日本住宅公団(以下「公団」という。)では、公団住宅等の建設の用に供する宅地等の造成工事を毎年多数施行しているが、首都圏宅地開発本部が、昭和55年度中に施行している千葉東南部地区12工区造成(その1)工事ほか3工事(工事費総額13億8973万円)について検査したところ、次のとおり、地盤改良工費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の4工事は、宅地等を造成する工事であって、このうち盛土箇所の基礎地盤が軟弱なものについてはこれを改良するため、地盤改良工として、軟弱な地層に砂くい打込み機を使用して多数の砂柱を打ち込んで地盤を安定させるサンドドレーン工を施工している。そして、サンドドレーン工費の積算についてみると、公団で52年10月に改定した土木工事積算要領(以下「積算要領」という。)により、砂柱の根入れ深さに応じた砂柱1本当たりの打ち込み所要時間を算出し、これにより運転1時間当たりの標準打ち込み延長を計算したうえで1m当たりの打ち込み費を算定し、施工延長122,834mについて工事費1億3949万余円と積算していた。
しかして、砂柱1本当たりの打ち込み所要時間については、打ち込みの開始から打ち上がりまでの純作業時間のほか、移動建込みに要する附帯作業時間等を含めた打ち込みの全所要時間を算出することとなっていて、例えば、砂柱の長さが11mの場合の打ち込み所要時間は、1本当たり15.13分と算出している。
しかしながら、本件サンドドレーン工は、施工機械の改良及び施工技術の進歩に伴い作業能力が著しく向上しており、公団が既往年度に実施した同種工事の実績をみても、砂柱1本当たり(平均長さ11m)の打ち込みの平均所要時間は6.96分程度で、当局積算による15.13分に比べ著しく短くなっており、積算要領により算出される砂柱1本当たりの打ち込み所要時間は施工の実態と相違したものになっていると認められた。
したがって、本件各工事について、上記の施工実態を基とした打ち込み所要時間等により積算したとすれば、積算額を約3400万円程度低減できたと認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、日本住宅公団では、56年4月に土木工事積算要領を施工の実態に適合したものに改め、同月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。
(参考図)