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義務教育費国庫負担金等の経理が不当と認められるもの


(9)-(15) 義務教育費国庫負担金等の経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)文部本省 (項)義務教育費国庫負担金
(項)養護学校教育費国庫負担金
部局等の名称 東京都ほか5県
国庫負担の根拠 義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)、公立養護学校整備特別措置法(昭和31年法律第152号)
事業主体 東京都ほか5県(昭和59年度1県、60年度4都県、61年度4都県)
国庫負担の対象 公立の小学校及び中学校並びに盲学校、聾(ろう)学校及び養護学校の小学部及び中学部に要する経費のうち教職員給与費等
上記に対する国庫負担金交付額の合計 昭和59年度 18,260,171,745円
昭和60年度 321,069,656,056円
昭和61年度 395,809,251,425円
735,139,079,226円

 上記の国庫負担金は、地方交付税の交付団体である都道府県については教職員の国庫負担限度定数等を基礎にして、また、地方交付税の不交付団体である都道府県については教職員定数等を基礎にして算定されているが、上記6事業主体のうち地方交付税の交付団体に該当する岐阜県ほか3県では、事実と相違する過大な児童数に基づく教職員の標準定数を用いて教職員の国庫負担限度定数を算定するなどしたため、国庫負担限度定数が過大となっているなどしており、また、地方交付税の不交付団体に該当する東京都ほか1県では、国庫負担の対象とはならない教職員を含めるなどして教職員定数を算定したため、教職員定数が過大となっていて、国庫負担金86,821,969円が不当と認められる。これを都県別に掲げると別表 のとおりである。

(説明)

 この国庫負担金は、義務教育費国庫負担法等の規定に基づき、公立の小学校及び中学校並びに盲学校、聾学校及び養護学校の小学部及び中学部(以下「義務教育諸学校」という。)に要する経費のうち都道府県の負担する教職員給与費等の経費について、原則として、その実支出額を国庫負担対象額とし、その2分の1(昭和61年度においては、一部の経費については3分の1。以下同じ。)を国が負担するため交付されるものである。ただし、地方交付税の交付団体である都道府県(以下「一般県」という。)のうち、教職員の実数が「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(昭和33年法律第116号)等に基づく教職員の標準定数を超えるなど一定の条件に該当するもの及び地方交付税の不交付団体である都道府県(以下「政令県」という。)については、次のように算定した額を国庫負担対象額とし、その2分の1を最高限度として国が負担することとなっている。

1 一般県について

 (1) 公立の義務教育諸学校について、当該年度の5月1日現在の各学校の学年別等の児童生徒数を基礎として算定した各学校の標準学級数(注1) を学校の種類、規模別に毎月集計し、それぞれの合計数に職種区分(校長教諭等、養護教諭等など)ごとの所定の係数を乗ずるなどして、当該都道府県全体の教職員の学校の種類、職種区分ごとの毎月の標準定数を算定する。

 (2) (1)により算定した教職員の毎月の標準定数と実数とを比べ、いずれか少ない数の1年間の合計数を当該都道府県に係る国庫負担限度定数とする。ただし、〔1〕 教職員の身分を保有したままで教育委員会事務局、図書館、博物館、公民館、青年海外協力隊等学校以外の教育機関等に勤務している者、〔2〕 休職者、〔3〕 「女子教職員の出産に際しての補助教職員の確保に関する法律」(昭和30年法律第125号)及び「義務教育諸学校等の女子教育職員及び医療施設、社会福祉施設等の看護婦、保母等の育児休業に関する法律」(昭和50年法律第62号)(以下これらを「産休法等」といぅ。の規定により臨時的に任用される者(注2) (以下「産休等補助教職員」という。)は、上記の標準定数及び実数に含まれないものとされている。

 (3) 一般の教職員に係る給与費等について給与費等の種類ごとの実支出額(学校以外の教育機関等に勤務している者、休職者及び産休等補助教職員に係る給与費等の実支出額を除く。)から教職員の毎月の実数の1年間の合計数が(2)の国庫負担限度定数を超過する程度に応じて算定した額(以下「定数超過額」という。)を控除するなどした額、休職者及び産休等補助教職員に係る給与費等について、その実支出額を基礎として算定した額等を合計し、この合計額を国庫負担対象額とする。

2 政令県について

 (1) 一般県と同じ方法で当該年度の5月1日現在において算定した標準定数の合計数に同日現在における休職者及び産休等補助教職員の実数を加えるなどして当該都道府県の教職員定数を算定する。

 (2) 給与費等の種類ごとに、当該都道府県ごとに毎年度政令で定める額等に(1)により算定した教職員定数を乗ずるなどして算定した額を合計し、この合計額を国庫負担対象額とする。

 しかして、上記国庫負担金について検査したところ、東京都ほか5県において次のような事態が見受けられた。

1 一般県である岐阜、静岡、愛媛、佐賀各県のうち、(1)愛媛、佐賀両県では、一部の小学校が、各年度の5月1日現在の在学児童数につき、出席簿、指導要録等の関係表簿を作為するなどして、実際は、当該小学校に転入学の事実がなく他の小学校に在学している者を当該小学校に在学していることとして、その数を実数に上積みし、事実と相違した過大な報告をしていたのに、これをそのまま用いて標準学級数及びこれに基づく教職員の標準定数を算定していたため、(2)岐阜県では、青年海外協力隊隊員として海外に派遣されている教員は、学校以外の教育機関等に勤務している者で国庫負担金算定上休職者として取り扱えないのに、その者を休職者に含めて国庫負担対象額を算定していたため、(3)静岡県では、産休等補助教職員に該当せず、教職員の毎月の実数に含めなければならない者を当該実数に含めていなかったことにより、控除すべき定数超過額を過小に算定していたため、国庫負担金が過大に交付されていた。

2 政令県である東京都、神奈川県のうち、(1)東京都では、青年海外協力隊隊員等として海外に派遣されている教員を休職者の実数に含めて教職員定数を算定していたため、(2)神奈川県では、産休等補助教職員に該当しない者を産休等補助教職員の実数に含めて教職員定数を算定していたため、国庫負担金が過大に交付されていた。

(注1)  標準学級数 「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」に規定する学級編制の標準により算定した学級数をいい、例えば小学校及び中学校の場合、各学年ごとの児童生徒数を45(一部の小学校及び中学校では40)で除して得られる数(端数切上げ)の合計数となる。

(注2)  臨時的に任用される者  国公立の高等学校以下の学校に勤務する女子教職員が出産、育児のため休業する場合に、産休法等の定めるところにより、任命権者は、出産の場合には当該教職員の産前6週間、産後8週間又は通算14週間(人事院規則又は条例でこれより長い期間を定めたときは当該期間)の休業の期間を、また、育児休業の場合には当該教育職員の育児休業の期間をそれぞれ任用の期間とする補助教職員を、当該教職員の職務を補助させるため、臨時的に任用するものとされている。

(別表)

都県名
(事業主体)
年度 国庫負担対象額 左に対する国庫負担金 不当と認めた国
庫負担対象額
不当と認めた国庫負担金
千円 千円 千円 千円
(義務教育費国庫負担金)
 
(9) 東京都
(同)
60 348,467,079 174,233,539 44,312 22,156
61 354,816,514 171,635,105 52,407 25,347
小計 703,283,593 345,868,645 96,719 47,503
 東京都では、青年海外協力隊隊員等として海外に派遣される教員を、昭和60年5月1日及び61年5月1日現在の休職者の実数に含めて教職員定数を算定していたが、上記の教員は、学校以外の教育機関等に勤務している者で国庫負担の対象にならないものであるから、これらの者を休職者の実数に含めて教職員定数を算定するのは誤りであり、結局教職員定数が60年度7人、61年度8人それぞれ過大になっていた。
 したがって、適正な教職員定数に基づき国庫負担金を算定すると、60年度174,211,383,411円、61年度171,609,758,329円となり、60年度22,156,121円、61年度25,347,547円がそれぞれ過大に交付されていた。
 
(10) 神奈川県
(同)
61 229,817,427 111,194,761 5,825 2,819
 神奈川県では、横浜市が昭和61年5月1日現在産休法等で定める臨時的任用期間外(同期間の直前)において任用中の補助教職員の1人を誤って同日現在の産休等補助教職員の実数に含めて報告していたのに、これをそのまま用いて教職員定数を算定したため、教職員定数が1人過大になっていた。
 したがって、適正な教職員定数に基づき国庫負担金を算定すると、111,191,942,803円となり、2,819,134円が過大に交付されていた。
 
(11) 岐阜県
(同)
60 84,473,894 42,236,947 773 386
61 87,660,605 42,463,956 2,985 1,435
小計 172,134,500 84,700,903 3,759 1,822
 岐阜県では、青年海外協力隊隊員として海外に派遣される教員を休職者に含めて国庫負担の対象となる教職員給与費等を算定していたが、上記の教員は、学校以外の教育機関等に勤務している者で国庫負担の対象にならないものであるから、これらの者を休職者に含めて国庫負担の対象となる教職員給与費等を算定するのは誤りであり、結局国庫負担の対象となる教職員給与費等が昭和60年度773,882円、61年度2,985,513円それぞれ過大になっていた。
 したがって、適正な教職員給与費等に基づき国庫負担金を算定すると、60年度42,236,560,499円、61年度42,462,520,570円となり、60年度386,941円、61年度1,435,853円がそれぞれ過大に交付されていた。
 
(12) 静岡県
(同)
60 132,755,484 66,377,742 19,386 9,693
61 136,227,071 65,946,355 16,466 7,963
小計 268,982,555 132,324,097 35,852 17,656
 静岡県では、産休法等で定める臨時的任用期間外(同期間の直前直後)において任用中の補助教職員も産休等補助教職員として取り扱っていて、毎月の1日現在の教職員の実数を算定するに際し、同日現在法定期間外において任用中のこれら補助教職員(昭和60年度46人、61年度37人)は、教職員の毎月の実数に含めなければならないのに含めていなかった。
 このことにより、一般の教職員に係る給与費等の実支出額を基に国庫負担対象額を算定する過程で実支出額から控除すべき定数超過額が過小となり、ひいては国庫負担対象額が過大に算定される結果となっていた。
 したがって、これらを教職員の毎月の実数に含めて国庫負担金を算定すると、60年度66,368,048,905円、61年度65,938,392,488円となり、9,693,096円、7,963,503円がそれぞれ過大に交付されていた。
 
(13) 愛媛県
(同)
60 67,603,315 33,801,171 2,011 1,005
 宇和島市が設置する小中学校のうち、小学校1校が、当該学校に転入学の事実がなく他の小学校に在学している者を含めて、昭和60年5月1日現在の在学児童数を事実と相違して過大に報告していたのに、愛媛県では、これをそのまま用いて教職員の標準定数を算定したため、標準定数が1入過大になっていた。
 したがって、適正な教職員の標準定数に基づき国庫負担金を算定すると、33,800,652,002円となり、1,005,848円が過大に交付されていた。
 
(14) 佐賀県
(同)
59 36,520,343 18,260,171 15,351 7,675
 小城町が設置する小中学校のうち、小学校1校が、当該学校に転入学の事実がなく他の小学校に在学している者を含めて、昭和59年5月1日現在の在学児童数を事実と相違して過大に報告していたのに、佐賀県では、これをそのまま用いて教職員の標準定数を算定したため、標準定数が3人過大になっていた。
 したがって、適正な教職員の標準定数に基づき国庫負担金を算定すると、18,252,495,989円となり、7,675,756円が過大に交付されていた。

(養護学校教育費国庫負担金)
 
(15) 東京都
(同)
60 8,839,538 4,419,769 5,482 2,741
61 9,434,760 4,569,071 11,557 5,596
小計 18,274,299 8,988,840 17,040 8,338
 東京都では、青年海外協力隊隊員として海外に派遣される教員を、昭和60年5月1日及び61年5月1日現在の休職者の実数に含めて教職員定数を算定していたが、上記の教員は、学校以外の教育機関等に勤務している者で国庫負担の対象にならないものであるから、これらの者を休職者の実数に含めて教職員定数を算定するのは誤りであり、結局教職員定数が60年度1人、61年度2人それぞれ過大になっていた。
 したがって、適正な教職員定数に基づき国庫負担金を算定すると、60年度4,417,027,887円、61年度4,563,474,374円となり、60年度2,741,346円、61年度5,596,824円がそれぞれ過大に交付されていた。
 
1,496,616,035 735,139,039 176,560 86,821