熊谷、船橋各郵便局、(東海郵政局管内)名古屋中央、豊橋、一宮、豊川、浜松、浜松西各郵便局、(近畿郵政局管内)生野、大阪城東、中京、西陣、西宮、東灘各郵便局、(九州郵政局管内)熊本東、荒尾、福岡中央、小倉、黒崎各郵便局、(東北郵政局管内)仙台中央、仙台東、仙台南、塩釜、泉、山形各郵便局