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  • 昭和62年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第1 総理府|
  • (防衛庁)|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

海上自衛隊の船舶(艦船)の国有財産台帳価格について是正改善の処置を要求したもの


海上自衛隊の船舶(艦船)の国有財産台帳価格について是正改善の処置を要求したもの

部局等の名称 海上自衛隊佐世保、舞鶴両地方総監部
国有財産の区分 (分類)行政財産 (種類)公用財産 (区分)船舶
国有財産の数量及び価格 艦船3隻 計107,289,504,611円(昭和62年度末現在の台帳価格)

 上記各艦船の国有財産台帳価格には、FMS調達により購入のうえ各造船会社に官給し国有財産に編入した装備品等の価格が含まれているが、当該物品について、物品管理簿に記載する際には取得時の支出官レートで円貨換算した価格によっているのに、国有財産に編入する際には、これによらず前金払時の支出官レートで円貨換算した価格によっているなどのため、原則として一致するものである物品管理簿価格と国有財産に編入される物品の価格とがかい離していて国有財産台帳価格が正確なものとなっていない。

 このような事態を生じているのは、海上自衛隊の補給部隊及び調達実施本部において、国有財産に登録するための基礎資料を提出させている各造船会社に対し、FMS調達による装備品等を官給する際に、官給品の適正な円貨換算価格を通知していなかったこと、海上自衛隊において、当該装備品等を国有財産に編入するに当たり適用すべき円貨換算レート等に関する明確な基準等が設けられていなかったことなどによると認められた。

 したがって、防衛庁においては、FMS調達に係る官給品の円貨換算価格について調達実施本部又は各補給部隊から各造船会社に通知させること、海上自衛隊をして、物品の管理及び国有財産の管理の整合性を図るため、これらの取扱いに関する基準等を設けさせることなどの措置を講じ、もって国有財産台帳価格の適正化を図る要がある。

 上記に関し、昭和63年12月9日に防衛庁長官に対して是正改善の処置を要求したが、その全文は以下のとおりである。

海上自衛隊の船舶(艦船)の国有財産台帳価格の適正化について

 貴庁では、アメリカ合衆国の武器輸出管理法(1976年Arms Export Control Act)等に基づいた対外軍事販売(以下「FMS」という。)により毎年度多額の防衛装備品等を米国海軍省から購入しており、貴庁調達実施本部において海上幕僚監部の要求により、昭和62年度就役の護衛艦「あさぎり」の新造工事(請負会社石川島播磨重工業株式会社、63年3月竣工)、同「しまかぜ」の新造工事(請負会社三菱重工業株式会社、63年3月竣工)及び47年度就役の護衛艦「はるな」の改造工事(請負会社三菱重工業株式会社、62年10月竣工)に当たり、補給部隊をして、工事を請け負った各造船会社に対して官給させるため、58、59両年度に米国海軍省との間で取り交わした引合受諾書(注1) に基づくFMS調達により、これら艦船に搭載する武器システム等を総額286億4590万余円で購入している。

 しかして、上記FMS調達による装備品等の国有財産への編入状況等について調査したところ、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。
 すなわち、海上自衛隊では、前記艦船を、国有財産法(昭和23年法律第73号)の規定に基づく船舶として本件FMS調達による装備品等を含めた価格で国有財産台帳に登録しており、62年度末現在の国有財産台帳価格は、「あさぎり」356億6282万余円(FMS調達による装備品等の価格26億7993万余円)、「しまかぜ」535億2833万余円(同180億3511万余円)、「はるな」180億9834万余円(同36億1551万余円)、合計1072億8950万余円(同243億3056万余円)となっている。

 上記国有財産として登録した艦船価格のうち、FMS調達による装備品等については、まず物品として取得され、物品管理法(昭和31年法律第113号)の規定等に基づき、その価格は取得時の支出官レートで円貨換算した価格(注2) で物品管理簿に記載された後、官給のため払い出されて、国有財産である艦船に編入されるときに、取得時の支出官レートで円貨換算した価格で国有財産台帳に登録されることから、これら装備品等の据付・調整等の費用で国有財産の価格に加減することが適切と認められるものなどを除くと、物品管理簿価格と上記の国有財産台帳に編入される物品の価格とは原則として一致するものである。

 しかしながら、海上自衛隊が、上記FMS調達による装備品等について、国有財産台帳に登録した価格は、当該艦船の建造等を請け負った各造船会社が「海上自衛隊補給実施要領」(昭和56年12月海幕補第5509号)等に基づき、国有財産と物品の区分を明らかにするなどの目的で作成して調達実施本部等に提出している生産明細書の国有財産編入の部に記載された価格をそのまま転記したものであって、その価格は、各造船会社が物品管理簿価格とは無関係に引合受諾書に記載されている装備品、部品、役務等一式のドル価格の総額を調査し、これに当該取引の前金払時の支出官レートに基づく平均換算率を乗ずるなどしてドル価格を円価格に換算したものの中から、国有財産に編入すべき部分を抽出したものとなっているため、上記各艦船の国有財産台帳価格には、〔1〕 FMS調達に際しての前金払時の支出官レートと取得時の支出官レートとの差異に基づく開差額が含まれていたり、〔2〕 国有財産の価格に編入すべきではない役務費や部品費等が混入していたりなどしていて、物品管理薄価格とかい離し、正確なものとなっていないのは適切とは認められない。

 いま、仮に本件FMS調達による装備品等の国有財産に編入すべき価格を物品を物品管理簿価格から計算することとして、各艦船の国有財産の価格を算定すると、「あさぎり」339億9444万余円(FMS調達による装備品等の価格10億1155万余円)、「しまかぜ」443億9390万余円(同89億0068万余円)、「はるな」154億4264万余円(同9億5980万余円)、合計938億3099万余円(同108億7205万余円)となり、前記各艦船の国有財産台帳価格との間に、「あさぎり」16億6837万余円、「しまかぜ」91億3442万余円、「はるな」26億5570万余円、合計134億5851万余円の開差を生じていることになる。

 このような事態を生じているのは、各補給部隊において、各造船会社に対し、FMS調達による装備品等を官給する際に受領検査命令書及び検査調書に添付された出荷通知等のドル価格を通知するにとどまり、また、調達実地本部も官給品の取得事の支出官レートに基づく適正な円貨換算価格を通知していなかったこと、海上自衛隊において、物品の管理及び国有財産の管理の整合性を図るために、国有財産に編入するに当たり適用すべき円貨換算レート、計上すべき役務の範囲等に関する明確な基準等が設けられていなかったことなど国有財産台帳価格を適正に表示するための配慮が欠けていたことによると認められた。

 ついては、貴庁においては、FMS調達による装備品等を搭載する艦船の建造等を今後も引き続き実施していくこととしていることから、前記事態にかんがみ、FMS調達に係る官給品の円貨換算価格について調達実施本部又は各補給部隊から各造船会社に通知させること、海上自衛隊をして、物品の管理及び国有財産の管理の整合性を図るため、これらの取扱いに関する基準等を設けさせること、また、艦船に搭載する装備品等のうち国有財産に編入されるものの範囲に関する関係通達等の趣旨を各補給部隊や各造船会社等に周知徹底をさせることなど措置を講じ、もって国有財産台帳価格の適正化を図る要があると認められる。
 なお、艦船の国有財産台帳価格については、FMS調達による装備品等を搭載した本件3艦以外の艦船についても同様の事態があると思料されるので、生産明細書等を再調査のうえ国有財産台帳価格を修正すべきものと認められる。
 よって、会計検査院法第34条の規定により、上記の処置を要求する。

 (注1)  引合受諾書  FMS調達の内容及び前金払等の条件を記載したアメリカ合衆国と日本国政府との政府間契約の書類

 (注2)  取得時の支出官レートで円貨換算した価格  現状は取得時のドル価格で表示しているが、物品管理簿価格を基に調製される物品増減及び現在額報告書記載価格は、取得時の支出官レートで円貨換算した価格によっている。