科目 | (損益勘定) (項)保守費 |
部局等の名称 | 東京電気通信局(計画部局) |
東京電気通信保全工事事務所(実施部局) | |
契約の概要 | A形自動交換機用ラインスイッチ23,650個の部品取替え等の修理をしたもの |
契約の相手方 | 東京通信機器工作協同組合 |
契約 | 昭和55年4月〜56年2月 13回 随意契約(単価契約) |
支払額 | 50,498,050円(ほかに支給材料費2,024,349円) |
支払 | 昭和55年6月〜56年6月 13回 |
この修理契約は、ラインスイッチ(注1) の修理をすることとなった原因の検討が十分でないまま、取り替える必要のない部品を取り替えることとしたため、約3700万円が不経済になったと認められる。
(説明)
この修理契約は、A形自動交換機の保全の一環として、同交換機の架に搭載されているラインスイッチから回転機構部だけを取り外し、これを修理業者が工場に持ち込み、分解、清掃、ワイパ等の部品取替え及び調整等を行ったうえ電話局に持ち帰り、架に固定されたバンク部を清掃後、修理済みの回転機構部を取り付け、全体の調整、検査等を行うものである。
しかして、この修理を実施した経緯についてみると、東京電気通信局管内の四谷電話局ほか3電話局等(注2)
が昭和53、54両年度に自局に設置されているラインスイッチ46,550個(54年度末の設置数)のうち近く撤去が予定されている分等を除いた34,750個についてその機能を点検したところ、ワイパとバンク端子間に接触不良を生じているものなどが4,925個あったところから、東京電気通信局は、障害の発生を未然に防止するためには、接触不良等のないものを含めオーバーホールをする必要があるとして東京電気通信保全工事事務所に修理を命じ、これを受けて同工事事務所では55年度に上記4,925個を含む23,650個について修理を実施した。そして、その契約単価を2,130円及び2,137円として、総額50,498,050円(ほかに支給材料費2,024,349円)を支払っている。
しかしながら、当局が接触不良等が生じているとしていた4,925個について、本院がその原因を調査したところ、その大部分の3,939個は、ワイパ及びバンク端子部分にほこりが付着していたり、ワイパのバンク端子を挟む力が弱かったりしたため接触が円滑を欠いていたにすぎないものであり、また、残りの986個についてもワイパの先端部がゆがんでいただけであり、いずれも直ちに障害を生ずるものとは認められなかった。そして、東京電気通信局以外の各電気通信局管内では、このような場合の処置としては、ラインスイッチを架に搭載したまま、部内でエアガン(注3)
等による清掃及び簡易な調整等を日常の保全作業として行っているだけで、ワイパ等の部品取替えは行っていない状況であった。
したがって、本件修理契約に当たっては、東京電気通信局管内の保全体制を考慮してこれらの作業を外注するとしても、上記の23,650個のうち、良品についてはもとより、接触不良等があるとしていた4,925個についても多額の経費を要するワイパ等の部品の取替えを行う必要は全く認められず、他の電気通信局管内で実施している程度の作業を行わせれば十分であったと認められる。
いま、仮に本件ラインスイッチ23,650個の修理について、他の電気通信局管内で実施している日常の清掃及び簡易な調整等に相当する範囲の作業にとどめることとして修正計算すると、単価は638円及び632円、総額14,982,800円となり、本件支払額50,498,050円(ほかに支給材料費2,024,349円)は約3700万円が不経済になっていると認められる。
(注1) ラインスイッチ A形自動交換機を構成する各種スイッチの1つで、発信者が受話器をあげると最初に作動し、2枚1組で3組のワイパがバンク端子を挟みながら回転してセレクタ(ダイヤルパルスを受けるスイッチ)25個のうち空いている1個を選択して接続する機能を有し、バンク部と回転機構部から構成されている。(参考図参照)
(注2) 四谷電話局ほか3電話局等 四谷、芝、浜町各電話局及び青梅電報電話局
(注3) エアガン ライフスイッチ各部に付着しているほこりを吹きとばすために使用するピストル型の空気噴射器で、エアホースでエアコンプレッサにつながっている。