会計名及び科目 | 一般会計(組織)建設本省 | (項)住宅建設等事業費 (項)都市計画事業費 (項)河川等災害復旧事業費 |
道路整備特別会計 | (項)道路事業費 | |
治水特別会計(治水勘定) | (項)河川事業費 (項)河川総合開発事業費 | |
部局等の名称 | 北海道ほか14府県 | |
補助の根拠 | 公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和26年法律第97号)、道路法(昭和27年法律第180号)、河川法(昭和39年法律第167号)等 | |
事業主体 | 道1、府1、県9、市1、町3、計15事業主体 | |
補助事業 | 北海道斜里郡斜里町道道知床公園線56年災害復旧等18事業 | |
上記に対する国庫補助金交付額の合計 | 641,691,004円 |
上記の18補助事業において、工事の設計又は工事費の積算が適切でなかったり、工事の施工が設計と相違していたりなどしていて国庫補助金64,070,576円(一般会計の分18,187,911円、道路整備特別会計の分22,787,634円、治水特別会計の分23,095,031円)が不当と認められる。これを道府県別に掲げると別表 のとおりである。
(説明)
建設省所管の補助事業は、地方公共団体等が事業主体となって実施するもので、同省ではこれらの事業主体に対して事業に要する費用について補助金を交付している。
しかして、これらの補助事業の実施及び経理について検査したところ、前記の15事業主体が実施した道路事業、河川事業、災害復旧事業等の18事業において、工事の設計又は工事費の積算が適切でなかったり、工事の施工が設計と相違していたりなどしていた。
いま、これらについて不当の態様別に示すと次のとおりである。
工事の設計又は工事費の積算が適切でないもの
9事業 | 不当と認めた国庫補助金 | 20,047,660円 |
工事の施工が設計と相違しているもの
8事業 | 不当と認めた国庫補助金 | 43,248,666円 |
事業費の精算が過大となっているもの
1事業 | 不当と認めた国庫補助金 | 774,250円 |
道府県名 | 事業 | 事業主体 | 事業費 | 左に対する国庫補助金 | 不当と認めた事業費 | 不当と認めた国庫補助金 | 摘要 | |
(138) |
北海道 |
斜里郡斜里町道道知床公園線56年災害復旧 |
北海道 |
千円 140,400 |
千円 112,320 |
千円 4,665 |
千円 3,732 |
工事の設計不適切及び施工不良 |
この工事は、昭和56年8月の台風により被災した斜里町岩尾別地内の道道知床公園線の延長212m区間を復旧するため、同年度に、崩壊した谷側斜面等に土留柵工、横断函渠工等を施工したもので、うち土留柵工延長78mは、設計書及び図面によると、大口径ボーリングマシンにより谷側斜面上部に道路に沿って1.5m間隔で53箇所(深さ1.4mから11.8m)削孔し、そのなかに長さ3mから12mのH形鋼(350mm×350mm×12mm×19mm)を土留めぐいとして建て込み、くいとくいとの間に北海道が定めた「土木事業適用積算資料」において規格化されているSP-1型のプレストレストコンクリート板(厚さ4cm、幅40cm、長さ1.48m、許容曲げモーメント(注)
0.35t・m/m、以下「土留め板」という。)を、所定の強度を得るためPC鋼線(径2.9mmの2本より線)が配置されている側を表にして1箇所に深さに応じ1枚から11枚積んで計335枚布設した後、土留め板の裏側に盛土して斜面の安定を図ることとしていた。 そしてこの土留め板の規格については、盛土によりすべての土留め板に均等に土圧が加わるものとして最大断面部で、土留め板1枚当たりの最大曲げモーメントを0.28t・mと算定し、これに耐える強度を有するのは、許容曲げモーメントが0.35t・mである上記のSP-1型の土留め板であるとしてこれを一律に使用することとしていた。 しかし、この種工事の土留め板に加わる土圧を計算する場合は、深さに比例して土圧が増加するものとして計算すべきものであり、また、設計においてSP-1型の土留め板1枚当たりの許容曲げモーメントとした0.35t・mは、同積算資料によると、土留め板の鉛直方向1m当たり(幅40cmの土留め板2.5枚分)の数値であり、正当な1枚当たりの許容曲げモーメントは0.14t・m(0.35t・m÷2.5枚=0.14t・m/枚)となる。 |
(注) 曲げモーメント ある部材がその長さ方向の軸に直角な力を受けたとき、部材内部に発生する部材を曲げようとする力
(参考図)
(139) | 栃木県 | 安蘇郡田沼町彦間川小規模河川改修(分割2号) | 栃木県 | 14,760 | 9,840 | 2,147 | 1,431 | 工事の施工不良 |
この工事は、彦間川改修事業の一環として、昭和56年度に田沼町下彦間地内の彦間川の左岸側において、護岸工延長151m、法覆工1,485m2
等を施工したもので、うち法覆工は、堤防の法面、天端法肩を流水、降水等による浸食から防護するため、表法面に張芝966m2
及び天端法肩には耳芝延長151mを、また、裏法面に筋芝519m2
を施工することとしているが、仕様書等によると張芝等の施工に当たっては、芝の生育に適した適度の通気性を有し、かつ雑草の根等の有害物を取り除いた覆土を厚さ20cm敷き均したうえ、芝を植付けることとしていた。 しかるに、芝の植付けに当たって、覆土は、粘土分が多く固結しやすい土を使用しているばかりでなく混入していた雑草の根等の有害物を十分に除去していなかったことなどにより張芝、筋芝及び耳芝が枯死していて法面保護の目的を達していない。 |
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(140) | 神奈川県 | 厚木市公共下水道恩會川処理分区管きょ築造(第9-2工区) | 厚木市 | 62,020 | 36,259 | 2,869 | 1,721 | 工事の設計過大 |
うち国庫補助対象額 60,432 |
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この工事は、厚木市公共下水道事業の一環として、昭和57年度に厚木市恩名地内の公道路面下に管きょ延長219mを新設するため下水道推進工法用鉄筋コンクリート管(内径900mm。以下「管」という。)を推進工法(参考図(1)参照)
により布設したもので、当初設計においては、他の管きょの合流計画、施工箇所の土質等の条件に基づき、施工延長219mを工事始点から、40m、40m、20m、56m及び63mの5直線区間に区分し、各区間の区分箇所に発進用立坑(注1)
3基(工事始点、工事始点から80m及び156mの地点)並びに到達用立坑(注2)
2基(工事始点から40m及び100mの地点)を構築して推進することとし(参考図(2)参照)
、これら各立坑の設置地点には管布設完了後それぞれマンホールを築造することとしていた。 しかして、工事着手後間もなく地下埋設物所在の確認調査をしたところ、工事始点から80mの発進用立坑設置予定箇所に通信用ケーブル等の地中障害物が埋設されていることが明らかとなったため、この立坑の構築地点を工事始点から66.7mの地点に変更するなどして推進区間を、工事始点から、42.3m、24.4m、50.3m、39m及び63mとする設計変更を行い(参考図(2)参照) 、これによって工事が実施されていた。 しかし、工事始点から42.3m、24.4mの2区間についてみると、工事始点から66.7mの地点までは直線の路面下であって、この間を1区間として推進する場合の管に作用する抵抗の値を試算すると261.6tと管の許容推進耐荷力(注3) 298.6tを相当下回っており、また、工事始点から42.3m地点附近には他の管きょが合流する計画がないからマンホール設置の必要もないので、工事始点から66.7mの地点までの区間についてはこれを2区分することなく1区間とすれば足り、このようにしたとすれば、42.3mの地点の到達用立坑の構築及びマンホールの築造はその要がなく、また、工事始点の発進用立坑は到達用立坑で足りたと認められる。 |
(注1) | 発進用立抗 | 管の推進基地となる立抗で、推進機、土砂排出や資材搬入に使用するクレーン等を設置してある大形(本件の場合は長さ5.5m、幅2.9m、深さ6.5m~8.1m)の立抗 | |
(注2) | 到達用立坑 | 管の推進の終点となる小形(本件の場合は長さ、幅とも2.9m、深さ7.7m又は8.3m)の立坑 | |
(注3) | 許容推進耐荷力 | 管を推進する場合、管に作用する推進力に対する管の安全限界として設計計算に用いられる値 |
(141) | 富山県 | 氷見市県道氷見惣領志雄線道路改良 | 富山市 | 41,959 | 27,972 | 1,757 | 1,171 | 工事の設計不適切 |
この工事は、県道氷見惣領志雄線の道路改良の一環として、昭和57年度に氷見市鉾根地内の道路延長110mを拡幅するため、切土、盛土、井桁擁壁及びパイプカルバート等を施工したもので、うちパイプカルバート延長25.7mは、在来の道路の谷側斜面中腹にあった上水道の水源が本件拡幅工事により道路下に埋没するため、その水源を確保することを目的として設置したもので、設計書、図面等によれば、内径1,000mmの遠心力鉄筋コンクリート管の普通管一種を土被り12mの位置に、管底部を管外周の2分の1で固定するいわゆる180度固定基礎の形式として設計し、これにより施工していた。 しかし、パイプカルバートの基礎形式を決定する際には、管種、管径、土被り厚等の設計条件を検討し、土圧等に十分耐えられる構造とすることになっており、富山県が適用した「道路土工、擁壁・カルバート・仮設構造物工指針」(社団法人日本道路協会編)の「パイプカルバート基礎形式選定図」によれば、土被り厚が大きいことなどのために180度固定基礎では土圧等に耐えられないので360度固定基礎としなければならないにもかかわらず、前記基礎形式選定図を見誤って設計、施工したため、土圧等の荷重に対応するひび割れ強さについての安全率は目標値とした1.25を大幅に下回る0.15となっていてその強度が不足し、土被りは6m程度の暫定盛土(残る土被り6m程度については59年度に施工予定)であったにもかかわらず、上記パイプカルバート全延長のうち延長17.0m間の管の頂部には既にき裂が生じているなど著しく不安定なものとなっている。 |
(参考図)
(142) | 福井県 | 福井市一光川砂防55年災害復旧(123号その3) | 福井市 | 53,600 | 35,751 | 4,858 | 3,240 | 工事費の積算過大 |
この工事は、昭和55年8月の集中豪雨による地すべりで被害を受けた福井市上一光町地内の一光川左岸山腹の斜面を復旧するため、56、57両年度に整正した斜面に集水井(注)
2基を設置し、各集水井の中から地山に対して横方向のボーリングを実施し、内径50mm の集水管(硬質塩化ビニル管)を挿入する集水ボーリング工12本延べ750m及び内径100mm の排水管(硬質塩化ビニル管)を挿入する排水ボーリング工2本延べ145mを施工したもので、工事費の積算についてみると、集・排水ボーリング工費は福井県の定めた地質調査を目的とする調査ボーリングの歩掛かりを適用して、1m当たりの穿(せん)孔時間を集水ボーリング2.9時間、排水ボーリング3.7時間として労務費及び機械損料等を算出し、それぞれ1m当たり20,940円及び28,240円、延べ895m分で19,799,800円と算定していた。 しかし、調査ボーリングは地質調査試料を採取するため、穿孔作業が断続的となるなどの作業であるのに対し、集・排水ボーリングは集・排水管を挿入するため横方向にボーリングするだけで調査試料採取の要がなく、能率的に実施できるのであるから、地質調査ボーリングの歩掛かりをそのまま適用しているのは適切とは認められず、一般に地すベり防止事業等の集・排水ボーリング工の積算に適用されている歩掛かりによることとすれば、集・排水ボーリングの1m当たり穿孔時間はそれぞれ2.01時間及び2.55時間、工費は15,150円及び20,760円延べ895m分で14,372,700円となる。 いま、仮に上記により工事費を修正計算すると、積算不足となっていた集水井用の補強リングの加工費等1,094,464円を考慮しても総額48,742,000円となり、本件工事費はこれに比べて約4,858,000円割高になっていると認められる。 |
(注) | 集水井 | 地すべり対策工法の一つで深層地下水を排除するために設ける井戸 |
(参考図)
(143) | 長野県 | 上伊那郡箕輪町公営住宅建設 | 箕輪町 | 114,137 | 67,677 | 1,300 | 774 | 事業費の精算過大 |
(144) | 京都府 | 京都府既設公営住宅改善排水処理施設除却(小栗栖西団地) | 京都府 | 24,000 | 10,313 | 3,866 | 1,933 | 工事費の積算過大 |
うち国庫補助対象額 20,627 |
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(145) | 同 | 同(北後藤団地) | 同 | 15,000 | 6,111 | 2,144 | 1,072 | 同 |
うち国庫補助対象額 12,222 |
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これらの工事は、既設公営住宅改善事業の一環として、昭和56年度に、京都市伏見区所在の両公営住宅団地の汚水が京都市公共下水道施設により処理されることになったのに伴い不要となった団地内排水処理施設を撤去するため、鉄筋コンクリート造りの処理槽の解体除却、跡地の埋め戻し等を施工したもので、工事費の積算についてみると、解体工事により発生するコンクリート塊713m3
(小栗栖西団地)374m3
(北後藤団地)の処分費については、京都市が事業者から産業廃棄物の処分を受託して市営の処分場に受け入れる場合に徴収することとして定めている額(200kg当たり600円と少量の単位で定められている。)を適用して1m3
当たり7,200円と算定しそれぞれ5,133,600円(小栗栖西団地)、2,692,800円(北後藤団地)と積算していた。 しかし、これら工事の特記仕様書によればコンクリート塊の処分先は一般の産業廃棄物処理業者の処分場となっているのであるから、上記のように京都市自らが受託して処分する場合の単価を適用したのは適切でなく、一般的な処分費用を積算すれば足り、このような場合の処分単価としては、京都府の他の土木事業における工事費積算の際にも適用されている京都市の積算資料掲載の1m3 当たり1,100円(市が実態調査の結果作成している。)を適用すべきであったと認められる。 いま、仮に上記により工事費を修正計算すると、コンクリート数量が過少計上となっていた分の処分費等を考慮しても、総額19,500,414円(小栗栖西団地)、12,367,650円(北後藤団地)となり、本件各工事費は、これに比べて約3,866,000円(小栗栖西団地)、約2,144,000円(北後藤団地)それぞれ割高になっていると認められる。 |
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(146) | 兵庫県 | 神戸市都市小河川櫨谷川河川改修(その1工事) | 兵庫県 | 212,652 | 70,884 | 36,183 | 12,061 | 工事の施工不良 |
(147) | 同 | 同(その2工事) | 同 | 180,821 | 49,173 | 22,654 | 7,551 | 同 |
うち国庫補助対象額 147,521 |
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小計 | 393,473 | 120,057 | 58,837 | 19,612 | ||||
うち国庫補助対象額 360,173 |
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これらの工事は、櫨谷(はせたに)川改修工事の一環として、河川断面の拡大改良を図るため、昭和55、56両年度に神戸市垂水区内に延長820m(その1工事501m、その2工事319m)の築堤工及びコンクリート法枠護岸工4,476m2
(その1工事2,805m2
、その2工事1,671m2
)等を施工したものである。このうち、コンクリート法枠護岸工は、設計書、図面及び仕様書によると、堤防法尻部に法枠基礎コンクリート及び法長調整コンクリートを打設した後、法面にぐり石(厚さ20cm)を敷き均したうえ、既製の法枠ブロック(長さ90cm、幅10cmから45cm、厚さ20cm)を縦、横に配置して1辺の長さ1mの正方形のブロック枠に組み立て、ブロック内部に埋め込まれた鉄筋(径6mm)を結束してブロック相互を連結し、その連結部分(縦、横各10cm、深さ20cm)にコンクリート又はモルタルを充てんするとともにそれぞれの法枠内には既製の中張りコンクリート板をはめ込み、法枠と中張りコンクリート板とのすき間(幅3cm、深さ15cm)にはモルタルを充てんし、法枠全体を一体化させ流水の法枠背面への浸透や、背面土砂の吸い出しを防止して堤防の安定を図ることとしていた。 しかるに、鉄筋は全く結束されないばかりでなく、ブロックの連結部分及び法枠と中張りコンクリート板とのすき間は、いずれもコンクリートやモルタルの代わりに砂や枠石等を詰めその上部を粗悪なモルタルで被覆していたり、コンクリートやモルタルで充てんしている箇所であっても設計の厚さの2分の1程度を施工しているに過ぎず法枠全体が一体となっておらず、法枠護岸工は設計に比べて不安定なものとなっている。 |
(参考図)
(148) | 鳥取県 | 西伯郡西伯町賀祥治水ダム建設関連一般国道180号付替え及び道路改良 | 鳥取県 | 146,766 | 110,074 | 5,874 | 4,405 | 工事の施工不良 |
この工事は、賀祥治水ダムの建設に伴う一般国道180号の付替え及び道路改良事業として、昭和56年度に西伯郡西伯町下中谷地内に延長795.8mの道路を新設するため、切土法面保護として山側斜面にモルタル吹付け6,652.6m2
(その1工区910.8m2
、その2工区554.1m2
、その3〜その9工区5,187.7m2
)等を施工したもので、うちモルタル吹付けは、設計書、図面及び仕様書によると、地山法面の浮石、土砂等を取り除いて清掃した後、前面にわたり径2mmの金網(網目5.0cm×5.0cm)を張り、この金網をアンカーボルトでモルタル吹付け厚さのほぼ中間に位置するように固定したうえ、吹付けの際にはモルタルのはね返り等吹付けモルタルの付着を害するものを十分取り除いて、モルタルを地山から厚さ10cmに吹き付け、吹付け後は急激な乾燥、湿度変化等による影響を受けないよう十分養生することとしていた。 しかるに、その1工区のうち694.1m2 及びその2工区のうち432.4m2 計1,126.5m2 のモルタル吹付けについては、地山法面の土砂等の取り除きや吹付けの際のモルタルのはね返り等の除去、盛夏期の施工による急激な乾燥に対する養生が十分でなかったなどしていて、施工が著しく粗雑となっており、吹付けモルタルの随所にき裂を生じていたり、金網の一部が直接地山に張り付いていたりしており、モルタル吹付け厚さも不均一で施工されている状況であった。 |
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(149) | 徳島県 | 美馬郡貞光町県道貞光剣山線災害防除 | 徳島県 | 25,404 | 12,702 | 18,257 | 9,128 | 工事の施工不良 |
この工事は、県道貞光剣山線の貞光町日浦地内での落石等による災害を防止するため、昭和57年度に道路の山側斜面にロックネット520m2
及び現場打法枠工として縦梁727m、横梁854m等を施工したもので、うち現場打法枠工は、設計書、図面及び仕様書によると、梁(断面20cm×20cm)を地山に縦1.5m、横1.0m間隔で格子状に設置するため、法面に合わせて鋼製型枠を設置し、型枠内に径13mmの鉄筋を被りが5cmとなるように所定の位置に配筋し、主アンカー及び補助アンカーを所定の箇所に打ち込んで固定したうえ、型枠内にモルタルを吹き付けて法枠を構築し、法枠内には植生土のうを詰めて法面を保護することとしていた。 しかるに、型枠内にたまったモルタルのはね返り等を十分取り除かないまま施工したり、所定の位置に鉄筋を組み立てなかったりしたなどのため、梁のモルタルの一部がはく落して鉄筋が露出していたり、セメント分の分離した砂の多いものとなっていて容易に破砕される状況となっていたり、厚さが一部不足していたりしているなど施工が著しく粗雑となっていて、法枠全体がぜい弱なものとなっている。 |
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(150) | 香川県 | 仲多度郡琴南町県道琴南国分寺線災害防除 | 香川県 | 18,232 | 9,116 | 8,602 | 4,301 | 工事の施工不良 |
この工事は、県道琴南国分寺線の琴南町川東上地内での落石等による災害を防止するため、昭和56年度に道路の山側斜面にモルタル吹付け2,653m2
(1工区1,271.5m2
、2工区457.9m2
、3工区924.4m2
)等を施工したもので、うちモルタル吹付けは、設計書、図面及び仕様書によると、地山法面の浮石、土砂等を取り除いて清掃した後、全面にわたり径2mmの金網(網目5.6cm×5.6cm)を張り、この金網をアンカーボルトでモルタル吹付け厚さのほぼ中間に位置するように固定したうえ、吹付けの際にはモルタルのはね返り等吹付けモルタルの付着を害するものを十分取り除いて、モルタルを地山から厚さ10cmに吹き付けることとしていた。 しかるに、モルタル吹付けのうち1工区1,271.5m2 については、地山法面の土砂等の取り除きや吹付けの際のモルタルのはね返り等の除去が十分でなかったなど、施工が著しく粗雑となっており、吹付けモルタルの随所にき裂を生じていたり、モルタルが地山に密着せず地山との間に空げきを生じていたり、金網の一部が直接地山に張り付いていたりしており、モルタル吹付け厚さも、調査した151箇所の平均は8.1cm程度で施工されている状況であった。 |
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(151) | 香川県 | 大川郡白鳥町県道引田清水線災害防除 |
香川県 | 11,719 | 5,859 | 4,408 | 2,204 | 工事の施工不良 |
この工事は、県道引田清水線の白鳥町長野地内での落石等による災害を防止するため、昭和56年度に道路の山側斜面にモルタル吹付け1,779m2
(1工区672m2
、2工区686.5m2
、3工区420.8m2
)を施工したもので、設計書、図面及び仕様書によると、地山法面の浮石、土砂等を取り除いて清掃した後、全面にわたり径2mmの金網(網目5.6cm×5.6cm)を張り、この金網をアンカーボルトでモルタル吹付け厚さのほぼ中間に位置するように固定したうえ、吹付けの際にはモルタルのはね返り等吹付けモルタルの付着を害するものを十分取り除いて、モルタルを地山から厚さ8cmに吹き付けることとしていた。 しかるに、このうち1工区672m2 については、地山法面の土砂等の取り除きや吹付けの際のモルタルのはね返り等の除去が十分でなかったなど、施工が著しく粗雑となっており、吹付けモルタルの随所にき裂を生じていたり、モルタルが地山に密着せず地山との間に空げきを生じていたり、金網の一部が直接地山に張り付いていたりしており、モルタル吹付け厚さも、調査した72箇所の平均は6.4cm程度で施工されている状況であった。 |
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(152) | 愛媛県 | 北宇和郡日吉村県道節安下鍵山線災害防除 |
愛媛県 |
16,680 | 8,340 | 4,332 | 2,166 | 工事の施工不良 |
この工事は、県道節安下鍵山線の日吉村地内での落石による災害を防止するため、昭和56年度にポケット式ロックネット2,789m2
を道路の山側斜面3箇所に施工したもので、設計書及び図面等によると、このうち1箇所766m2
は、ワイヤロープを取り付けるためのコンクリートアンカーブロック(以下「アンカーブロック」という。)を斜面上部に13個、法面左右に6個計19個を設置し、また、ロックネットをポケット状にするためのポケット支柱14本をコンクリート基礎で建て込み、これらアンカーブロック、ポケット支柱のそれぞれの頭部に径16mmのワイヤロープを取り付け、ポケット支柱から下方のワイヤロープに亜鉛メッキした金網を張り渡すこととしている。そして、アンカーブロックは、法面を床堀りして1箇所当たり縦、横、高さ各1m、打設量1m3
のコンクリートを土中に打設して設置し、また、ポケット支柱の基礎コンクリートは、法面を床堀りして1箇所当たり縦、横各0.6m、高さ1m、打設量0.36m3
(コンクリート打設部分の下部が一部岩質である箇所については、縦、横各0.6m、高さ0.5mから0.9m、打設量0.18m3
から0.32m3
)のコンクリートを土中に打設することとしている。 しかるに、アンカーブロック及びポケット支柱の基礎コンクリートの施工についてみると、アンカーブロック及びポケット支柱の基礎コンクリートのすべてについていずれも所定の床堀りをしないでコンクリートを打設したため、アンカーブロックは、上部20cm程度が地上に露出していたり、アンカーブロック及びポケット支柱の基礎コンクリートの埋設部分は、縦、横、高さとも不足し断面が著しく不整形となっていたりしていて、コンクリート打設量は、アンカーブロックは0.26m3 から0.88m3 程度(平均0.64m3 )、ポケット支柱の基礎コンクリートは全く施工していないものから0.21m3 程度(平均0.08m3 )にすぎないなどしていて、施工が著しく粗雑となっており、これらのアンカーブロック及びポケット支柱に支えられているポケット式ロックネット766m2 は極めて不安定な状態となっていた。 |
(参考図)
(153) | 福岡県 | 田川郡添田町町道上山口・木浦線56年災害復旧(第2工区) | 添田町 | 52,521 | 35,504 | 4,534 | 3,064 | 工事費の積算過大 |
この工事は、昭和56年6月の豪雨による地すべりで被害を受けた添田町落合地内の町道上山口・木浦線の延長60m区間を復旧するため、56、57両年度に地すべり抑止ぐい31本、排水ボーリング306m等を施工したもので、工事費の積算についてみると、地すべり抑止ぐい工費については、大口径ボーリングマシン(22kW級、以下「ボーリングマシン」という。)により道路の山側法面を鉛直に深さ15m削孔して、その中に外径267.4mm、長さ15mの鋼管ぐいを建て込み、この中空部分及びくいと地山との空げきにモルタルを注入し、くいと地山を一体化させることとし、福岡県が制定した「土木工事設計標準歩掛」(以下「標準歩掛」という。)により、ボーリングマシンによるくい1本当たりの施工時間を32.78時間として、材料費、労務費及び機械損料等を算出するとともに、削孔、くいの建て込み等にはトラッククレーン(油圧式10〜11t吊)を使用することとして、くい1本当たりの運転時間をボーリングマシン同様32.78時間とし労務費及び機械損料等を算出して、10本当たりの地すべり抑止ぐい工費をボーリングマシン分7,612,307円、トラッククレーン分2,454,894円計10,067,201円とし、31本分で31,208,323円と算定していた。 しかし、トラッククレーンはボーリングマシンによる削孔作業には全く使用せず、くいの建て込み等の場合だけ使用するものであるから、標準歩掛においてもトラッククレーンの運転時間は、ボーリングマシンによる施工時間の25%を計上すれば足りることとされているのに、これを看過したため本件積算は過大となっており、適正な歩掛かりによるとくい1本当たりのトラッククレーンの運転時間は8.2時間となり、10本当たり地すべり抑止ぐい工費は、ポーリングマシン分7,612,307円、トラッククレーン分614,098円計8,226,405円、31本分では25,501,855円となる。 いま、仮に上記により工事費を修正計算すると、積算不足となっていたモルタル注入管の経費等2,052,141円を考慮しても総額47,987,000円となり、本件工事費はこれに比べて約4,534,000円割高になっていると認められる。 |
(154) | 熊本県 | 天草郡姫戸町町道姫浦二間戸線道路改良(2工区) | 姫戸町 | 32,000 | 21,333 | 2,194 | 1,462 | 工事の設計不適切 |
この工事は、町道姫浦二間戸線の道路改良の一環として、昭和57年度に姫戸町二間戸地内に延長245mの道路を新設するため、切土、盛土、コンクリート擁壁及びパイプカルバート等を施工したもので、うちパイプカルバート延長36mは、道路予定地を横断している渓流が盛土により道路下に埋没するため、この排水施設として設置したもので、設計書、図面等によれば、内径1,000mmの遠心力鉄筋コンクリート管の普通管一種を土被り9.8mの位置に、管底部を管外周の2分の1で固定するいわゆる180度固定基礎の形式として設計し、これにより施工していた。 しかし、パイプカルバートの基礎形式を決定する際には、管種、管径、土被り厚等の設計条件を検討し、土圧等に十分耐えられる構造とすることになっており、熊本県が定め姫戸町が適用した「パイプカルバート基礎形式選定図」によれば、土被り厚が大きいことなどのために180度固定基礎では土圧等に耐えられないので360度固定基礎としなければならないにもかかわらず、前記基礎形式選定図を見誤って設計、施工したため、土圧等の荷重に対応するひび割れ強さについての安全率は目標値とした1.25を大幅に下回る0.24となっていてその強度が不足し、土被りは8.7m程度の暫定盛土(残る土被り1.1m程度については翌58年度に施工予定)であったにもかかわらず、上記パイプカルバート全延長のうち延長24.3m間の管の頂部には既にき裂が生じているなど著しく不安定なものとなっている。 |
(155) | 大分県 | 大野郡犬飼町県道中土師(なかはじ)犬飼線55年災害復旧 | 大分県 | 18,679 | 12,458 | 3,973 | 2,649 | 工事費の積算過大 |
この工事は、昭和55年8月の集中豪雨による地すべりで被害を受けた犬飼町山内地内の県道中土師犬飼線の延長179.5m区間を復旧するため、56年度に道路山側の地山に対し横方向のボーリングを実施し、内径50mmの排水管(配管用炭素鋼鋼管)を挿入する地下排水ボーリング工16本延べ640mを施工したもので、工事費の積算についてみると、排水ボーリング工費は大分県の定めた「急傾斜地崩壊対策・地すべり対策事業積算基準」の地山の土質がれき混り土砂の場合の標準歩掛かり表から、1日当たりの工事費を労務費65,120円、ボーリングマシンの損料等35,614円計100,734円とし、これを1日当たりの掘進量4.5mで除して排水ボーリング工費を1m当たり22,385円、640m分で14,326,400円と算定していた。 しかし、上記の積算において1日当たりの工事費とした100,734円は、同積算基準によると掘進量10m当たりの工事費であって、これを1日当たりの掘進量4.5mで除して1m当たりの工事費を算出しているのは誤りであり、正当な1m当たりの排水ボーリング工費は10,073円となる。 いま、仮に上記により工事費を修正計算すると、実際の地山の土質が一律にれき混り土砂でなく、玉石混り土等が含まれていたことなどによる工事費の増4,226,774円を考慮しても総額14,705,481円となり、本件工事費はこれに比べて約3,973,000円割高となっていると認められる。 |
計 | 1,181,350 | 641,691 | 134,617 | 64,070 | ||||
うち国庫補助対象額 | ||||||||
1,140,331 |