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  • 昭和58年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第4 住宅金融公庫|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

公庫貸付けを受けて購入したマンションの第三者賃貸等の防止を図るよう改善させたもの


公庫貸付けを受けて購入したマンションの第三者賃貸等の防止を図るよう改善させたもの

科目 (貸付金勘定)個人住宅貸付
部局等の名称 仙台、東京、名古屋、大阪、広島各支所
貸付けの根拠 住宅金融公庫法(昭和25年法律第156号)
貸付金の内容 民間業者が分譲する共同建住宅を購入する者に対して貸し付ける資金
貸付件数 405件
貸付金の合計額 3,244,700,000円

 上記405件の貸付けにおいて、貸付けを受けた者が、自ら居住するための住宅という貸付要件に違反して、購入した住宅を第三者に賃貸したり、自ら会社事務所等の非住宅用途に利用したりなどしていて、不適切な貸付金額は合計32億4470万円となっていた。
 このような事態は、貸付けを受けた者等の不誠実にもよるが、住宅金融公庫において、貸付けの審査及び貸付け後の実態調査に当たって、自ら居住するために住宅を必要としているか否かについて格別の配慮が払われていなかったことなどによるもので、速やかに審査体制及び管理体制の整備を図って第三者賃貸等の防止に努める要があると認められた。
 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

住宅金融公庫(以下「公庫」という。)では、貸付業務の一環として、昭和47年度以降、団地住宅購入資金貸付け及びマンション購入資金貸付けの2種類の貸付けにより、民間業者が分譲する共同建住宅(以下「マンション」という。)を購入する者に対して、貸付けを実施しているが、これらマンションを購入する者に対する貸付けは、公庫から貸付けを受けなければ住宅の取得ができない者が、自ら居住するために住宅を必要として購入する場合に貸し付けられるものであり、この要件に違反した場合には、貸付けを受けた者は、期限前に貸付金の全額を償還しなければならないこととなっている。そして、公庫では、この貸付けを行うについては、国の一般会計から補給金を受けて低利(原則として年5.5%。ただし、57年10月の段階金利制施行後は、当初10年間5.5%、11年目以降7.2%)、かつ長期(最長35年)に貸し付けており、その補給金の額は、公庫の試算(マンション購入資金貸付けの平均融資額800万円で試算)によれば1件当たり約413万円(段階金利適用分は約178万円)となっている。

 しかして、本院が59年中に、仙台支所ほか4支所が57年度及び58年度に行ったマンションを購入する者に対する貸付け114,359件貸付金額1兆0055億6130万円のうちも、6,079件貸付金額517億3395万円について、貸付対象マンションの利用状況を実地に検査したところ、次のとおり、自ら居住するための住宅という貸付要件に違反していて、貸付けが不適切と認められる事態が合計405件貸付金額32億4470万円見受けられた。

(1) 購入した住宅を、住宅用又は会社事務所等非住宅用として当初から第三者に賃貸していたと認められるもの

382件 貸付金額 30億6470万円

 なお、このうちには公庫の貸付手続中に既に賃貸しているものが117件見受けられた。

(2) 購入した住宅を、自ら会社事務所等非住宅用途に利用していたものなど

23件 貸付金額 1億8000万円

 そして、(1)のうちには、貸付対象マンションの分譲業者又はその関連業者の役員や社員が購入して賃貸したり、貸付対象マンションの分譲業者が賃貸をあっせんしたりしているものが見受けられた。
 このような事態を生じたのは、貸付けを受けた者やマンション分譲業者の不誠実にもよるが、近年投資需要を見込んだマンションの建設、販売が増加してきており、これらのマンションが公庫貸付けの対象として借入申込みが行われることが予想されるにもかかわらず、公庫において、貸付けの審査に当たって、自ら居住するために住宅を必要としているか否かについての格別の配慮が払われていないこと、また、貸付け後毎年実施している貸付対象マンションに対する実態調査(現地調査は受託金融機関が実施)に当たって、第三者賃貸等の生じやすい商業地域に建設されたものなどに着目するといった適切な調査対象の選定が行われていないこと、受託金融機関の調査結果についての把握が不十分なことなどによるものと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、住宅金融公庫では、前記405件の貸付けについて、すべて繰上償還等の措置を講ずるとともに、昭和59年11月までに、各支所長あて「個人向け融資(購入系)に係る目的外使用の防止策について」、「個人関係債権実態調査実施要綱について」等の通ちょうを発するなどして、第三者賃貸等の防止を図るよう審査体制及び管理体制を整備する処置を講じた。