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  • 昭和58年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第3 日本電信電話公社|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

電話運用業務についてその運営の効率化を図るよう意見を表示したもの


(1) 電話運用業務についてその運営の効率化を図るよう意見を表示したもの

科目 (損益勘定) (項)給与其他諸費
(項)営業費
部局等の名称 日本電信電話公社
対象業務の概要 電話運用業務のうち市外電話の通話の手動接続及び電話の番号案内の業務
対象業務に係る人件費 1498億2675万余円(昭和58年度)

 日本電信電話公社における上記業務については、通話接続の自動ダイヤル化、地域集団電話の一般加入電話への切替えなどにより手動接続業務が減少したため地方に所在する取扱局において要員に余剰が生じている反面、番号案内業務の増加により都市に所在する取扱局において要員に不足を生じていて、業務量と要員との間に不均衡が生じ非効率な業務運営となっており、特に、業務量の少ない小規模な取扱局において終日運用の体制を執っており業務効率は極めて低いものとなっている。
 したがって、要員の他部門等への配置転換を行ったり、小規模な取扱局の業務を集約したりなどして要員配置の適正化に努め、もって経費の節減を図る要があると認められる。
 上記に関し、昭和59年11月29日、日本電信電話公社総裁に対して意見を表示したが、その全文は以下のとおりである。

電話運用業務の運営について

 貴公社では、電話運用部門において、電話サービスの一環として、手動交換による市外電話の通話の接続業務(以下「手動接続業務」という。)及び電話通話の附帯業務として電話番号の案内業務(以下「番号案内業務」という。)を昭和58年度末現在、全国の電報電話局等(以下「取扱局」という。)520局で実施しており、電話運用部門に係る58年度の支出額は2550億6300万余円で、このうち、手動接続業務及び番号案内業務に従事する職員等の人件費は1498億2675万余円(職員給与等1407億9237万余円、賃金90億3437万余円)となっている。

 そして、貴公社では、電話サービス向上のため、手動接続業務を行っていた取扱局に自動電話交換機を設置して通話接続の自動化を推進し、46年12月には公社直営の取扱局の自動ダイヤル化を完了し、54年3月には郵政委託局を含む全取扱局の自動ダイヤル化を完了したこと、次いで59年3月に地域集団電話の一般加入電話への切替えがほぼ完了したことなどに伴い、従来の手動交換による通話の接続はほとんど自動交換接続に移行し、市外通話の手動接続呼数は45年度に1日当たり3,884千呼あったものが58年度では8.1%の315千呼に減少し、これに比べ電話番号案内呼数は、45年度の1日当たり2,685千呼が58年度では139.3%の3,741千呼と増加しており、その結果、手動接続及び番号案内の総取扱呼数は、45年度に1日当たり6,569千呼あったものが、58年度には61.7%の4,056千呼と大幅に減少している。

 このように手動接続呼数の減少や、番号案内呼数の増加により生じた取扱局の業務量の変化に伴い、貴公社では54年度以降、手動接続業務及び番号案内業務に従事していた職員に利用案内サービスや、電話等販売の促進に関する情報の収集等各種調査業務を実施させるなど他部門への配置転換を行ったほか、取扱呼数が増加し要員が不足している都市部の57取扱局の番号案内呼量の一部を要員に余剰を生じている地方の155取扱局に転送し、業務の移替え(以下「分散」という。)を実施し、更に、取扱呼数が減少している小規模な取扱局の手動接続業務及び番号案内業務を他局に集約して無手動局(9局)としたり、夜間業務を他局に集約して昼間取扱局(34局)としたりしている。その結果、53年度末では終日取扱局は514局、昼間取扱局は15局計529局であったものが、58年度末では終日取扱局は471局、昼間取扱局は49局計520局となっている。

 しかして、手動接続業務及び番号案内業務の運営の実態について調査したところ、次のような事態が見受けられた。

1 要員に過不足が生じている取扱局について

 58年度末現在、全国520取扱局において手動接続業務及び番号案内業務に従事する職員等は、年度中の新規採用554人を含め43,989人となっている。
 そして、これら手動接続業務及び番号案内業務に必要な要員数については、各電気通信局が取扱局ごとの取扱呼数を基に定めているが、これによれば前記520局の58年度末現在の所要要員数は40,896人となっている したがって、職員等の現在員これに比べ、3,093人(58年度中の職員給与等及び賃金の各平均額により算出される額98億9085万余円相当)が余剰となっている。これを、取扱局別にみると、要員に余剰を生じている取扱局が393局(75.6%)、不足を生じている取扱局が100局(19.2%)となっている。

(1) 要員に余剰を生じている取扱局について

ア 要員に余剰を生じている取扱局393局のうち、業務の分散や集約の措置を講じていない取扱局が193局あり、58年度末現在の余剰の状況は次表のとおりで、11人以上余剰となっている取扱局が桐生電報電話局ほか82局に上っている。

余剰人員 1人〜10人 11人〜20人 21人以上
取扱局数 110局 61局 22局 193局

 また、所要要員に対する現在員の割合でみると、次表のとおりで、所要要員に対し1.5倍以上の現在員を配置している取扱局が石岡電報電話局ほか35局あり、このうち庄原電報電話局のように所要要員22人に対し、2.2倍の49人を配置しているところも見受けられた。

所要要員に対する現在員の割合 130%未満 130%〜150%未満 150%〜200%未満 200%以上
取扱局数 119局 38局 30局 6局 193局

イ 要員に余剰を生じている取扱局のうち、他の取扱局からの業務の分散や集約の措置を講じた取扱局は200局あるが、なおその余剰の状況は次表のとおりで、11人以上余剰となっている取扱局が呉電報電話局ほか53局に上っている。

余剰人員 1人〜10人 11人〜20人 21人以上
取扱局数 146局 40局 14局 200局

 また、所要要員に対する現在員の割合でみると、次表のとおりで、所要要員に対し、1.5倍以上の現在員を配置している取扱局が浜坂電報電話局ほか13局あり、このうち渋川電報電話局のように、所要要員48人に対し、24倍の113人を配置しているところも見受けられた。

所要要員に対する現在員の割合 130%未満 130%〜150%未満 150%〜200%未満 200%以上
取扱局数 157局 29局 11局 3局 200局

 このように、要員に余剰を生じている取扱局についてみると、業務の分散や集約を実施していない取扱局の中に余剰割合の高い取扱局が比較的多く、また、業務の分散や集約を実施している取扱局においても要員がなお余剰となっている取扱局が相当数見受けられる。そして、要員に余剰を生じている取扱局は特に地方に多く、これらの原因は主として、農山漁村地域に多数あった手動接続を必要とする地域集団電話が一般加入電話に切り替えられたため、要員に余剰を生じたが配置転換が進捗しなかったこと、その後業務量が更に減少しているのに、業務の分散が必ずしも十分でなかったことによると認められる。

(2) 要員に不足を生じている取扱局について

 要員に不足を生じている取扱局100局についてみると、増加している番号案内業務を要員に余剰を生じている取扱局に分散するなどの措置を講じた取扱局が56局あり、このうちなお11人以上の要員不足を生じている取扱局が浜松電報電話局ほか11局ある。また、業務の分散や集約の措置を講じていない取扱局が44局あり、このうち要員に11人以上不足を生じている取扱局が札幌市外電話局ほか4局ある。このように、分散などの措置を講じた取扱局においてもなお要員不足を生じている取扱局の割合が高いものとなっている。そして、これらの取扱局では58年度中に職員等を新規に採用したり、臨時雇(約24万人日 賃金10億1990万円)を雇用したりして不足を補充している。
 このように、要員に不足を生じている取扱局は、主として都市部の大規模な取扱局に見受けられたが、これは、都市部において番号案内業務が著しく増加しているのに、余剰を生じている周辺の取扱局からの要員の転入が進まなかったりしていることや、業務の分散が必ずしも十分でなかったことなどによるものと認められる。

 上記(1)、(2)のように、自動ダイヤル化の完了、地域集団電話の一般加入電話への切替えの進展に伴い、地方に所在する取扱局において手動接続による取扱呼数が大幅に減少したため、要員が余剰となっている反面、主として、都市部における番号案内呼数の増加により要員が不足し、業務量と要員配置に不均衡を生じたのに対し、要員の配置転換や業務の分散が必ずしも十分でなかったことから、依然として業務量と要員配置が不均衡なものとなっており、非効率な業務運営となっている。

2 小規模取扱局の業務の実態について

 終日取扱局471局のうち、100局を抽出して調査したところ、1局1日当たりの総取扱呼数が5,000呼を超える大規模な取扱局が42局、総取扱呼数が5,000呼未満の小規模な取扱局が58局あり、中には、総取扱呼数が2,500呼に満たないものが三戸電報電話局ほか33局、更にこのうち、設楽電報電話局ほか8局においては、1,000呼にも満たないものとなっている。

 そして、上記各取扱局の業務処理効率を現在員1人1日当たりの取扱呼数でみると、大規模な取扱局では平均100.84呼であるのに対し、小規模な取扱局では平均56.06呼であり、このうち、総取扱呼数が2,500呼に満たない前記34局では最低13.26呼、最高79.25呼、平均43.21呼にすぎないものとなっており、小規模な取扱局の業務処理効率は大規模な取扱局を大幅に下回っている。

 また、午後10時から翌朝8時までの宿直の時間帯(58年4月、本社業務管理局作成の「時間帯別トラヒック分布調査」によれば、この時間帯の手動接続及び番号案内の取扱呼数は1日の総取扱呼数のわずか6.9%にすぎない少ないものとなっている。)の業務処理状況をみると、終日取扱局471局のうち、吉野電報電話局ほか91局では、この時間帯における所要要員は交替要員を含め原則3人としていることもあって、所要要員の算出に用いられる最繁時の取扱呼数でも0.1人から1人の業務量しかないのに、4人(13局)、3人(65局)又は2人(14局)を配置しており、また、同様に佐和田電報電話局ほか85局では、1.1人から2人の業務量であるのに5人(4局)、4人(22局)、3人(59局)又は2人(1局)を配置している。このように宿直時間帯の取扱呼数が極めて少ない取扱局についてその集約を行った場合は、集約される取扱局では相当数の所要要員の減となるものであり、集約する取扱局では現在の要員配置のまま又は少数の増員で処理可能となるものであるのに、それぞれの取扱局で終日取扱いの体制を執っでいるため、業務効率が著しく低い運営となっている。

 また、手動接続業務は100番通話、コレクトコール、クレジット通話など取扱いの種類が多く、比較的手数がかかるのに対し、番号案内業務は地域事情に通ずる要はあるが手数時間は少ないなど両者の業務内容が相違していて、小規模な取扱局においては手動接続呼数が極めて少なくなっていることなどから、これを特定の取扱局に集約することが効率的であると認められるのに、すべての取扱局で手動接続業務と番号案内業務とを合わせて実施している。

 以上のように、取扱局の中には、現在員が11人以上に上る余剰を生じている取扱局が137局(前記1−(1)−ア及びイで述べている合計)あり、一方で11人以上も不足している取扱局が前記1−(2)で述べたように17局ある。そして、全国的に多数の余剰要員を抱えている反面で、58年度中に相当数の職員等の新規採用を行うなど依然として業務量と要員について著しい不均衡を生じているほか、特に業務効率が極めて低い小規模な終日取扱局が依然として相当数見受けられる状況である。

 ついては、手動接続業務及び番号案内業務において長年業務に従事してきた職員の適性、通勤事情を考慮する要があるなど他部門、他の取扱局への配置転換が困難な事情があるとしても、今後、速やかに、小規模な終日取扱局については、各取扱局の業務と要員等を十分検討のうえ、手動接続業務を他の取扱局に集約し、番号案内業務についても他の取扱局に集約して無手動局としたり、昼間取扱局としたりすることにより業務の効率化を図り、また、各取扱局の業務量と要員の不均衡については、他部門等への配置転換を図るほか、番号案内業務は特に多額の経費を要することなく分散することができる有利な点があるのであるから、分散の徹底を図るなどして要員配置の適正化に努め、もって経費の節減に努める要があると認められる。

 よって、会計検査院法第36条の規定により、上記の意見を表示する。