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  • 昭和58年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第5 農林漁業金融公庫|
  • 不当事項|
  • 貸付金

農地等取得資金等の貸付けが不当と認められるもの


(134)−(145) 農地等取得資金等の貸付けが不当と認められるもの

科目 貸付金
部局等の名称 青森、盛岡、北陸、近畿、高松、長崎各支店
受託金融機関 青森県信用農業協同組合連合会ほか4金融機関
貸付けの根拠 農林漁業金融公庫法(昭和27年法律第355号)
貸付金の種類 農地等取得資金、総合施設資金、主務大臣指定施設資金
貸付けの内容 農林漁業者に対する農地等取得資金等の貸付け
貸付件数 12件
貸付金の合計額 337,048,000円

 上記の貸付けは、貸付けの目的に沿わない結果になっていて、貸付金156,108,146円が不当と認められる。

(説明)

 農林漁業金融公庫(以下「公庫」という。)では、農林漁業金融公庫法の規定に基づき農林漁業者に対して、農林漁業の生産力の維持増進に必要な長期かつ低利の資金で、一般の金融機関から融通を受けることが困難な資金を直接又は金融機関に委託して貸し付けている。
 公庫が直接貸付けを行う場合は、借入申込書類を審査して所定の条件を満たしていると認めたものについて貸付決定し、事業の進ちょくに応じて事業量及び事業費を確認して貸付金を払い出すこととしており、貸付けの対象となる事業費については、借入者から事業費支払先の領収証等を提出させて確認することとしている。また、金融機関に委託して貸付けを行う場合は、受託金融機関が審査を行い、公庫が貸付決定することとしている特定の貸付けを除いて、受託金融機関が公庫の直接貸付けの場合に準じて上記の事務を行うこととしている。
 しかして、本院で昭和59年中に、農地等取得資金等の資金の貸付けについて調査したところ、公庫青森支店ほか5支店及び5受託金融機関において、借入者の不実の借入申込み等によるとはいえ、これに対する審査及び確認が適切でなかったり、公庫において受託金融機関に対する指導監督が十分でなかったりしたため、上記の12貸付事業において、貸付けの目的が達成されていなかったり、貸付対象事業費よりも低額で事業が実施されていたり、貸付対象事業が実施されていなかったりしているなど貸付けが不当と認められるものが、次表のとおり、156,108,146円見受けられた。

支店名
(受託金融機関名)
貸付先
(所在地)
貸付対象 貸付
昭和年月
(貸付利率)
貸付対象事業費 左に対する貸付金額 貸付金額のうち不当と認めた額 摘要
千円 千円 千円

(農地等取得資金・総合施設資金)

(134) 青森支店
(青森県信用農業協同組合連合会)
農業者
(青森県西津軽郡柏村在住)
農地 57.1
(年3.5%)
10,000 10,000 10,000 貸付目的の不達成
(135)
(同)

(同)
農地ほか 57.1
(年5%)
49,706 46,860 46,860
 この貸付けは、農地42,568m2 の取得、農舎2棟の新築並びにトラクタ1台、コンバイン1台及びりんごの苗木1,100本の購入に必要な資金59,706,000円の一部として昭和57年4月までに農地等取得資金10,000,000円、総合施設資金46,860,000円計56,860,000円を貸し付けたものである。
 しかし、借入者は農地42,568m2 を貸付対象事業費50,174,000円より低額な29,538,775円で取得し、57年4月農舎1棟を基礎工事まで実施しただけで事業を中止し、営農を放棄していて貸付けの目的を達していない。
 なお、本件不当貸付金額については、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。

 (総合施設資金)

(136) 青森支店
(青森県信用農業協同組合連合会)
農業者
(青森県西津軽郡柏村在住)
農地ほか 57.1
(年5%)
56,493 50,840 20,295 低額取得

 この貸付けは、農地44,566m2 の取得、農舎2棟の新築並びにトラクタ1台、コンバイン1台及びりんごの苗木1,100本の購入に必要な資金66,493,500円(うち貸付対象事業費分56,493,500円)の一部として50,840,000円を貸し付けたもので、借入者はこのうち農地を53,480,000円(うち貸付対象事業費43,480,000円)で取得したとしていたが、実際は、これより低額な30,925,226円(うち貸付対象事業費20,925,226円)で取得していたため、貸付対象事業費は33,938,726円となり、これにより適正な貸付金額を計算すると30,544,853円となるので、本件貸付金額との差額20,295,147円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件不当貸付金額については、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。


(137)
(同)
農業者
(青森県西津軽郡柏村在住)
農地ほか 57.1
(年5%)
55,999 50,390 18,565 低額取得
 この貸付けは、農地42,564m2 の取得、農舎2棟の新築並びにトラクタ1台、コンバイン1台及びりんごの苗木1,100本の購入に必要な資金63,499,000円(うち貸付対象事業費分55,999,000円)の一部として50,390,000円を貸し付けたもので、借入者はこのうち農地を50,174,000円(うち貸付対象事業費42,674,000円)で取得したとしていたが、実際は、これより低額な29,535,999円(うち貸付対象事業費22,035,999円)で取得していたため、貸付対象事業費は35,360,999円となり、これにより適正な貸付金額を計算すると31,824,899円となるので、本件貸付金額との差額18,565,101円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件不当貸付金額については、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。

(138) 青森支店
(青森県信用農業協同組合連合会)
農業者
(青森県西津軽郡柏村在住)
農舎ほか 55.6
(年5%)
10,793 9,500 6,266 事業の一部不実施

 この貸付けは、農舎1棟の新築並びにコンバイン1台及びブロードキャスタ1台の購入に必要な資金10,793,000円の一部として9,500,000円を貸し付けたもので、借入者は農舎を7,200,000円で新築したとしていたが、実際は、これを実施していなかったため、貸付対象事業費は3,593,000円となり、これにより適正な貸付金額を計算すると3,233,700円となるので、本件貸付金額との差額6,266,300円が過大な貸付けとなっている。
 なお、昭和59年1月末現在の不当貸付金残高は5,619,440円で、これについては、本院の注意により、同年8月、繰上償還の措置が執られた。

 


(139) 北陸支店
(石川県信用農業協同組合連合会)
農業者
(松任市在住)
えのきたけ栽培施設ほか 57.9
58.6
(年5%)
23,402 18,600 3,227 低額設置

 この貸付けは、えのきたけ栽培施設1棟の設置並びにトラック1台及びコンバイン1台の購入に必要な資金23,402,100円の一部として18,600,000円を貸し付けたもので、借入者は貸付対象事業費どおりの価格で実施したとしていたが、実際は、このうちえのきたけ栽培施設の設置及びトラックの購入(貸付対象事業費21,552,100円)は貸付対象事業費より低額な17,115,610円で実施していたため、貸付対象事業費は、これに計上していなかった栽培施設への進入路工事に要した費用250,000円を考慮しても19,215,610円となり、これにより適正な貸付金額を計算すると15,372,488円となるので、本件貸付金額との差額3,227,512円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件不当貸付金額については、本院の注意により、昭和59年8月、繰上償還の措置が執られた。

 


(140) 近畿支店
(滋賀県信用農業協同組合連合会)
農業者
(近江八幡市在住)
畜舎ほか 58.4
(年5%)
39,545 34,950 4,395 貸付対象外及び低額実施

 この貸付けは、畜舎1棟の新築、サイロ4基の設置並びに成牛10頭及び搾乳機械一式の購入に必要な資金39,545,000円の一部として34,950,000円を貸し付けたもので、借入者は貸付対象事業費どおりの価格で実施したとしていたが、実際は、このうち成牛(貸付対象事業費5,500,000円)は農業団体から15頭の貸与を受けていて貸付けの対象とならないものであり、また、搾乳機械一式(貸付対象事業費5,362,000円)は貸付対象事業費より低額な5,267,000円で購入していたため、貸付対象事業費は33,950,000円となり、これにより適正な貸付金額を計算すると30,555,000円となるので、本件貸付金額との差額4,395,000円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件不当貸付金額については、本院の注意により、昭和59年7月及び10月、繰上償還の措置が執られた。

 


(141) 高松支店
(香川県信用農業協同組合連合会)
農業者
(香川県伸多度郡琴平町在住)
畜舎ほか 57.12
(年5%)
42,174 30,700 4,968 事業の一部不実施及び低額実施

 この貸付けは、畜舎1棟984m2 及び倉庫・監視舎1棟延べ428m2 の新築、畜舎の用地造成、牛衡器一式及び飼料タンク2基の設置並びに素牛62頭の購入に必要な資金42,174,663円の一部として30,700,000円を貸し付けたもので、借入者は貸付対象事業費どおりの価格で実施したとしていたが、実際は、このうち倉庫・監視舎428m2 (貸付対象事業費11,200,000円)については3,214,353円で257m2 を新築しただけで残余の171m2 を実施しておらず、また、その他(貸付対象事業費30,974,663円)については貸付対象事業費より低額な25,376,395円で実施していたため、貸付対象事業費は28,590,748円となり、これにより適正な貸付金額を計算すると25,731,673円となるので、本件貸付金額との差額4,968,327円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件不当貸付金額については、本院の注意により、昭和59年9月、繰上償還の措置が執られた。

 


(142) 長崎支店 農業者
(長崎県南高来郡瑞穂町在住)
畜舎ほか 58.8
(年5%)
35,000 31,500 7,367 低額設置
 この貸付けは、畜舎3棟の新築、畜舎1棟の改造、敷地600m2 造成及び繁殖豚26頭の購入に必要な資金35,000,000円の一部として31,500,000円を貸し付けたもので、借入者は貸付対象事業費どおりの価格で実施したとしていたが、実際は、このうち畜舎3棟の新築、畜舎1棟の改造及び敷地600m2 の造成(貸付対象事業費32,000,000円)は貸付対象事業費より低額な22,650,402円で実施していたため、貸付対象事業費は、これに計上していなかった畜舎の内部設備の取付費用1,164,000円を考慮しても26,814,402円となり、これにより適正な貸付金額を計算すると24,132,961円となるので、本件貸付金額との差額7,367,039円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件不当貸付金額については、本院の注意により、昭和59年8月、繰上償還の措置が執られた。

(主務大臣指定施設資金)

(143) 盛岡支店 林産物処理加工業者
(岩手県九戸郡山形村在住)
チップ生産用機械ほか 58.7
(年6.5%)
29,636 23,708 4,163 低額設置
 この貸付けは、チップ生産用機械の設置及びチップ工場の改修に必要な資金29,636,350円の一部として23,708,000円を貸し付けたもので、借入者は貸付対象事業費どおりの価格で実施したとしていたが、実際は、このうちチップ生産用機械(貸付対象事業費22,206,000円)は貸付対象事業費より低額な17,000,000円で設置していたため、貸付対象事業費は24,430,350円となり、これにより適正な貸付金額を計算すると19,544,280円となるので、本件貸付金額との差額4,163,720円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件不当貸付金額については、本院の注意により、昭和59年7月、繰上償還の措置が執られた。

(144) 漁業生産組合
(岩手県下閉伊郡山田町)
さけます定置網 58.3
(年7.3%)
30,240 20,000 20,000 事業の不実施
 この貸付けは、さけます定置網の購入に必要な資金30,240,000円の一部として20,000,000円を貸し付けたもので、借入者は貸付対象事業費どおりの価格で購入したとしていたが、実際は、貸付対象事業を実施していなかった。
 なお、昭和59年6月の定期償還後の不当貸付金残高は13,000,000円で、これについては、本院の注意により、同月中に繰上償還の措置が執られた。

(145) 盛岡支店
(株式会社北日本相互銀行)
漁業者
(釜石市在住)
いか流し網 58.10
(年7.3%)
18,216 10,000 10,000 事業の不実施
 この貸付けは、いか流し網の購入に必要な資金18,216,000円の一部として10,000,000円を貸し付けたもので、借入者は貸付対象事業費どおりの価格で購入したとしていたが、実際は、貸付対象事業を実施していなかった。
 なお、本件不当貸付金額については、本院の注意により、昭和59年9月、繰上償還の措置が執られた。

401,205 337,048 156,108