科目 | (損益勘定) | (項)営業費 (項)保守費 (項)管理共通費 |
部局等の名称 | 本社ほか72鉄道管理局等(注1) | |
契約名 | 駅業務委託契約及び駅舎清掃作業請負契約等2,021件 | |
契約の相手方 | 株式会社日本交通観光社ほか371会社 | |
契約 | 昭和58年4月〜59年3月 随意契約 | |
上記契約に係る支払額合計 | 138,894,140,340円 |
上記の各契約において、労災保険料の積算(積算額12億4986万余円)が適切でなかったため、積算額が約2億5940万円過大となっていた。
このように積算額が過大となっていたのは、本社制定の積算標準において労災保険料について事業主に実際に適用されている労災保険率により積算するよう明確に規定していなかったことによるもので、積算標準を適切なものに改める要があると認められた。
上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。
(説明)
日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)では、本社ほか72鉄道管理局等(以下「鉄道管理局等」という。)において、駅業務、荷物取扱業務等の一部を委託したり、車両清掃等の役務作業を請け負わせたりしており、鉄道管理局等では、これら契約に係る経費の予定価格の積算を本社制定の積算標準に基づき行っている。
しかして、昭和58年度中に随意契約により実施している駅業務委託等2,021件(支払額1388億9414万余円)について検査したところ、法定福利費のうち労災保険料は前記積算標準によれば、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)に定められている事業主の負担する労災保険料とし、人件費に労災保険率を乗じた額としているが、次のとおりその労災保険料の積算(積算額12億4986万余円)が適切でないと認められる事態が見受けられた。
1 鉄道管理局等では、駅業務委託等707件の労災保険料の積算に当たって、労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則(昭和47年労働省令第8号)別表第1労災保険率表(以下「労災保険率表」という。)に定められている事業の種類ごとの労災保険率1000分の5から1000分の20をそのまま採用して総額8億2212万余円と算出していた。
しかしながら、この労災保険率については、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和44年法律第84号)の規定によると、業務災害に係る率及び通勤災害に係る率(1000分の1)で構成されているが、業務災害に係る率は、事業の種類が同一であっても、作業工程、作業環境等により災害率に高低が認められるので、個々の事業ごとに収支率(注2) に応じて40%の範囲内で引き上げ又は引き下げた率を次の年度において適用するようになっている(以下「メリット制」という。)。そして、この労災保険率は、原則として前年度末に所轄労働基準局から各事業主に労災保険率決定通知書(以下「通知書」という。)により通知され、各事業主は別途送付される労働保険概算・確定保険料申告書(以下「申告書」という。)により労災保険料を申告、納付することになっていることから、本件各契約について事業主に実際に適用されている労災保険率を通知書又は申告書により調査したところ、その労災保険率は、各事業主にメリット制が適用されているため、1000分の3.4から1000分の19.05となっていて、鉄道管理局等が積算に当たって採用した労災保険率(通勤災害に係る率を除く。)を最高40%から最低5%下回っていた。
2 鉄道管理局等では、駅舎清掃作業等323件の労災保険料の積算に当たって、当該業務が労災保険率表に掲げる事業のどの種類に該当するか十分調査しないで適宜の事業を選びその労災保険率をそのまま採用したり、積算標準で示された誤った所定の率を適用したりして労災保険率を1000分の5から1000分の20として労災保険料を総額1億3095万余円と算出していた。
しかしながら、事業主に実際に適用されている労災保険率について通知書又は申告書により調査したところ、その労災保険率は、鉄道管理局等が積算に当たって採用している事業と異なる種類の事業の労災保険率にメリット制を適用するなどして1000分の3.4から1000分の18.6となっていて、鉄道管理局等が積算に当たって採用した労災保険率を最高1000分の16から最低1000分の1下回っていた。
したがって、鉄道管理局等では、労災保険料の積算に当たっては、本件各契約は毎年度継続して同一事業主により行われていることから、事業主に実際に適用されている労災保険率を調査することが可能と認められ、これを適用すべきであったと認められる。
いま、仮に前記1,030件について事業主に実際に適用されている労災保険率を基に積算したとすれば、過少積算額約4620万円を考慮しても労災保険料総額12億4986万余円は1項で約2億3460万円、2項で約2470万円計約2億5940万円低減できると認められる。
このような事態を生じたのは、労災保険率についてはメリット制が適用された結果、一般に事業主は労災保険率表の率より低い率による労災保険料を負担しているのが実情で、国鉄が業務を委託し又は役務を請け負わせている会社も同様の状況であり、また、所轄労働基準局から適用業種及び労災保険率を定め事業主に通知されているのに、国鉄において積算標準でこれらの点を考慮して労災保険料を積算するよう規定していなかったことによるものと認められる。
上記についての本院の指摘に基づき、日本国有鉄道では、昭和59年10月に「予定価格の積算に用いる労災保険の保険料率について」の通達を発するとともに、積算標準の一部を改正し、労災保険料の積算に当たっては事業主に実際に適用されている労災保険率によることとし、同月以降契約を締結するものから適用することとする処置を講じた。
(注1) 本社ほか72鉄道管理局等 本社、新幹線総局、広島、九州各管理部、四国総局、釧路、旭川、札幌、青函船舶、盛岡、秋田、仙台、新潟、高崎、水戸、千葉、東京北、東京南、東京西、長野、静岡、名古屋、金沢、大阪、天王寺、福知山、米子、岡山、広島、門司、大分、熊本、鹿児島各鉄道管理局、関東、中部、近畿、中国各地方自動車局、北海道、東北、四国、九州各地方自動車部、北海道、東北、新潟、関東、中部、関西、四国、広島、九州各地方資材部、浜松、大宮、大井、大船、苗穂、多度津、小倉、盛岡、土崎、仙台、郡山、長野、名古屋、松任、吹田、鷹取、高砂、後藤、広島、幡生各工場、博多総合車両部、東京給電管理局、宇高船舶管理部
(注2) 収支率 過去3年間の保険料額(通勤災害に係る保険料額を除く。)に対する業務災害に係る保険給付額等の割合をいう。