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  • 昭和55年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第12 雇用促進事業団|
  • 特に掲記を要すると認めた事項

移転就職者用宿舎について


 移転就職者用宿舎について

 雇用促進事業団では、雇用保険法(昭和49年法律第116号)、雇用促進事業団法(昭和36年法律第116号)及び雇用促進事業団一般業務方法書に基づき、昭和36年度から移転就職者(注1) で住宅に困窮している者に貸与するため、移転就職者用宿舎(以下「宿舎」という。)を労働保険特別会計からの出資金により毎年度継続して設置し、56年3月末現在で996宿舎114,209戸(取得価額3244億2025万余円)を管理運営している。

 この宿舎は、移転就職者にその住宅を確保できるまでの間低家賃で暫定的に貸与する目的で設置されているもので、移転就職者の受入れ実績、今後の受入れ見込みがあって、住宅事情がひっ迫している地域等に宿舎の必要度を勘案して必要な戸数(最小限80戸)を設置することとなっており、貸与期間は、1年未満(公営住宅、その他適当な住宅に転居する確実な見込みがあるときに限って1年未満の期間延長)となっている。その後、入居対象者については48年10月から移転就職者の利用に支障がない限り、移転就職者に準ずる者(注2) にも貸与することができることとなった。
 そして、宿舎の56年3月末現在の入居戸数は102,064戸(運営戸数114,209戸の89%)となっており、移転就職者の入居戸数についてみると、39年度には21万余人であった移転就職者が55年度には7万余人と減少したこともあって、50年3月末の69,528戸(運営戸数87,818戸の79%)を頂点に、移転就職者の入居が逐年低下し、56年3月末では37,018戸(運営戸数114,209戸の32%)となっている。また、50年度以降に運営を開始した26,391戸についてみると、56年3月末現在の移転就職者の入居戸数は1,289戸(運営戸数26,391戸の4.8%)にすぎず、なかには移転就職者が全く入居していない宿舎(131宿舎10,590戸)もあり、全体として運営開始の新しい宿舎ほど移転就職者の入居状況が著しく減少している。更にその入居期間についてみると、長くても2年間と貸与期間を定めているのに2年以上にわたる長期入居者の戸数が50年度以降各年度末ではいずれも全体の入居戸数の60%以上を占め、56年3月末では69,242戸(67%)に達している状況である。

 本院が、56年中に大楽毛(おたのしけ)宿舎(北海道釧路市所在)ほか96宿舎11,527戸(取得価額469億2798万余円)について実地に調査したところ、移転就職者を入居させてもなお余裕があることから近傍の既設宿舎又は公営住宅の入居者を新設の宿舎に住み替えさせていたり、移転就職者及び移転就職者に準ずる者を入居させてもなお余裕があることから雇用保険の被保険者でない者を入居させていたり、10年以上の長期にわたって入居させていたりしているものが多数見受けられ、宿舎設置の本来の役割が十分に果たされておらず、地方公共団体等の公的機関が建設している公的住宅とほとんど変わらないものとなっており、宿舎の家賃が地代相当額及び減価償却費を除いて算定されていることから公的住宅の家賃に比べて相当低廉となっていて、公的住宅の入居者と宿舎に長期間にわたり入居している者との間に不均衡な状態が生じているものと認められた。

 しかして、同事業団においては、56年度に3,000戸(予算額405億8817万余円)の建設を予定し、今後も引き続き宿舎を設置することとしているが、近年運営を開始した宿舎のなかには移転就職者が全く入居していない宿舎もあるなどの事態にかんがみ、宿舎の設置及び運営がこのような状況でこのまま推移すると、移転就職者用宿舎設置のために投下された多額の事業費がその目的に即応した効果を十分に発現しない状態がなお継続することとなる。

 (注1)  移転就職者 公共職業安定所の紹介により、居住地を管轄する公共職業安定所の管轄区域外において住居を変更して就職する者

 (注2)  移転就職者に準ずる者 移転就職者以外の者であって、住居の移転を余儀なくされたことなどに伴い、職業の安定を図るために宿舎の確保が必要であると公共職業安定所長が認めた者