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  • 昭和58年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第6 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

国内産米麦の買入代金の決済及び自主流通米に係る概算買入代金の返納の事務処理を実態に適合するよう改善させたもの


国内産米麦の買入代金の決済及び自主流通米に係る概算買入代金の返納の事務処理を実態に適合するよう改善させたもの

会計名及び科目 食糧管理特別会計 (国内米管理勘定) (項)国内米買入費
(国内麦管理勘定) (項)国内麦買入費
(調整勘定) (項)国債整理基金特別会計へ繰入
部局等の名称 食糧庁
概要 (1) 国内産米麦の買入代金の支払を農業協同組合に委託した場合に行われる農林中央金庫との間の買入代金の決済の事務処理
(2) 生産者が自主流通米を販売した場合に行われる概算買入代金の返納の事務処理
対象金額 (1)について
農林中央金庫との買入代金決済額

(昭和58年度)

米穀 779,861,196,631円
(概算買入代金を除く)
麦  130,989,776,918円
合計 910,850,973,549円
(2)について
自主流通米の販売に伴う概算買入代金の返納額

(昭和58年度)

161,340,330,304円

上記の部局では、国内産米麦等の買入れに伴い、支払のための資金が不足する場合は食糧証券(注1) を発行して資金を調達しており、この資金調達に係る支払利子は多額に上っているが、昭和58年度において、国内産米麦の買入代金の決済の事務処理が適切でなかったため約4億4300万円、また、自主流通米に係る概算買入代金の返納の事務処理が適切でなかったため約1億8300万円、合計約6億2600万円が不経済となっていた。

 すなわち、(1)国内産米麦の買入代金の決済については、国内産米麦の実際の買入日より平均3日程度前に行われており、(2)国内産米穀の生産者に対して支払われた概算買入代金のうち、自主流通米に係る分は、自主流通米として販売することが確実となった時点で、生産者からその都度返納させることとしているが、この返納の事務処理に長時日を要しており、それぞれその分だけ特別会計の金利負担が増加しているので、実態に適合した方法に是正させる要があると認められた。
 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

 食糧庁では、国内産米麦等の買入れ、売渡し等の業務を行っているが、その経理を行う食糧管理特別会計において、買入代金の支払資金が不足する場合は、食糧証券を発行して資金を調達しており、昭和58年度末におけるその発行残高は1兆1310億円、また、58年度中の支払利子は総額715億6039万余円となっている。
 しかして、59年中の検査において、国内産米麦の買入代金の決済及び自主流通米に係る概算買入代金の返納の事務処理について、特別会計の資金操作に影響を及ぼすと認められる適切でない事態が次のとおり見受けられた。

1 国内産米麦の買入代金の決済について

 食糧庁では、58年度中に米麦の生産者から国内産米穀3,404千余t及び国内産麦748千余tをそれぞれ総額1兆0226億3893万余円及び1379億2953万余円で買い入れている。この買入代金の支払に当たっては、その支払事務を農業協同組合(以下「農協」という。)又は銀行に委託し、その支払に必要な資金をあらかじめ農林中央金庫(以下「農中」という。)又は日本銀行に交付した上で、生産者に買入代金が支払われた場合に、農中又は日本銀行と決済を行うこととしている。

 しかして、上記のうち、農中との間に決済された買入代金は、米穀7798億6119万余円(概算買入代金を除く。)、麦1309億8977万余円合計9108億5097万余円で支払額の大部分を占めているが、これについて検査したところ、その決済の事務処理が適切でなかったため、次のとおり不経済となっている事態が見受けられた。
 すなわち、買入代金の支払及びその決済の手続は、「国内産主要食糧買入代金の支払手続」(昭和42年42食糧第965号食糧庁長官通達。以下「通達」という。)等に基づき、その支払については、農協は、食糧事務所長(以下「所長」という。)が米麦の買入日付で発行した主要食糧買入代金支払証票(以下「支払証票」という。)の日付で各生産者に買入代金を支払い、その決済事務については、〔1〕 農協は支払証票発行日付で都道府県農業協同組合連合会(以下「連合会」という。)と決済し、〔2〕 連合会は各農協から送付された支払証票に基づいて作成した集計書を所長に提出し、所長が点検の上証明する集計書の受付日の前日から7日(北海道は11日)そ及した日(以下「点検日」という。)付で農中と決済し、〔3〕 農中は点検日付で食糧庁から交付された資金と決済するという方法で行われている。このうち、前記〔2〕 においてそ及日数を7日(北海道は11日)としたことについて、食糧庁では、支払証票発行日の翌日から集計書が食糧事務所に提出されるまでの所要の事務処理日数を見込んで定めたものであるとしている。

 しかしながら、北海道食糧事務所ほか24食糧事務所(注2) 管内における支払証票発行日の翌日から集計書が所長に提出されるまでの所要日数の実態についてみると、通常の事務処理によれば、平日の場合遅いものでも3日から4日、早いものは2日程度、休日をはさむ場合でもそれに1日から2日を加えた日数で足りる状況であった。また、全国的にみても、54年度から58年度までの5箇年間における平均所要日数は、米穀3.12日(北海道は3.56日)、麦3.06日(北海道は4.17日)となっていた。このように実際の事務処理に要した日数は前記の7日(北海道は11日)を著しく下回るものとなっているため、食糧庁が交付した買入代金決済のための資金は、決済ルートの中間で平均3日程度(北海道は6日程度)滞留することとなり、ひいては、食糧証券による資金の借入れもその滞留日数分だけ早目に行わなければならないこととなり、これに伴う特別会計の金利負担の増加を招来していると認められた。

 いま、仮に実態に即して、そ及日数を4日(北海道は5日)と定め、これにより、買入代金の決済を行うこととすれば、3日(北海道は6日)分の金利約4億4300万円(米穀約3億6480万円、麦約7840万円)が節減できたと認められた。

2 自主流通米に係る概算買入代金の返納について

 食糧庁では、生産者から売渡申込みを受けた58年産米穀7,612千余tについてその売買契約を58年7月6日から8月5日までに締結し、このうち買入代金の概算払の申請があった7,478千余tについて、生産者から代金受領委託を受けた集荷業者を通じて総額3739億4020万余円の概算買入代金を支払っている。
 しかして、この概算買入代金のうち、自主流通米に係る分については、自主流通米として販売することが確実となった時点で、生席者からその都度返納させることとしており、その返納額は58年度において1613億4033万余円に上っているが、これについて検査したところ、返納の事務処理が適切でなかったため、次のとおり不経済となっている事態が見受けられた。

 すなわち、返納の事務処理は、前記の通達及び「米穀の事前売渡申込制による概算金の返納の取扱いについて」(昭和52年52食糧第234号食糧庁長官通達)に基づき、〔1〕 集荷業者は、生産者から自主流通米としての販売を委託された日から7日以内において可及的速やかに概算金返納書(以下「返納書」という。)を作成して食糧事務所支所(以下「支所」という。)に提出し、〔2〕 支所では直ちに返納書の内容を審査して、集荷業者あてにその納付期限を発行日から10日以内の日とする返納金納入告知書を発行、交付するという方法で行われている。

 しかしながら、北海道食糧事務所ほか17食糧事務所(注3) 管内におけるこの実態についてみると、集荷業者は、生産者から自主流通米の販売を委託された当日に、自主流通米の代金から概算買入代金を差し引いている例がほとんどで、この日以降返納金相当額が集荷業者に保有されている状況であった。これに対し、概算買入代金の返納手続を定めた規定が実態に即していないため、生産者が自主流通米の販売を集荷業者に委託した日から返納金が国庫に納付されるまで平均13日を要していた。

 概算買入代金の返納については、生産者が自主流通米として販売することが確実となった時点で、生産者からその都度返納させることとなっており、しかも、前記のように集荷業者は返納金相当額を保有していて容易に返納できる状況であるのに、国庫に納付するまでに委託日から平均13日も要しているのは不合理であり、この結果、返納金の収納が遅れた期間について、その分だけ食糧証券による借入れの金利負担の増加を招来していると認められた。

 したがって、返納書の提出期限及び返納金納入告知書の発行日については、7日以内としているのを政府米を買い入れる場合の支払証票発行事務と同様に、自主流通米としての販売を集荷業者に委託した日の翌々日を目途とし、また、納付期限については10日以内としているのを返納金納入告知書を受領した日の翌日程度を目途とすることとすれば、委託日から5日後程度で概算買入代金を返納させることが可能であり、これによれば、8日分の食糧証券による借入れの金利約1億8300万円が節減できたと認められた。

 上記のような事態を生じたのは、1項については、買入代金の支払及び決済事務における期日の設定が金融機関における事務処理の合理化、通信及び郵便事情の改善等により迅速化されている実態に即していなかったこと、2項については、生産者が集荷業者に自主流通米の販売を委託した時点で概算買入代金を返納している実態となっているのに、実態に即した事務処理が行われていなかったことによると認められる。

 上記についての本院の指摘に基づき、食糧庁では、昭和59年11月に、1項については、当面はそ及日数を2日(北海道は4日)短縮する通達を発し、これに基づいて事務処理を行うよう処置を講じるとともに、さらに、可及的速やかに、そ及日数を1日(北海道は2日)短縮することとしている。また、2項については、返納書の提出期限及び納付期限を合計6日以上短縮する通達を発するとともに、事務処理の合理化を指示し、これに基づいて事務処理日数を極力短縮する処置を講じた。

(注1)  食糧証券 償還期間60日程度の政府短期証券で、58年度の利率は次のとおりとなっている。
58年10月30日以前発行分は表面利率年5.375%、実質利率5.463%
58年10月31日以降発行分は表面利率年4.875%、実質利率4.955%

(注2)  北海道食糧事務所ほか24食糧事務所 北海道、宮城、秋田、山形、福島、茨城、千葉、東京、神奈川、新潟、富山、石川、長野、愛知、大阪、兵庫、島根、広島、徳島、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島各食糧事務所

(注3) 北海道食糧事務所ほか17食糧事務所 北海道、宮城、秋田、山形、福島、千葉、新潟、富山、石川、長野、兵庫、島根、徳島、高知、佐賀、長崎、熊本、鹿児島各食糧事務所