農林水産省では、農業者の経営移譲を促進することにより農業経営主の若返り、農業経営規模の拡大を図ることを目的として農業者年金事業を農業者年金基金(以下「基金」という。)に実施させているが、このうち経営移譲年金の支給において、(1)経営移譲年金の裁定時又はその後における調査確認が十分でなかったため、経営移譲の意義が損なわれていると認められる事態、(2)経営移譲年金裁定時の調査確認が十分でなかったため、年金支給額が過大となっていたり、受給資格のない者に年金を支給したりしている事態が見受けられたので、基金及びその業務受託者である農業委員会、農業協同組合等が被保険者資格の確認や経営移譲年金の裁定等に関する事務を的確に履行することができるよう関係要領等を体系的に整備するとともに、経営移譲の実体を的確に把握することができるような事務処理上の方策を整備し、あわせて基金及び業務受託者に対する監査、指導を強化するなどの処置を講じ、もって、農業者年金事業の実施の適正を期する要があると認め、昭和60年12月に改善の処置を要求した。
これに対し、農林水産省では、本院指摘の趣旨に沿い、61年1月に基金に対して農業者年金事業における経営移譲年金の支給の適正化を図るための改善措置を講ずるよう指示するとともに、同年5月に各都道府県あてに業務受託者に対する監査、指導を強化するよう依頼した通知を発するなどし、また、上記指示を受けて、基金は経営移譲の実体を的確に把握することができるよう、経営移譲年金の裁定時及びその後における調査確認体制の整備等について農業者年金給付関係の事務処理上の留意事項等を改正し、これを同年3月に業務受託者に対し通知するなどして、農業者年金事業の適正な実施を図る処置を講じた。