日本道路公団では、高速道路等の建設工事を毎年多数実施しているが、そのうち、札幌建設局ほか4建設局(注) が昭和55年度中に契約している道央自道車道ポロト橋工事ほか10工事(工事費総額150億1700万円)について検査したところ、次のとおり、PC鋼棒の緊張工費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
上記の11工事は、いずれも張出し工法によるプレストレストコンクリート箱けた(以下「PC箱けた」という。)の橋りょうを架設するもので、橋脚柱頭部の左右に1基づつ架設作業車を設置し、この中で、コンクリート型枠及びPC鋼棒等の組立て、コンクリートの打設、PC鋼棒の緊張などを行い、左右の均衡を保たせながら、1ブロック長2mから4mのPC箱けたを両方向に順次張り出すようにして施工するものであるが、このうち、施工量の最も多い径32mmPC鋼棒の緊張(緊張側アンカーの組立て、取付けの作業を含む。)に係る労務費の積算についてみると、日本道路公団本社制定の土木工事積算要領に定める歩掛かりを適用し、緊張10箇所当たりの作業人員を8人要するものとして、28,872箇所分で3億3142万余円と算定していた。
しかしながら、上記積算要領の歩掛かりは、45年に関係団体が刊行した張出し工法に係る資料の数値をそのまま採用して現在に至っているが、近年張出し工法による橋りょう工事が多数施行され、緊張作業に使用するジャッキ及び油圧ポンプが改良されたことなどにより、緊張作業の能率は45年当時に比べ相当向上しているから、本件積算に適用した上記の歩掛かりは施工の実態に即していないと認められた。そこで、本院が張出し工法における緊張作業の実態を調査したところ、その作業人員はPC鋼棒の緊張作業のほか、アンカーの組立て、取付けの作業を含め、上記積算要領に定める歩掛かりの4分の3程度となっている状況であった。
したがって、本件各工事について施工の実態を考慮して積算したとすれば、積算額を
(参考図)
約8200万円程度低減できたと認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、日本道路公団では、56年11月に土木工事積算要領のPC鋼棒緊張工の歩掛かりを施工の実態に適合したものに改め、同月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。
(注) 札幌建設局ほか4建設局 札幌、仙台、東京第一、新潟、広島各建設局