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  • 昭和58年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第7 日本道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

しゃ音壁等の支柱用H形鋼の仕様を適切なものに改善させたもの


(2) しゃ音壁等の支柱用H形鋼の仕様を適切なものに改善させたもの

科目 (款)高速道路建設費 
(款)一般有料道路建設費
(款)高速道路改良費
(款)一般有料道路改良費
(項)建設工事費
(項)建設工事費
(項)改良工事費
(項)改良工事費
部局等の名称 札幌、東京第一、東京第二、新潟、大阪、福岡各建設局及び仙台、東京第一、東京第二、金沢、名古屋、大阪、広島、福岡各管理局
工事名 道央自動車道白老標識工事ほか143工事
工事の概要 高速道路等の建設及び供用中の路線に騒音防止対策としてのしゃ音壁及び道路標識等を施工するもの
工事費 31,582,172,000円
請負人 秩父産業株式会社ほか90会社及び11共同企業体
契約 昭和57年6月〜59年3月 指名競争契約

 上記の各工事において、しゃ音壁等の支柱に使用するH形鋼(材料費積算額3億6476万余円)の仕様が適切でなかったため、材料費が約1億1200万円過大となっていた。
 このように、材料費が過大となっていたのは、近年、電炉メーカー(注1) 製品の生産シェアが増大し製品を容易に入手できるようになり、しかも高炉メーカー(注2) 製品に比べて価格が低廉で、日本工業規格に適合し品質上問題のない電炉メーカー製品があるのに、H形鋼の仕様について高炉メーカー製品を指定していたことによるもので、仕様を適切なものに改める要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

 日本道路公団(以下「公団」という。)では、高速道路等の建設工事を毎年多数実施しているが、このうち、札幌建設局ほか13建設局等が昭和58事業年度に施行しているしゃ音壁等工事144工事(工事費総額315億8217万余円)について検査したところ、次のとおり、H形鋼の仕様が適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記各工事は、しゃ音壁及び標識柱等を施工するもので、その支柱として溶融亜鉛メッキ(JIS−H−8641−HDZ−55)を施したH形鋼(100mm×100mmから300mm×300mmまでの各サイズ)を使用している。そして、このH形鋼の仕様については、土木工事共通仕様書で日本工業規格(JIS−G−3101。以下「JIS」という。)を満足するものとし、さらに、公団本社制定の土木工事積算要領の規定に基づき特記仕様書で高炉メーカーのものを指定し、その材料費を1t当たり90,500円から97,000円として144工事のH形鋼総重量3,817tで3億6476万余円と算定していた。

 しかして、H形鋼には高炉メーカー製品のほか電炉メーカー製品があるが、公団が上記のようにH形鋼を高炉メーカー製品と指定したのは、上記工事の大半を占めるしゃ音壁の施工が始まった当時(48年頃)は高炉メーカー製品が生産シェアのほとんどを占めていたこと、及び電炉メーカー製品は圧延時等に極小の表面傷が生じる場合があり、この表面傷が溶融亜鉛メッキの防錆効果に悪影響を及ぼすおそれがあると考えたことによるものである。

 しかしながら、近年、電炉メーカーのH形鋼の生産シェアは50%程度を占め製品の入手は容易で、その価格も高炉メーカー製品より相当低廉となってきており、また、表面傷の溶融亜鉛メッキに対する影響についても、しゃ音壁等の支柱に使用する本件各工事のH形鋼の場合は、メッキの付着量も多いことなどから、特に高炉メーカー製品と指定する要はないと認められた。現に、他団体におけるこの種施設のH形鋼の仕様についてみても単にJIS規格品を使用することとし、高炉、電炉メーカー製品の別を指定していない状況である。

 したがって、上記各工事のH形鋼の仕様については、特に高炉メーカーの製品を指定する要はなく単にJIS規格品を使用することとすれば、本件各工事については材料費積算額を約1億1200万円低減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、日本道路公団では、昭和59年11月に土木工事積算要領のH形鋼の仕様を適正なものに改め、同月以降契約する工事から適用することとする処置を講じた。

(注1)  電炉メーカー 鋼塊を電気炉で製鋼するメーカー

(注2)  高炉メーカー 溶鉱炉を持ち鉄鋼一貫生産を行っているメーカー