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  • 昭和55年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第7 日本住宅公団(昭和56年10月1日以降は「住宅・都市整備公団」)|
  • 不当事項|
  • 役務

図面、資料等の複写作業の請負契約に当たり、作業の実態等の把握が適切でなかったため、不経済になったもの


(165) 図面、資料等の複写作業の請負契約に当たり、作業の実態等の把握が適切でなかったため、不経済になったもの

科目
(款)事業共通費 (項)管理諸費
(款)宅地造成費 (項)宅地業務諸費
(款)住宅管理費 (項)住宅管理業務費
(款)住宅等建設費 (項)住宅等業務諸費

部局等の名称 (1) 日本住宅公団本社
(2) 東京支社
(3) 関東支社
契約の概要 契約相手方から日本住宅公団の事務所に作業員を派遣させ、作業室、電気、水道を無償で提供して、図面、資料等の複写の作業を行わせるもので、複写の種類、用紙の規格ごとに1枚当たりの単価を約定し、複写実績枚数によって代金が支払われる。
契約の相手方 株式会社 青松社
契約 昭和55年4月 随意契約(単価契約)
支払額 (1) 90,391,335円 } 計 356,657,811円
(2) 143,001,725円
(3) 123,264,751円
支払
昭和55年5月〜56年4月 14回

 この契約の予定価格(単価)の積算に当たり、作業の実態の把握が適切でなかったため、契約単価が割高となり、ひいて約6570万円が不経済になったと認められる。

(説明)
 この作業は、上記各部局で必要な図面、資料等の複写、製本等を行わせるもので、昭和55年度における支払額は356,657,811円となっている。このうち、日本住宅公団(以下「公団」という。)の事務所の作業室で行わせている静電式複写、青写真陽画焼付け及び第2原図焼付けの作業に係る契約の内容及び支払の状況についてみると、作業に必要な作業室、電気、水道を公団が無償で提供する一方、契約相手方から作業員、複写機及び用紙等の材料を提供させて複写作業を行わせ、公団はその人件費、機械経費、材料費等を基に積算して定めた1枚当たりの単価(静電式複写30円、青写真陽画焼付け5円10から72円、第2原図焼付け41円から576円)にそれぞれの複写実績枚数を乗じた額を支払うもので、55年度中の複写実績総枚数14,700,563枚(静電式複写2,979,351枚、青写真陽画焼付け11,593,806枚、第2原図焼付け127,406枚)に対し、総額242,526,958円を支払っている。
 しかして、上記の1枚当たり単価の予定価格の積算についてみると

(1) 静電式複写については、公団本社が本件契約相手方との間に初めてこの契約を締結した43年当時の契約単価を引き続き55年度においても採用していたが、その内訳は、静電式複写機1台当たりの月間処理枚数を10,000枚として、作業員の人件費、機械の保守管理等の機械経費を1枚当たりに換算するなどして、それぞれ8円80、15円10とし、これに用紙代(半透明紙)2円90を加えるなどして、1枚当たり単価を30円と積算し、同額で約定したものである。
 しかしながら、本件作業の実態についてみると、その後の電子工業技術等の進歩に伴い静電式複写機の性能が43年当時に比べ著しく向上し、作業能率が良くなったことや、発注枚数が増加したことなどのため、54年度以降の1台当たり月間処理枚数は30,000枚以上と大幅に増加しており、このためこの間の人件費の上昇にもかかわらず、1枚当たりの人件費は7円11と低下し、また、保守管理費は、本件契約相手方と保守会社との間の保守契約上、処理枚数の増加によって逓減することになっているところから、1枚当たりの機械経費は6円82と低下しており、更に、用紙についても実際は低価な普通紙(1枚当たり1円81)がかなり使用されている状況であった。
 したがって、このような作業及び使用用紙の実態に基づき1枚当たりの単価を計算すると、半透明紙を使用した場合は23円32、普通紙を使用した場合は18円10となる。

(2) 青写真陽画及び第2原図の焼付けについては、公団本社が43年に1時間当たりの処理枚数を前提として前項同様の方法により積算した単価を基にし、その後は人件費、機械経費及び資材費については各年度の物価上昇等を考慮しているものの1時間当たりの処理枚数については据え置いたまま算定してきており、55年度は、青写真陽画焼付けについてはB5からA0までの感光紙の規格ごとに1枚当たり単価を5円10から72円、第2原図焼付けについては、B5からB1までの感光紙の規格ごとに1枚当たり単価を41円から576円と積算し、同額で約定していた。
 しかしながら、本件作業の実態についてみると、前項同様、青写真複写機の性能が向上したなどのため、処理枚数が大幅に増加しており、例えば焼付け枚数の最も多い青写真陽画焼付けのB4規格及び第2原図焼付けのB2規格の感光紙についてみると、43年当時1時間当たりそれぞれ250枚、70枚としていたものが、55年度ではそれぞれ550枚、150枚と2倍以上になっていて、1枚当たりの作業単価は相当低減しており、また、これら用紙の価格についても、積算では43年当時のそれぞれ1.91倍、1.56倍としているが、本院の調査によると43年当時に比べて前者は1.67倍程度、後者は値下りしている状況であった。
 したがって、このような作業の実態及び適正な材料価格に基づき1枚当たりの単価を計算すると、青写真陽画焼付けについてはB5からA0までの感光紙の規格ごとに4円24から55円43、第2原図焼付けについてはB5からB1までの感光紙の規格ごとに27円97から323円33となる。
 いま、仮に上記各項により55年度分の支払額を修正計算すると、総額290,906,637円となり、本件支払額356,657,811円はこれに比べて約6570万円が不経済になっていると認められる。