会計名及び科目 | 厚生保険特別会計(年金勘定) (項)保険給付費 |
部局等の名称 | 社会保険庁 |
支給の相手方 | 48人 |
老齢年金等の支給額の合計 | 64,508,190円 |
上記の48人に老齢年金等64,508,190円を支給しているが、審査に当たる都道府県の社会保険事務所(注1)
において、年金の受給権者が被保険者資格を取得した場合の届出に対する調査確認等が十分でなかったり、事務処理が適切でなかったりしたため、28,722,761円(老齢年金17,993,967円、通算老齢年金4,157,442円、老齢厚生年金6,571,352円)が不適正に支給されていた。これらについては、本院の注意により、すべて返還の処置が執られた。
これは、社会保険庁及び北海道ほか19都府県の49社会保険事務所において被保険者1,646人について本院が調査した結果である。
(説明)
厚生年金保険(前掲の「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」の説明参照 )において行う給付のうち、老齢年金及び老齢厚生年金は、所定の被保険者期間を満たしている者が一定の年齢に達したときに受給権者となるもので、その給付額は、受給権者の被保険者期間及びその期間における報酬を基に算定される額(以下「基本年金額」という。)と配偶者等について加算される額(以下「加給年金額」という。)との合計額となっており、また、通算老齢年金は、老齢年金を受けるのに必要な被保険者期間を満たしていない者で、他の公的年金制度の被保険者期間又は組合員期間と通算することにより所定の被保険者期間を満たすことになる者等が一定の年齢に達したときに受給権者となるもので、その給付額は、上記の基本年金額に相当する額となっている。
しかして、これらの年金の受給権者が厚生年金保険の適用事業所に使用され、被保険者となっている間は、〔1〕 受給権者が60歳未満である場合は全額(加給年金額を含む。)、〔2〕 受給権者が60歳以上65歳未満である場合は、その者が現に受けている報酬月額の標準報酬等級(注2) の区分に応じ、基本年金額の100分の20、100分の50若しくは100分の80に相当する部分又は全額(加給年金額を含む。)について支給を停止することとなっている。
そして、その停止の手続についてみると、厚生年金保険の適用事業所の事業主は、新たに使用した者が受給権者であるときは、その者の生年月日、資格取得年月日、報酬月額等のほか、受給権を有することを記載した被保険者資格取得届に、その者から提出を受けた年金手帳及び年金証書を添えて所轄の社会保険事務所に提出し、さらに、同事務所では、これを調査確認のうえ、老齢年金等受給権者の被保険者資格取得報告書を作成して社会保険庁に報告することとなっており、同庁では、これに基づいて受給権者に係る年金の支給停止額を算定のうえ、支給額を決定することとなっている。
しかして、厚生年金保険の年金受給権者で被保険者となっている者に対する老齢年金、通算老齢年金及び老齢厚生年金の支給の適否について検査したところ、
(1) 受給権者又は事業主が制度の理解が十分でなかったり、誠実でなかったりしたため、事業主が被保険者資格取得届の提出に当たって受給権が無いと表示していたり、報酬月額を実際の額より少なく記載していたりしていたものなどがあったのに、これに対する社会保険事務所の調査確認等が十分でなかったこと、
(2) 事業主から適正な被保険者資格取得届が提出されているのに、社会保険事務所が被保険者資格取得報告書の作成、報告をしていなかったことのため、社会保険庁では、受給権者48人について年金の全部又は一部の支給を停止すべき期間について停止することなく64,508,190円を支給し、このうち28,722,761円(老齢年金17,993,967円、通算老齢年金4,157,442円、老齢厚生年金6,571,352円)が不適正に支給されていた。
(注1) 都道府県の社会保険事務所 (北海道)札幌西社会保険事務所、(東京都)港、渋谷、世田谷、武蔵野各社会保険事務所、(新潟県)新潟東社会保険事務所、(富山県)富山、魚津両社会保険事務所、(石川県)金沢北社会保険事務所、(長野県)伊那、松本両社会保険事務所、(三重県)津社会保険事務所、(大阪府)大手前、堀江両社会保険事務所、(和歌山県)和歌山西、田辺両社会保険事務所、(山口県)下関社会保険事務所、(香川県)高松東社会保険事務所、(熊本県)玉名社会保険事務所、(鹿児島県)鹿児島北、鹿屋両社会保険事務所の21社会保険事務所
(注2) 標準報酬等級 第1級68,000円から第31級470,000円までの等級に区分されているもので、被保険者に実際に支給される報酬月額はこの等級のいずれかに当てはめられる。