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  • 昭和58年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
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  • 工事

鉄骨橋台等の新設工事の施行に当たり、鉄骨継手部の吊り足場費及び添接板取付費等の積算が適切でなかったため、契約額が割高になったもの


(127) 鉄骨橋台等の新設工事の施行に当たり、鉄骨継手部の吊り足場費及び添接板取付費等の積算が適切でなかったため、契約額が割高になったもの

科目 (工事勘定)(項)基幹施設整備費(項)新幹線建設費
部局等の名称 東京第三工事局
工事名 東北幹・通与野Bi橋台鉄骨建方他
工事の概要 東北新幹線及び通勤別線建設工事の一環として、鉄骨橋台4基及び鉄骨橋脚1基等を新設するため、鉄骨4,885.3tを架設するなどの工事
工事費 261,000,000円
請負人 株式会社 間組
契約 昭和58年10月 指名競争契約
支払 昭和59年2月、3月 2回
(58年度支払額 161,810,000円)

 この工事は、鉄骨橋台等の建方工事の施行に当たり、鉄骨継手部の吊り足場費及び添接板取付費等の積算が適切でなかったため、契約額が約2060万円割高になったと認められる。

(説明)

 この工事は、東北新幹線及び通勤別線建設工事の一環として、東京起点29.33km付近から29.53km付近までの約200m間に鉄骨橋台4基及び鉄骨橋脚1基等を新設するため、柱及び梁等の鉄骨4,885.3tを架設するものである。
 しかして、この工事の予定価格の内訳についてみると、次のとおり適切を欠くと認められる事態が見受けられた。

1 吊り足場費の積算について

 前記鉄骨の架設に当たっては、その継手部でボルト締め等の作業を行うため、継手部479箇所に吊り足場を設置することとし、吊り足場は継手部の鉄骨部材の大きさや形により下図のように、大梁と小梁等の継手部(232箇所)、大梁と大梁の継手部(150箇所)、柱と柱の継手部(97箇所)の3種類に分類してそれぞれ単管、緊結金具、足場板等を使用して製作し、各継手箇所に取り付けることとしている。

A 大梁と小梁等の継手部 B 大梁と小梁等の継手部 C 柱と柱の継手部

A大梁と小梁等の継手部B大梁と小梁等の継手部C柱と柱の継手部

 

 これらの吊り足場の材料費、労務費の積算に当たっては、上記3種類の吊り足場について、それぞれ1組当たりの所要材料を、単管は57.0mから69.4m、緊結金具は32個から144個、足場板は8.25m2 から12.8m2 と算定するなどし、また、これに基づいて吊り足場の製作・解体歩掛かりを1組当たりとび工1.44人から3.47人と算定している。そして、前記継手部479箇所のうち433箇所については、営業線の線路中心から13m以内にあることから作業能率の低下による補正を25%見込むなどして吊り足場費を総額30,400,000円と積算していた。

 しかしながら、前記3種類の吊り足場のうち、大梁と小梁等の継手部232箇所の吊り足場についてみると、〔1〕 所要材料は、継手部1箇所分(上図Aの甲又は乙)の数量に継手部箇所数232を乗じて算出すべきところ、誤って、継手部2箇所分(上図Aの甲及び乙)の数量に継手部箇所数232を乗じて算出したため、所要材料の数量が2倍になっていたり、〔2〕 単管、緊結金具及び足場板の数量が設計と異なっていたり、〔3〕 大梁と小梁等の継手部として分類していたものの中には、上図Aの大梁と小梁又は筋かいの継手部144箇所のほかに下図Dの筋かいと筋かいの継手部52箇所、同じくEの大梁又は小梁と小梁つなぎ材の継手部36箇所が含まれており、これらは大梁と小梁又は筋かいの継手部に比べて小さく、形も異なることは設計図書で明らかであり、吊り足場もこれらに応じたものを製作することとすべきであるのに、Aの大梁と小梁又は筋かいの継手部と同一の吊り足場を製作することとしたりしたため、所要材料が著しく過大に算定されている。

D 筋かいとかいの継手部 E 大梁又は小梁と小梁つなぎ材の継手部

D筋かいとかいの継手部E大梁又は小梁と小梁つなぎ材の継手部

 したがって、前記大梁と小梁等の継手部232箇所を、大梁と小梁又は筋かいの継手部、筋かいと筋かいの継手部、大梁又は小梁と小梁つなぎ材の継手部の3種類に分類し、鉄骨継手部の大きさや形に対応した吊り足場を製作することとして適正な所要材料を算定すべきであったと認められる。
 一方、大梁と大梁の継手部や柱と柱の継手部の吊り足場については材料の一部が算定されていないなど、積算が適切を欠くと認められる。

 上記のことから、上図5種類の吊り足場について、それぞれ1組当たりの適正な所要材料を算定すると、単管は35.9mから104.6m、緊結金具は30個から88個、足場板は1.6m2 から12.5m2 となり、また、これに基づいて、その製作・解体歩掛かりを算定すれば、吊り足場1組当たりとび工0.692人から2.27人となるので、これにより吊り足場費を積算すべきであったと認められる。
 また、線路近接作業のため能率が低下する対象範囲については、本件吊り足場の製作・解体作業のようにすべて人力で施工する場合は、本社制定の積算標準によれば線路中心から5mとなっているものであるから、能率低下対象箇所はこの範囲の117箇所について見込めば足りると認められる。
 いま、仮に上記により吊り足場費を修正計算すると積算過小となっている材料吊り上げ吊り下げ用のクレーンの運転経費等1,727,441円を考慮しても総額19,759,163円となり、積算額30,400,000円はこれに比べて10,640,837円が過大になっていると認められる。

2 鉄骨の継手部における添接板の取付費等の積算について

 鉄骨の継手部に取り付ける添接板の総計は9,326枚で、そのすべてを現地で取り付けることとし、運搬車からの取卸整理費及び各部材への取付費の積算に当たっては、取卸整理作業は鉄骨架設用の150t クレーン又は70tクレーンにより行うこととし、また、取付作業は上記のうち2,340枚については150tクレーンにより、残り6,986枚については人力により行うこととして、これらの作業に要する経費を計43,856,310円と積算していた。
 しかして、現地で添接板を各部材に取り付けることとしたのは、添接板を鉄骨製作工場で取り付けたうえ現地へ搬入することとすると、〔1〕 柱の部材のうちにはその荷姿の高さや幅が車両制限を超えるものがあること、〔2〕 鉄骨を架設する際、支障となるものがあること、〔3〕 運搬中や取卸作業中に添接板が損傷するおそれがあることのためであるとしている。また、添接板の取卸整理及び取付作業に上記のように鉄骨架設用の大型クレーンを使用することとしたのは、現地の作業用地が狭あいなため、大型クレーンの他に、更に取付作業等に専用の小型クレーンを設置する余地がないためであるとしている。

 しかしながら、前記添接板9,326枚から、誤って過大に算定した64枚を除いた9,262枚(673t)のうち工場で添接板を取り付けることにより車両制限を超えるものや架設の際に支障となるものは計5,959枚(372t)であり、これを除いた3,303枚(301t)については、工場において5t程度のクレーン又は人力により各部材の継手部に取り付けたうえ、現地に搬入することとしても何ら支障はないものであり、このように添接板を各部材に取り付けたまま現地へ搬入する方法が通常行われていることからみても、運搬中や取卸作業中に損傷するおそれはないものと認められる。現に本件工事においても、車両制限を超えないもので架設の際に支障とならない添接板については、工場において各部材の継手部に取り付けて現地に搬入している実情である。
 したがって、上記のとおり施工することとすれば、現地での添接板の取付作業等に使用する大型クレーンの運転日数も少なくてすむことなどから工事費が経済的になるのに、すべての添接板を現地で取り付けることとして積算しているのは適切とは認められない。

 いま、仮に上記により添接板の取付費等を修正計算すると総額24,861,040円となり、積算額43,856,310円はこれに比べて18,995,270円が過大になっていると認められる。
 上記1項及び2項により本件工事費を修正計算すると、総額227,612,043円となるが、当局の積算において過小となっていた安全手すり費等12,739,550円を考慮しても総額240,351,593円となり、本件契約額261,000,000円はこれに比べて約2060万円割高になっていると認められる。