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  • 昭和58年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第3 日本電信電話公社|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

電話中継所における多重変換装置の設置について、設計要領を合理的なものに改定するよう是正改善の処置を要求したもの


(2) 電話中継所における多重変換装置の設置について、設計要領を合理的なものに改定するよう是正改善の処置を要求したもの

科目 (建設勘定)(項)電信電話施設費
部局等の名称 日本電信電話公社
設置機器の概要 各電話中継所間をディジタル伝送路で結ぶ際、市外電話回線等の信号を多重化して送信又は受信できる設備として中継所に設置する多重変換装置
設置機器の価格 多重変換装置295個 6億8880万余円

 日本電信電話公社では、電話中継所に設置する多重変換装置の数量を算定するに当たって、各電話中継所における市外電話回線等の伝送路への収容設計が適切でなかったため、購入費約3億0800万円が不経済となっていた。
 これは、多重変換装置の設置数量を算定する基礎となる伝送路収容設計業務実施要領の規定が適切でなく、設計に当たって、各電話中継所を通過する市外電話回線等の信号は4次群又は3次群で通過させることとしても支障がないのに、それぞれ3次群又は2次群に分離して通過させることとしているため、各電話中継所に多数の多重変換装置を設置していたことによると認められた。
 したがって、今後も引き続き市外電話回線等の伝送路への収容設計は多数行われることが見込まれるものであるから、各電話中継所を通過するものが多数ある場合は、4次群又は3次群で通過させることができるよう上記要領を改定して多重変換装置設置の合理化を図り、もって経費の節減に努める要がある。

 上記に関し、昭和59年11月29日、日本電信電話公社総裁に対して是正改善の処置を要求したが、その全文は以下のとおりである。

電話中継所における多重変換装置の設置について

 貴公社では、高度情報通信システムの実現を図るため、多量の市外電話回線等(以下「市外回線」という。)の信号を多重化して、各電話中継所(以下「中継所」という。)間の伝送を光ファイバケーブル及び同軸ケーブル等により行うディジタル伝送路網の建設を推進している。

 上記中継所には、全国を地方ブロック単位に区分して設置されている総括局の中継所とその管下の県庁所在地級の都市に設置されている中心局の中継所とがあり、これらの中継所は、長距離ディジタル伝送路(以下「伝送路」という。)で結ばれており、各中継所には、管内の電話局からの市外回線の信号を多重化して他の中継所へ送信したり、受信した信号から管内の電話局へ接続する信号を分離したり、受信した信号を他の中継所へ中継したりするための多重変換装置、中継装置等の通信設備を設置している。

 そして、中継所の送信側では、市外回線の信号をDM−12形多重変換装置により96回線単位の2次群に多重化し、次いで2次群5本をDM−23形多重変換装置(以下「23MUX」という。)により480回線単位の3次群1本に多重化し、更に3次群3本をDM−34形多重変換装置(以下「34MUX」という。)により1,440回線単位の4次群1本に多重化したうえ、4次群4本をDM−45形多重変換装置により5,760回線単位の5次群へと順次多重化し、この5次群を伝送路に送信している。また、中継所の受信側では、受信した5次群からその中継所管内の電話局へ接続する信号及びその中継所を通過する信号を上記の逆の順にそれぞれの多重変換装置により順次分離し、通過する信号は次の中継所へ中継するため送信側の多重変換装置により順次多重化し、伝送路に送信している。

 各電気通信局では、これらの中継所に多重変換装置等を設置する工事を多数施行しているが、市外回線はあらかじめ発信する中継所と着信する中継所(この発信する中継所と着信する中継所との間を以下「伝送区間」という。)が定められていて、同一の伝送区間の市外回線は2次群単位に収容することとしており、中継所の多重変換装置の設置数量を算定するに当たっては、本社が定めた伝送路収容設計業務実施要領(以下「設計要領」という。)により、2次群を収容する3次群は2次群の伝送区間の長短により区分して、3次群のまま通過させたり、2次群まで分離して電話局へ接続させたり、通過させたりするなどの設計を行い、これに基づき設置数量を算出することとしている。

 しかして、近畿ほか8電気通信局(注1) で昭和58、59両年度に多重変換装置等の設置工事を施行したもの、又は施行中のもののうち、豊岡ほか12中継所(注2) では、23MUX計155個(単価1,903,000円又は1,915,000円)、34MUX計140個(単価2,803,000円又は2,820,000円)を総額688,804,000円で設置しているが、これらについて検査したところ、次のように不経済になっていると認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記13中継所における2次群及び3次群の設計についてみると、

(1) 前記設計要領で、短い伝送区間(同一電気通信局管内又は隣接する電気通信局管内の中継所相互間を伝送区間としているもの)の2次群を収容する3次群は、各中継所で2次群まで分離することとしているため、通過する2次群だけを収容した3次群についても2次群まで分離しているものが多数あり、また、接続する2次群と通過する2次群とを混在して収容した3次群が多数見受けられた。そして、これらの3次群から分離した通過する2次群は送信側に接続して、再び順次多重化して送信している。

 しかし、管内の電話局へ接続する2次群を収容している3次群は2次群に分離する必要があるが、通過する2次群だけを収容した3次群はそのまま通過させる設計としても何ら支障はないから、短い伝送区間の2次群を3次群に収容する設計に当たっては、接続する2次群と通過する2次群とにそれぞれ区分して、通過する2次群は通過区間の長いものから順次5本ずつ3次群に収容して、そのまま3次群で中継所を通過させる設計とすれば、受信側で3次群を2次群に分離する23MUX及び送信側で2次群を3次群に多重化する23MUXは設置する要がなく経済的になると認められる。

(2) 前記設計要領で、長い伝送区間(隣接していない電気通信局管内の中継所相互間を伝送区間としているもの)の2次群を収容する3次群は、3次群のまま通過させることとしており、ただし、有効な区間については、通過する3次群を収容した4次群のまま各中継所を通過させることとしているのに、この有効な区間についての定義が設計要領で明確に規定されていないため、長い伝送区間の3次群のほとんどは4次群で通過させることなくそのまま通過させている。

 しかし、総括局と総括局の間に所在する中継所では通過する3次群が多数あるので、この区間の中継所においては、通過する3次群3本を収容した4次群のまま通過させる設計としても何ら支障はないから、このような場合には、総括局と総括局の間を有効な区間とすべきものと認められ、この区間の中継所においては、通過する3次群3本を収容して4次群で通過させる設計とすれば、各中継所の受信側で4次群を3次群に分離する34MUX及び送信側で3次群を4次群に多重化する34MUXは設置する要がなく経済的になると認められる。

 いま、仮に前記13中継所における23MUX及び34MUXの設置について、上記により経済的な設計をしたとすれば、23MUXは計80個、34MUXは計81個、総額380,027,000円で足り、設計に比べそれぞれ75個及び59個は設置する要がなく、これらの購入費約3億0800万円が節減できるものと認められる。

 このような事態を生じたのは、通過する2次群が多数あるのに、設計要領で、短い伝送区間の2次群を収容する3次群は各中継所で2次群まで分離することとしていたり、また、設計要領で長い伝送区間の2次群を収容する3次群は有効な区間について4次群で通過させることとしているのに、この有効な区間についての明確な定義が規定されていなかったことなどによるものと認められる。

 ついては、貴公社においては、ディジタル伝送路網の建設を推進しているところであり、市外回線の伝送路への収容設計は今後も引き続いて多数行われることにかんがみ、通過する2次群又は3次群が多数ある場合はこれを3次群又は4次群に収容して通過させることができるよぅ早急に設計要領を改定するとともに、適切な指導を行うなどして、多重変換装置設置の合理化を図り、もって経費の節減に努める要があると認められる。
 よって、会計検査院法第34条の規定により、上記の処置を要求する。

(注1)  近畿ほか8電気通信局 近畿、関東、信越、東海、北陸、中国、九州、東北、北海道各電気通信局

(注2)  豊岡ほか12中継所 豊岡、鳥取、松江、宇都宮、甲府、諏訪、浜松、富山、尾道、久留米、盛岡、いわき、室蘭各電話中継所

(参考図) 収容設計(概念図)

(参考図)収容設計(概念図)