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  • 昭和55年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第7 日本住宅公団(昭和56年10月1日以降は「住宅・都市整備公団」)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

住宅建設工事の前払金の支払について


(1) 住宅建設工事の前払金の支払について

 日本住宅公団(以下「公団」という。)では、毎年多数の住宅建設工事を発注し、請負契約締結後、請負業者に対して工事を円滑に行わせるため、当該工事の材料費、労務費等の一部に充てる費用として前払金を支払っているが、東京支社ほか2支社(注) が昭和56年3月に請負契約を締結したもののうち、北柏団地49ブロック住宅建設工事ほか33工事(工事費合計259億5290万円)における前払金支払総額77億8532万円について検査したところ、これら工事は、契約締結時には着手の見通しが確実でないのに前払金が支払われていて適切でないと認められた。
 すなわち、公団では、日本住宅公団法(昭和30年法律第53号)の規定による建設計画に関する当該地域の地方公共団体の長からの事前意見聴取や、建築基準法(昭和25年法律第201号)の規定による建築物の計画通知などの法手続を完了してから住宅建設工事の発注を行うことを原則としているが、55年度住宅建設工事の発注に当たって、建築関係の諸手続や敷地造成工事が完了していない場合であっても、契約締結後、通常請負業者が現地において工事に着手するまでの間(以下「準備期間」という。)にこれら手続等が完了することが確実と判断されるものについては発注を行う方針を各支社に示したところ、各支社では年度末に発注した上記の34工事について準備期間内に上記手続等が完了すると見込んで契約を締結した後、当該契約条項に基づき所定の期日までに前払金を支払っていた。しかるに、上記手続等が準備期間内に完了していないなどのため、発注後3箇月を経過した56年6月末においても工事に着手していない状況であった。

 このような事態を生じたのは、前記方針の趣旨が各支社に徹底しておらず、各支社では各件ごとの実情を十分把握しないまま安易に契約を締結し、しかも、請負業者の請求があれば14日以内に支払わなければならないこととなっている前払金条項を付した契約を締結していることによると認められた。
 したがって、上記各工事のように準備期間を見込んで発注する場合には、工事着手の見通しが確実なものについて発注することとするのはもとより、前払金の支払については、工事着手に必要な法手続や敷地造成工事等が完了しているなど諸条件がすべて整った後に支払うこととするなど、この種事態の再発防止のため諸規定等を整備するなどの処置を講じ、もって財政資金の効率的な使用を図る要があると認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、56年10月1日以降日本住宅公団の一切の権利義務を承継した住宅・都市整備公団では、56年11月、各支社長に対して、建設工事の前払金支払の適正化を図るため、前払金請求可能日を工事着手に必要な法手続が完了し、また、支障となる障害がなくなった日以降とすることを内容とする通達を発し、同年12月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

 (注)  東京支社ほか2支社 東京、関東、関西各支社