会計名及び科目 | 一般会計(組織)建設本省 (項)住宅建設等事業費 |
部局等の名称 | 埼玉県 |
補助の根拠 | 公営住宅法(昭和26年法律第193号) |
事業主体 | 埼玉県 |
補助事業 | (1) 埼玉県公営住宅の建設事業(昭和55年度から58年度) |
補助対象事業費の合計 | (1) 4,453,498,000円 (2) 213,268,000円 |
上記に対する国庫補助金(交付決定額の合計) | (1) 2,498,727,000円(昭和55年度から58年度) (うち交付済額 2,010,585,000円) (2) 123,630,000円(昭和29年度から44年度) |
上記(1)の公営住宅建設事業において、埼玉県が新規の用地を確保して公営住宅を建設することとして国庫補助金の交付を受けたものであるが、実際は、上記(2)の公営住宅建設事業により国庫補助金の交付を受けて建設した既設の公営住宅を、建設大臣の承認を得ることなく無断で用途を廃止して除却した跡地に建設しており、その建設に係る事業費4,453,498千円に対する国庫補助金2,498,727千円(うち交付済額2,010,585千円)及び無断で除却した公営住宅の建設に係る事業費213,268千円に対する国庫補助金123,630千円が不当と認められる。
(説明)
埼玉県では、公営住宅法に基づいて同県内で、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸することを目的として公営住宅(以下「県営住宅」という。)を多数建設しており、昭和58年度末までに建設し管理している県営住宅は、同県が建設省に対して報告している公営住宅管理戸数調によると、県営川越月吉町団地ほか133団地で16,226戸となっている。
このうち、前記(1)の公営住宅建設事業は、埼玉県住宅建設五箇年計画事業の一環として、55年度から58年度までの間に、国庫補助金の交付決定を受けて県営川越月吉町団地ほか7団地(注) で耐火構造中層住宅(3階から5階建の集合住宅)509戸及び集会所1箇所を新たに建設することとし、うち413戸及び集会所は建設を完了し、96戸は59年3月末現在建設中のもので公営住宅法第9条第1項の規定により同県が建設省に提出した国庫補助金交付申請書等によると、これらの住宅はいずれも新規の用地(合計43,756m2 )に建設することとしているものである。
しかして、本院においてこの事業の実施状況について検査したところ、これら県営住宅509戸等は、新規の用地に建設されたものではなく、前記(2)の公営住宅建設事業により、29年度から44年度までの間に国庫補助金の交付を受けて建設した県営住宅321戸(木造平家建住宅(耐用年限20年)13戸、簡易耐火構造平家建住宅(耐用年限35年)等308戸)を56年2月から59年4月までの間に、建設大臣の承認を得ることなく無断で用途廃止をして除却した跡地(40,044m2 )及び同県の要請により春日部市が建設大臣の承認を得ることなく56年7月から59年4月までの間に無断で用途廃止をして除却した公営(市営)住宅32戸(春日部市が29年度から32年度までの間に国庫補助金により建設)のうちの21戸(木造平家建住宅13戸、特殊耐火構造二階建住宅(耐用年限50年)8戸)の跡地(3,712m2 )に新たに建設している状況であった。
しかしながら、公営住宅法によれば、居住環境を整理することなどを理由として、既設の公営住宅を除却し、その跡地に新たに公営住宅を建設する場合は、除却すべき公営住宅の大部分が耐用年限の2分の1を経過していること又はその大部分につき公営住宅としての機能が災害その他の理由により相当程度低下していることなどの要件に該当し、かつ、あらかじめ同法の規定に基づき公営住宅建替事業に関する計画を作成して、建設大臣の承認を得なければならないことになっており、また、公営住宅の用途を廃止するには、上記建替事業の承認を得た場合を除き災害その他の特別の事由により引き続き管理するのが不適当な場合に、建設大臣の承認を得なければならないことになっているものである。
したがって、同県が、国庫補助金の交付を受けて建設した公営住宅を前記の承認を得ることなく無断で用途廃止のうえ除却し、しかも、この跡地を新規の用地を確保したとして国庫補助金の交付を受け、独自の建替計画にしたがって公営住宅建設事業を実施しているのは、公営住宅法等関係法令に違背するものであり、国庫補助事業の実施及び経理が不当であると認められる。
また、無断で除却した県営住宅等342戸については、耐用年限の2分の1を経過していないものが195戸、耐用年限の2分の1を経過しているが耐用年限に達していないものが121戸、耐用年限を経過しているものが26戸となっており、これら住宅の耐用年限が2分の1を経過していないものはもちろん、その他のものについても同時期に建設した県営住宅等の状況からみて、住宅としての機能がまだ発揮できたと認められるのに、無断で除却したのは適切とは認められない。
なお、前記公営住宅管理戸数16,226戸のなかには、既に除却済みの297戸(このほか24戸は59年4月に除却)を含めて報告しており、また、県営川越月吉町団地ほか2団地の77戸については、除却を予定して空家のままとなっている状況である。
(注) 県営川越月吉町団地ほか7団地 川越月吉町、熊谷玉井、川口東本郷、加須北小浜、春日部八木崎、羽生北袋、深谷緑ヶ丘、庄和尾ヶ崎各県営団地