|
上記の補助事業において、国庫補助金の交付対象となる新規所要資金の算定に当たり、貸付目的を達成していないため返納された期限前償還金を貸付計画額から控除しなかったため、ひいては国庫補助金相当額約8500万円が過大に交付されていた。
このように、国庫補助金が過大に交付される結果となっていたのは、新規所要資金の算定方法等を示している補助金交付要領において、貸付資金として再度運用すべき期限前償還金の取扱手続き等が明確でなかったことなどによるもので、同交付要領を適切なものに改めるなどの要があると認められた。
上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。
(説明)
建設省では、昭和49年度から住宅新築資金等貸付制度要綱(昭和49年建設省住整発第69号)に基づき、歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地域の環境の整備改善を図ることを目的として、当該地域に係る住宅の新築(購入を含む。以下同じ。)及び改修並びに宅地の取得のために必要な資金を貸し付ける事業(貸付限度額620万円、利率は年2%以内、償還期限は25年以内)を行う地方公共団体に対して、その財源として、毎年度の住宅新築資金等の貸付計画額から繰越額等を控除した新規所要資金の4分の1の額を補助金として交付している。そして、この事業を行う地方公共団体においては、この補助金のほか地方債などを財源として本件事業を実施している。
しかして、兵庫県ほか5県の30市町村では、53年度から57年度までの間に、各年度の貸付計画額から繰越額等合計8608万余円を控除した新規所要資金合計310億3090万円に対する国庫補助金合計75億5340万余円の交付を受け、住宅新築資金等合計7,796件、311億1698万余円の貸付けを実施しているが、償還期限前に借受人から貸付金の全部又は一部が返納された期限前償還金の取扱いについて検査したところ、次のとおり、住宅新築資金等貸付事業に対する国庫補助金の経理が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の30市町村では、期限前償還金のうち、住宅の新築、改修又は宅地の取得がなされていないなど借受人が貸付目的を達成していないため返納された期限前償還金合計110件(53年度から57年度)3億5893万余円(国庫補助金相当額8506万余円)を本件事業に係る地方債の定時償還に充てたり、保有していたり、地方債の償還金等に充当するために歳入歳出外の基金として保有していたりなどしていた。
しかしながら、貸付けの目的が達成されていないため返納された期限前償還金は国庫補助の目的が未達成なものであるから、当該年度の貸付計画額から繰越額とともに控除し、再度貸付資金として運用するよう取り扱うべきであるのに、上記30市町村においてはこれを控除しないまま新規所要資金を算定し、国庫補助金の交付を受けており、ひいては上記期限前償還金に対する国庫補助金相当額約8500万円が過大に交付されていたと認められる。
このような事態を生じたのは、本件国庫補助事業の趣旨についての理解が前記の各市町村において不足していることにもよるが、住宅新築資金等補助金交付要領(昭和49年住整発第70号の3)において再度貸付資金として運用すべき期限前償還金の取扱手続きを明確にしていなかったことなどによると認められる。
上記についての本院の指摘に基づき、建設省では、昭和59年11月、住宅新築資金等補助金交付要領を改正して再度貸付資金として運用すべき期限前償還金の取扱手続き等を明確にするとともに、「住宅新築資金等貸付事業における期限前償還に係る貸付金の適正な取扱いについて」の通達を地方公共団体に対して発し、同交付要領改正の趣旨等を徹底させるなどの処置を講じた。