会計名及び科目 | 一般会計 (組織)建設本省 | (項)都市計画事業費 |
(項)河川等災害復旧事業費 | ||
道路整備特別会計 | (項)道路事業費 (項)街路事業費 (項)離島道路事業費 | |
治水特別会計(治水勘定) | (項)河川事業費 (項)北海道河川事業費 (項)砂防事業費 | |
部局等の名称 | 北海道、青森、岩手、栃木、埼玉、千葉、神奈川、静岡、高知、長崎、大分、鹿児島各県、東京都 | |
補助の根拠 | 砂防法(明治30年法律第29号)、道路法(昭和27年法律第180号)、下水道法(昭和33年法律第79号)、河川法(昭和39年法律第167号)等 | |
事業主体 | 道県11、市2、計13事業主体 | |
補助事業 | 北海道士別市剣淵川中小河川改修(チューブス川地区その2)等18事業 | |
上記に対する国庫補助金交付額の合計 | 833,401,940円 |
上記の18補助事業において、工事の設計又は工事費の積算が適切でなかったり、工事の施工が設計と相違していたりしていて国庫補助金111,592,071円が不当と認められる。このうち44,658,572円は一般会計の分(3事業)、49,671,133円は道路整備特別会計の分(11事業)、17,262,366円は治水特別会計の分(4事業)である。これを都道県別に掲げると、別表 のとおりである。
(説明)
建設省所管の補助事業は、地方公共団体等が事業主体となって実施するもので、同省ではこれらの事業主体に対して事業に要する費用について補助金を交付している。
しかして、これらの補助事業の実施及び経理について検査したところ、前記の13事業主体が実施した下水道事業、道路事業及び河川事業等の18事業において工事の設計又は工事費の積算が適切でなかったり、工事の施工が設計と相違していたりしていた。
いま、これらについて不当の態様別に示すと次のとおりである。
工事の設計又は工事費の積算が適切でないもの
6事業 | 不当と認めた国庫補助金 | 25,296,188円 |
工事の施工が設計と相違しているもの
12事業 | 不当と認めた国庫補助金 | 86,295,883円 |
都道県名 | 事業 | 事業体 | 事業費 | 左に対する国庫補助金 | 不当と認めた事業費 | 不当と認めた国庫補助金 | 摘要 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(131) | 北海道 |
士別市剣渕川中小河川改修(チューブス川地区その2) | 北海道 | 77,520 | 69,768 | 1,603 | 1,442 | 工事の施工不良 |
この工事は、剣渕川改修事業の一環として、昭和54年度に士別市西四条地内のチューブス川において、築堤工延長202m及び護岸工延長471.4m等を施工したもので、築堤工のうち、堤防の法(のり)面や天端(ぱ)法肩を流水、降水等による浸食から防護するため、張芝、筋芝及び天芝を施工することとしているが、設計書及び仕様書によると、張芝については両岸の堤防の表法面3,414m2
に、筋芝については左岸堤の裏法面1,181m2
に、また、天芝については左岸堤の天端法肩519mにいずれも芝を植え付けることとし、その際使用する芝は採取後長期間積み重ねて枯死しないようにすることとし、また、寒期は凍害を受けないよう通気性を考慮して保温の措置を講じるなどすることとしていた。 しかるに、芝の植付けに当たって、現場搬入後、植付けまでの約30日間の長期にわたり、積み重ねて通気性のないビニルシートで被覆したまま保管し、発芽力等が弱まった芝を降雪期に植え付けたこと及びその後の養生が十分でなかったことなどにより上記のうち、張芝1,330m2 、筋芝849m2 及び天芝406mが枯死していて法面保護の目的を達していない。 |
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(132) | 青森県 | 東津軽郡三厩村一般国道339号道路改良(第6-4-1) | 青森県 | 137,210 | 102,907 | 9,048 | 6,786 | 工事の設計不適切及び施工不良 |
この工事は、一般国道339号の改良の一環として、昭和54年度に北津軽郡小泊村地内の道路延長780mを新設したもので、うち重力式土留めコンクリート擁壁延長126mは、設計書、図面及び仕様書によると、高さを3mから4.5m、天端幅を20cm、底面幅を1.10mから1.55mの断面とし、施工に当たっては、擁壁の基礎となる地盤をかき乱さないよう掘削し、擁壁背面の埋め戻しは良質の土砂で擁壁に被害を与えないように施工することになっていた。 しかして、この種の擁壁は一般に「建設省土木構造物標準設計」によって設計を行っており、これによれば擁壁の高さが3mから4.5mの場合、天端幅は40cm、底面幅は1.60mから2.25mとなっているものである。 しかるに、本件擁壁については、誤って上記のような天端幅、底面幅としたため標準設計に比べて著しく狭小なものとなっていて、転倒等に対する安定計算によっても所定の安定を確保できないものとなっている。しかも、施工に当たって擁壁の基礎となる地盤を粗雑に掘削したり、擁壁背面の埋め戻しの際岩塊混じりの掘削土をそのまま使用したりしたため、既に一部にき裂が生じたり、天端が6.5cm程度せり出して前面に傾斜したりしていて、安定性の低いものとなっている。 |
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(133) | 青森県 | 北津軽郡小泊村一般国道339号55年災害復旧 | 青森県 | 37,500 | 25,012 | 7,316 | 4,879 | 工事費の積算過大 |
この工事は、昭和55年5月の豪雨による地すべりで被害を受けた小泊村地内の一般国道339号の延長110m区間を復旧するため、同年度において、地山に対し横方向のボーリングを実施し、直径65mmの排水管(配管用炭素鋼鋼管)を挿入する地下排水ボーリング工35本延べ960mを施工したもので、工事費の積算についてみると、地下排水ボーリング工費は青森県の定めた土質調査を目的とする調査ボーリングの積算の基準を適用して、ボーリングマシン1台1日当たりの掘進量を2.58mとして労務費及び機械損料等を計算し、1m当たり24,533円、960m分で23,551,680円と算定していた。 しかし、調査ボーリングは土質調査試料を採取するため、掘削作業が断続的となるなどの作業であるのに対し、排水ボーリングは排水管を挿入するため横方向にボーリングするだけで、調査試料採取の要がなく、能率的に実施できるのであるから調査ボーリングの積算の基準をそのまま適用しているのは適切とは認められず、同県の地すべり防止事業等の排水ボーリング工において適用されている積算の基準を適用することとすれば、1日当たりの掘進量は3.91mとなる。なお、本件工事は地すべり地帯で施工するため土質状況判定等の作業も行うこととしており、これを考慮すると排水ボーリング工費は1m当たり18,875円、960m分で18,120,000円となる。 いま、仮に上記により工事費を修正計算すると、総額30,183,552円となり、本件工事費はこれに比べて約7,316,000円割高となっていると認められる。 |
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(134) | 岩手県 | 遠野市新張穀町線街路改良 | 岩手県 | 22,729 | 15,152 | 2,129 | 1,419 | 工事の施工不良 |
この工事は、遠野市新張穀町線街路改良事業の一環として、昭和55年度に在来の街路延長111.5mの拡幅等を施工したもので、うち車道部843m2
及び歩道部560m2
のアスファルトコンクリート舗装については、設計書及び仕様書によると、積雪寒冷時における車両のタイヤチェーンによる摩耗の度合が大きいことなどを考慮し、これに適応した配合のアスファルトコンクリートを使用する要があるとして、表層は岩手県が定めている「アスファルト混合物材料配合表」により、アスファルト量8.4%の細粒度アスファルトコンクリートを厚さ3cmで施工することになっていた。 しかるに、その施工に当たり誤ってアスファルト量7.3%のものを使用したため、設計に比べ耐摩耗性が低いものとなっており、既に車道部の全面及び歩道部の一部には摩耗により骨材面が現われている状況であり、採取した試料のアスファルト量も6.88%から7.7%(平均7.3%)となっていた。 |
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(135) | 栃木県 | 塩谷郡栗山村県道黒部西川線災害防除 | 栃木県 | 12,008 | 6,004 | 6,304 | 3,152 | 工事の施工不良 |
この工事は、県道黒部西川線の栗山村湯西川地内での落石等による災害を防止するため、昭和54年度に道路の山側斜面にコンクリート吹付け927m2 (第1工区693m2 、第2工区234m2 )及びコンクリートブロック練り積み127m2 を施工したもので、設計書、図面及び仕様書によると、コンクリート吹付けは、地山法面の浮石をかき落して清掃した後、全面にわたり径2mmの金網(網目5cm×5cm)を張り、この金網をコンクリート吹付け厚さのほぼ中間に位置するように固定したうえ、コンクリートを地山から厚さ15cmに吹き付けることになっていた。 しかるに、第1工区のコンクリート吹付け693m2 については、平均厚11cm程度(最小厚2cm)で施工されていて、設計に比べて著しく不足しているばかりでなく、地山法面の清掃を十分行わなかったり、金網を直接地山に張り付けたりしたままコンクリートを吹き付けていて、施工が著しく粗雑となっており、吹付けコンクリートの一部にき裂を生じていたり、コンクリートが地山に密着せず、地山との間に空げきを生じたりしている状況であった。 | ||||||||
(136) | 埼玉県 | 大宮市県道大宮菖蒲線踏切除却 | 埼玉県 | 44,908 | 29,938 | 2,124 | 1,416 | 工事費の積算過大 |
この工事は、県道大宮菖蒲線と東武鉄道とが平面交差する踏切を除却して立体交差とする工事の一環として、昭和54年度に、大宮市大和田地内において県道の路面排水を処理するため、ヒューム管延長163.6mの布設及びマンホール3箇所等を築造したもので、工事費の積算についてみると、マンホール本体等を据え付ける基礎の底部工費は、マンホール1箇所当たりのモルタル上塗費として上塗面積27.07m2
に1m2
当たり19,882円を乗じた538,205円、これにコンクリート工費等を合わせて1,024,751円、3箇所分で3,074,253円、また、マンホール等を築造するための立坑の土留め及び支保工に使用する仮設鋼材の運搬費は、鋼矢板の仮設面積605.7m2
について1m2
当たり3,955円、H形鋼の仮設延長166.2mについて1m当たり2,635円、計2,833,480円と算定していた。 しかし、底部工のモルタル上塗費は誤って10m2 当たりの単価を用いているばかりでなく、このモルタル上塗費を含めたマンホール1箇所当たり底部工費も誤って10箇所分を計上していて、正当な工費は1箇所当たり54,036円となり、3箇所分で162,108円、また、仮設鋼材の運搬費は誤って鋼矢板には10m2 当たり単価、H形鋼には10m当たり単価をそれぞれ用いたものであって、正当な運搬費は283,347円となる。 いま、仮に上記により工事費を修正計算すると、積算不足となっていた水替費等3,321,623円を考慮しても総額42,783,626円となり、本件工事費はこれに比べて約2,124,000円割高となっていると認められる。 |
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(137) | 千葉県 | 市原市県道袖ケ浦姉崎停車場線道路災害防除(1工区) | 千葉県 | 28,192 | 14,096 | 8,714 | 4,357 | 工事の施工不良 |
(138) | 同 | 同(2工区) | 同 | 32,040 | 16,020 | 12,738 | 6,369 | 同 |
(139) | 同 | 同(3工区) | 同 | 29,424 | 14,712 | 11,027 | 5,513 | 同 |
小計 | 89,656 | 44,828 | 32,479 | 16,239 | ||||
これらの工事は、県道袖ケ浦姉崎停車場線の市原市地内での法面崩壊による災害を防止するため、昭和55年度76,686,000円、56年度12,970,000円計89,656,000円で道路の山側斜面にコンクリートブロック法枠4,649m2
(1工区1,490m2
、2工区1,734m2
、3工区1,425m2
)等を施工したものであるが、設計書、図面及び仕様書によると、コンクリートブロック法枠工は、斜面を法勾(こう)配1割、法長2.15mから10.15mで上、下段に切土して整正し、土砂の流失を防止するための吸出し防止板(厚さ1cm)を敷いた後、法面には既製の法枠ブロック(長さ95cm、幅15cm、厚さ15cm又は20cm)を縦、横に配置して正方形状のブロック枠に組み立てて据え付け、法枠内には中詰めの割ぐり石(径5cmから15cm)を厚さ15cm又は20cm築き立て敷き並べることとしていた。 しかるに、コンクリートブロック法枠工の施工に当たって、うち3,151m2 (1工区874m2 、2工区1,261m2 、3工区1,016m2 )は、切土法面が湧水等によって崩落したり、土砂が流失したりしていたにもかかわらず、これを修復しないまま吸出し防止板を敷き、法枠ブロックの格点部と法面との間に厚さ5cmから20cm程度の木片、角材をかませて法枠ブロックを据え付けたため、法枠ブロックと法面との間に空げきを生じているなど、その施工が粗雑となっており、設計に比べ不安定な状態となっていた。 |
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(140) | 東京都 | 清瀬市公共下水道南部1号汚水幹線管きょ(その4)、枝線(その5)築造 | 清瀬市 | 63,098 | 37,858 | 33,472 | 20,083 | 工事の施工不良 |
この工事は、清瀬市公共下水道事業の一環として、清瀬市竹丘地区内の公道の路面下に、清瀬南部1号汚水幹線管きょ等を新設するため、昭和55年度に管路施設工延長519mを施工したもので、このうち管推進工延長288mは設計書及び仕様書等によると、発進用及び到達用の立坑を築造し、この発進坑から刃口を装着した鉄筋コンクリート管(呼び径800mm。以下「管」という。)をジャッキで地山に貫入させ、刃口部の土砂を手掘りで掘削しながら管を順次継ぎ足して到達坑まで布設した後、管1本(長さ2.43m)当たり2箇所ある注入口から管の外周と地山との間に生じた間げきにモルタルをてん充して管と地山を密着させることとしていた。 しかるに、モルタル注入の状況について調査したところ、全注入箇所235箇所のうち確認できた219箇所はモルタルが全く注入されていなかったばかりでなく、掘削に当たり刃口より大きく先掘りしたことにより、管の外周と地山の間に空げきを生じている箇所が173箇所(5cm以上の空げきのある箇所が60箇所)もある状況で、全延長にわたり管と地山が一体となっていないため、地山のゆるみを防止することができず、設計に比べて安定性を欠いたものとなっている。 |
(参考図)
(141) | 神奈川県 | 横浜市公共下水道元石川新羽汚水幹線管きょ築造(その12) | 横浜市 | 209,000 | 125,400 | 32,826 | 19,695 | 工事の施工不良 |
この工事は、横浜市公共下水道事業の一環として、同市緑区あざみ野地内に公共下水道汚水幹線管きょを新設するため、昭和54、55両年度に、トン事ネル延長621.5m及び立坑1箇所を施工したもので、設計図面及び仕様書によると、トンネルは、内空断面の形状を直径1.6mの馬てい型、覆工コンクリートの設計巻き厚は30cmとし、施工に当たっては、設計中心線を確認しながら掘削したうえ、鋼製H型支保工(以下「支保工」という。)を1.2m間隔で建て込み、覆工型枠についても設計中心線を中心として組み立て、設計巻き厚を確認して覆工コンクリートを打設することになっていた。 しかるに、施工に当たって請負人が作成した施工管理図によれば、掘削の中心線の一部が設計中心線からずれていた区間があったにもかかわらず、そのずれた掘削断面に合わせて支保工を建て込み、覆工型枠を設計中心線に合わせて組み立ててコンクリートを打設していて、覆工コンクリートの厚さが設計に比べ不足している箇所があると認められた。そこで、覆工コンクリートのアーチ部について1打設区間の延長9mごとに左右6箇所をせん孔して調査したところ、69打設区間621.5mのうち27打設区間243mの162調査箇所において、覆工コンクリートの厚さが設計に比べて不足している箇所が94箇所あり、このうち47箇所については厚さが5cm以上も不足していて施工が著しく粗雑となっており、覆工コンクリートの強度が設計に比べて低くなっている。 |
(参考図)
(142) | 静岡県 | 賀茂郡南伊豆町町道仲休場線道路改良 | 静岡県 | 70,713 | 47,142 | 6,489 | 4,326 | 工事の施工不良 |
この工事は、町道仲休場線道路改良の一環として、昭和55年度に南伊豆町子浦地内に延長178mの道路を新設するため切盛土、擁壁工及び切土法面保護として山側斜面にコンクリート吹付け648m2
等を施工したもので、設計書及び図面によると、コンクリート吹付けは軟岩等の地山を6分又は7分のこう配に切りくずして整正した後、全面にわたり厚さ3cmのモルタルを吹き付け、この上に径2.6mmの金網(網目7.5cm×7.5cm)を張り渡し、更に、径10mmの鉄筋を格子状(50cm×50cm)に配筋したうえ、コンクリートをモルタルから厚さ10cmに吹き付けることとしていた。 しかるに、コンクリート吹付けは、斜面の上部から吹き付けていく際、その下部の鉄筋及び金網に付着したはね返りの骨材等を十分取り除かなかったり、吹付け材料を混合する機械の不具合によりコンクリートの混ぜ合わせが不十分で骨材の分離を生じたりしたままコンクリートを吹き付けていて、施工が著しく粗雑となっており、横方向の鉄筋に沿って吹付けコンクリートの全面にわたりき裂を生じていたり、一部箇所は空げきを生じたりしている状況であった。 |
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(143) | 同 | 田方郡土肥町一般国道136号道路改良(第2工区) | 静岡県 | 57,753 | 43,314 | 2,341 | 1,755 | 工事費の積算過大 |
この工事は、一般国道136号の改良の一環として、土肥町地内の道路延長80mを新設するため昭和53年度に、土留工として井桁(げた)組擁壁490.9m2
及び片持ばり式擁壁等を施工したもので、工事費の積算についてみると、うち3連式の井桁組擁壁401.1m2
の設置費については、部材製造業者から徴した井桁組擁壁の資料に基づいて1m2
当たりの設置には、普通作業員等計2.53人、トラッククレーンの運転は1.4時間として1m2
当たり34,345円、計13,778,990円と算定していた。 しかし、上記の歩掛かりは4連式の井桁組擁壁に適用するものであって、これを取り違えて3連式の井桁組擁壁に適用したものであり、3連式の井桁組擁壁を設置する場合の歩掛かりは普通作業員等計2.09人、トラッククレーンの運転は1.16時間となるので、1m2 当たりでは28,433円、計11,407,243円となる。 いま、仮に上記により工事費を修正計算すると、総額55,411,545円となり、本件工事費はこれに比べて約2,341,000円割高となっていると認められるる |
(参考図)
(144) |
高知県 | 土佐郡本川村吉野川荒廃砂防 | 高知県 | 87,021 | 58,014 | 8,994 | 5,996 | 工事の施工不良 |
この工事は、本川村長沢地内の吉野川右岸山腹の土砂崩壊を防止する砂防事業(事業年度昭和51年度から54年度まで)の一環として、昭和54年度に山腹の斜面(面積約17,500m2
)に水路工延長818m、方格枠延長605m及び編柵(さく)工延長2,379m等を施工したもので、設計書及び図面によると、上記編柵工のうち延長2,179mは、整形した斜面に階段状に施工した方格枠と方格枠との同等に約5m間隔で方格枠に沿って2列又は3列計71列にわたり設置することとしている。そして、この編柵工は、長さ1.2mの松丸太又は杉丸太のくい(末口径10cm)計3,714本を60cm間隔でくい頭部の50cmを残して根入れは70cmとなるように垂直に打ち込み、これらのくいに合成樹脂製の網を帯状に張り付け、その背後にはくいの上端部まで盛土することとしていた。 しかるに、くいの打込みに当たって、表土が凍結していたり、地中にぐり石があったりしたことから根入れが不足したままくい打ちを取り止め、不ぞろいとなったくい頭部を切断するなどして編柵工を施工したため、くいは人力で容易に揺れ動くばかりでなく、既に編柵工の一部は背後の土砂により前面に押し出されて傾斜している状況であった。そこで、上記のくいのうち224本を抽出して調査したところ、くいの根入れが設計どおり施工したものはわずか23本にすぎず、特に70本については根入れが設計に比べ半分以下となっていて、その施工が著しく粗雑となっており、編柵工としての目的を達していない。 |
(参考図)
(145) |
長崎県 | 大村市東大川中小河川改修(2工区) | 長崎県 | 43,500 | 21,750 | 11,078 | 5,539 | 工事の施工不良 |
この工事は、東大川改修事業の一環として、昭和54年度に大村市溝陸郷地内の今村川右岸延長103.2mにわたり、護岸工及び築堤工等を施工したもので、うち護岸工は、加圧コンクリート矢板(以下「矢板」という。)長さ6mのもの延長81.5m及び長さ7mのもの延長21.5m計103mを連続して打ち込み、頭部にコンクリートを打設して基礎とし、その上部に練り積みコンクリートブロック護岸等を施工することとしていた。 しかして、設計書及び図面によると、矢板は、工事箇所が軟弱な地盤であることから、日本工業規格、SPCW−120A(厚さ120mm、幅500mm)のものを使用することとしており、その施工に当たっては、上記規格の強度を得るため、矢板の配筋量の多い側を土圧を受ける堤防に向けて打ち込むことになっていた。 しかるに、全延長について矢板の配筋量の少ない側を堤防に向けて打ち込んだため、矢板の強度が低くなり、護岸工の基礎としての強度が設計に比べて著しく低下している。 |
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(146) | 長崎県 | 西彼杵郡琴海町谷口川荒廃砂防 | 長崎県 | 251,020 | 167,346 | 6,427 | 4,284 | 工事の設計数量の過大 |
この工事は、谷口川の荒廃による土砂流出の危険を防止するため、昭和53年度から55年度までの間に琴海町谷口地内に砂防えん堤高さ17.6m、長さ71mの築造及び護岸工等を施工したもので、このうち、堤体のコンクリート所要量については、設計図面によると、堤体を7ブロックに区割りし、各ブロックを四角柱とみなして、四角柱の体積を求める方法により断面積に上辺と下辺の平均長を乗じて、その所要量を計6,401m3
と算出し、これにより工事費を算定していた。 しかして、上記コンクリート所要量の算出に当たり、堤体の中間部の第2ブロックから第4ブロックまでの断面積は、第2ブロックの側面の上幅(第3ブロックの下幅)を6.418m、第3ブロックの側面の上幅(第4ブロックの下幅)を2.85mとして算出しているが、設計図面に基づいて計算すると、第2ブロックの上幅は5.188m、第3ブロックの上幅は2.425mとなるから、6.418m及び2.85mとしてそれぞれの断面積を計算しているのは誤りである。また、上記ブロックのうち、特に、第1ブロックから第3ブロックまでの形状は、堤体の正面からみて、上辺が下辺に比べて著しく長く、しかも、側面からみて上幅が下幅に比べて著しく短く、高さも相当あるから、体積の算出に当たって、これを四角柱とみなすのは適切でなく、このような場合はオベリスクの体積を求ある方法(注) により正確に算出すべきであったと認められる。 いま、上記により堤体の体積を算出すると5,945m3 となり、コンクリート所要量は455m3 が過大となっている。 |
(注) オベリスクの体積を求める方法 オベリスクの形状をした堤体の体積は、次の算式により求められる。
(参考図)
(147) | 大分県 | 下毛郡三光村県道円座中津線築城橋架替 | 大分県 | 39,313 | 26,208 | 9,261 | 6,174 | 工事の設計不適切 |
この工事は、県道円座・中津線の三光村地内の築城橋(横長41.1m)を架け替えるため、昭和54年度に橋りょうの下部工として、左岸橋台1基、橋脚1基等を施工したもので、このうち、橋台については発注前に作成されていた設計図面(くい頭部詳細図)によると、外径700mm、長さ4.35m の鋼管ぐい18本を打ち込み、更に、このくい頭に鋼板製のふたをかぶせ、くいの周りに鉄筋を溶接して、これを橋台部の鉄筋と結束したうえ、くいの上部10cmを鉄筋コンクリートの橋台へ埋め込むこととして、くいと橋台とを剛結して一体化させ、くい頭部に作用するすべての力に対して抵抗させることとしていた。 しかし、本件工事の実施に当たり、請負人に示した設計図面に上記のくい頭部詳細図を欠いていたため、くい頭部に溶接することになっていた鉄筋等が全く施工されなかったものであり、このためくいと橋台が剛結されないものとなっており、地震時においては橋台としての安定が確保できない状況であり、橋台は設計条件がみたされていない不安定なものとなっていると認められる。 |
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(148) | 鹿児島県 | 大島郡大和村主要地方道名瀬瀬戸内線災害防除 | 鹿児島県 | 19,624 | 12,755 | 12,927 | 8,402 | 工事の施工不良 |
この工事は、県道名瀬瀬戸内線の大和村名音地内での落石による災害を防止するため、昭和54年度に覆式ロックネット4,462.2m2
を道路の山側斜面3箇所に施工したもので、設計書及び図面によると、斜面の上部に岩盤に使用するルーフボルトアンカー(長さ1m、径25mm)47本及び土中に使用する組立てアンカー(長さ1.5m、径25mmのもの4本で1組)20組を4m程度の間隔で設置し、これらのアンカーに取り付けた径16mmのワイヤロープを縦方向に斜面の下側まで降ろした後、斜面に金網を張り渡し、更に金網の左右両側及び下部の斜面にルーフボルトアンカー26本及び組立てアンカー8組を設置して、径16mmのワイヤロープを金網の横方向に取り付けて金網を固定することなどとしている。そして、ルーフボルトアンカーは、岩盤を深さ90cm削孔してこの中に挿入し、その先端部に取り付けられているコーンとくさびで岩盤に定着させることとしていた。 しかるに、ルーフボルトアンカー73本についてみると、斜面の上部に設置した47本のうち42本と金網の左右両側の斜面に設置した26本のうち9本は、コーンとくさびを取り外し、岩盤を削孔して挿入することなく、土中に打ち込んでいるだけで、根入れも10cmから30cm程度不足しているものもあり、また、岩盤に挿入されている22本のうち2本はコーンとくさびを取り外して打ち込んでいるなどしていて施工が著しく粗雑となっており、これらのルーフボルトアンカーは容易に引き抜くことができる状況であり、これに支えられている覆式ロックネット2,991.2m2 は極めて不安定な状態となっていた。 |
(参考図)
計 | 1,262,573 | 833,401 | 184,818 | 111,592 |