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補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの


(26)−(60) 補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生本省 (項)保健衛生諸費
(項)老人福祉費
(項)遺族及留守家族等援護費
部局等の名称 厚生本省、北海道ほか15府県
補助の根拠 老人福祉法(昭和38年法律第133号)等
事業主体 道1、県6、市33、町3、その他2、計45事業主体
補助事業 北海道へき地中核病院運営事業等45事業
上記に対する国庫補助金交付額の合計 34,305,855,978円

 上記の45補助事業において、事業費を過大に精算していたり、補助金を不正に受給していたりなどしていて、国庫補助金174,135,739円が不当と認められる。これを道府県別に掲げると別表 のとおりである。

(説明)

 厚生省所管の補助事業は、地方公共団体等が事業主体となって実施するもので、同省では、これらの事業主体に対して、事業に要する費用について直接又は間接に補助金を交付している。
 しかして、これらの補助事業の実施及び経理について検査したところ、前記の45事業主体が実施したへき地中核病院運営事業、へき地診療所運営事業、老人福祉施設保護事業等の事業において、事業費を過大に精算していたり、補助金を不正に受給していたりなどしていた。

 いま、これらを不当の態様別に示すと次のとおりである。

事業費を過大に精算しているもの
42事業 不当と認めた国庫補助金 106,241,743円
補助金を不正に受給していたもの
1事業 不当と認めた国庫補助金 53,189,000円
事業の一部を実施していないもの
1事業 不当と認めた国庫補助金 10,909,996円
補助の対象とは認められないもの
1事業 不当と認めた国庫補助金 3,795,000円

(別表)

道府県名 事業 事業主体 年度 補助対象事業費 左に対する国庫補助金 不当と認めた補助対象事業費 不当と認めた国庫補助金 摘要

(医療施設運営費等補助金)
千円 千円 千円 千円

(へき地中核病院運営事業)
 
(26) 北海道 へき地中核病院運営事業 釧路市 57 3,715 1,857 3,535 1,767 事業費の精算過大
58 6,348 3,174 5,988 2,994
59 6,449 3,224 6,089 3,044
60 3,839 1,919 3,479 1,739
61 4,010 2,005 2,786 1,393
小計 24,361 12,179 21,877 10,937
(27) 愛知県  同 愛知県厚生農業協同組合連合会 57 11,116 5,558 4,117 2,089
58 11,337 5,668 4,298 2,149
59 12,998 6,499 5,616 2,808
60 13,630 6,815 5,549 2,775
61 13,628 6,814 5,110 2,555
小計 62,709 31,354 24,750 12,376
(28)  同  同 北設楽郡東栄町 60 12,494 6,247 2,734 1,367
61 12,567 6,283 2,676 1,338
小計 25,061 12,530 5,410 2,705
(29) 山口県  同 山口県 57 22,136 9,358 16,205 6,393
58 21,308 10,044 17,282 8,031
59 23,441 9,683 18,813 7,370
60 22,897 11,432 17,924 8,946
61 21,715 10,458 18,350 8,776
小計 111,499 50,975 88,577 39,516
(30) 宮崎県 へき地中核病院運営事業 宮崎県 60 21,983 10,991 5,769 2,885 事業費の精算過大
61 20,353 9,297 5,369 1,806
小計 42,336 20,288 11,138 4,691
265,966 127,326 151,753 70,225

 この補助事業は、都道府県、市町村等の運営する医療機関において無医地区への巡回診療、へき地診療所への医師派遣等の事業を行うもので、国はこれに要する費用を補助している。そして、この補助金の交付額は、〔1〕 都道府県が行う事業については、医療活動費、医療費等の各種目ごとに所定の基準額と当該各種目に係る人件費等の対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額を選定し、この各種目ごとに選定された額を合計した額と総事業費から診療収入額等の収入額を控除した額とを比較して少ない方の額に、〔2〕 市町村等の行う事業に都道府県が補助する事業については、〔1〕の計算方法により得られた額と都道府県が補助した額とを比較して少ない方の額に、それぞれ所定の補助率を乗じて得た額となっている。

 しかして、上記の事業主体のうち、釧路市、東栄町、山口県及び宮崎県では、医師等の人件費等について実際の支払額より高い額で算定したり、巡回診療に従事しなかった日数の分あるいは巡回診療に従事しなかった医師の分を含めて算定したりなどし、また、愛知県厚生農業協同組合連合会では、本件補助の対象とならない地区への巡回診療に要した人件費等を計上するなどして、それぞれ補助対象事業費を過大に精算していた。


(へき地診療所運営事業)
 
(31) 山形県 へき地診療所運営事業 西村山郡西川町 57 1,263 838 1,263 838 補助の対象外
58 1,085 716 1,085 716
59 1,089 712 1,089 712
60 1,735 1,037 1,735 1,037
61 1,024 492 1,024 492
小計 6,200 3,795 6,200 3,795

(32)

岐阜県

へき地診療所運営事業

加茂郡七宗町
(注) 52
4,914

3,276

4,914

3,276

補助金の不正受給
55 6,546 4,364 6,546 4,364
56 8,054 5,369 8,054 5,369
57 12,536 8,357 12,536 8,357
58 11,631 7,754 11,631 7,754
59 12,973 8,648 12,973 8,648
60 14,409 8,645 14,409 8,645
61 13,553 6,776 13,553 6,776
小計 84,618 53,189 84,618 53,189
90,818 56,984 90,818 56,984

(注) 
昭和52年度の補助金名は、「へき地医療対策費補助金」である。
 

 この補助事業は、都道府県、市町村等においてへき地診療所の運営事業を行うもので、国はこれに要する費用を補助している。そして、この補助金の交付額は、市町村等の行う事業に都道府県が補助する事業については、事務費、医療費等の各種目ごとに所定の基準額と当該各種目に係る対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額を選定し、この各種目ごとに選定された額の合計額(以下「選定額」という。)から診療収入額を控除した額と総事業費から診療収入額等の収入額を控除した額とを比較して少ない方の額に所定の補助率を乗じて得た額と、都道府県が補助した額とを比較して少ない方の額となっている。

 上記のへき地診療所のうち市町村が国庫補助を受けて設置し運営している国民健康保険直営診療所については、別途国から国民健康保険事業について交付されている財政調整交付金(特別調整交付金)の対象となっていることから、本件補助の対象から除外されている。

 しかして、上記西川町では、昭和57年度から61年度までの間に3,795,000円の国庫補助金の交付を受けていたが、同町のへき地診療所は財政調整交付金(特別調整交付金)の交付対象となっている国民健康保険直営診療所であるので本件補助の対象とはならず、上記国庫補助金は全額交付の要がなかったものである。

 また、上記七宗町では、52年度及び55年度から61年度までの間に53,189,000円の国庫補助金の交付を受けていたが、実際は、診療収入額を過小にしたり、医薬材料費等の医療費を過大にしたりなど作為して実績報告を行っており、実際の収入額及び支出額により算定すると各年度とも診療収入額が選定額を上回ることとなり、したがって上記国庫補助金は全額交付の要がなかったのに、同町がこれを不正に受給していたものである。


(老人保護費補助金)
 
〔1〕徴収金の額を過小に算定していたもの
(33) 北海道 老人福祉施設保護事業 北海道 61 16,077,027 8,038,513 1,378 689 老人の対象収入を過小に算定していたものなど
(34)  同  同 札幌市 61 3,035,405 1,517,702 1,390 695 扶養義務者の認定を誤っていたものなど
(35)  同  同 苫小牧市 61 536,576 268,288 2,577 1,288 老人の対象収入を過小に算定していたものなど
(36) 秋田県  同 秋田県 61 3,338,713 1,669,356 1,629 814
(37)  同  同 秋田市 60 862,984 604,089 767 537 老人の対象収入を過小に算定していたもの
61 897,798 448,899 1,904 952 老人の対象収入を過小に算定していたものなど
小計 1,760,783 1,052,988 2,671 1,489
(38) 山形県  同 山形市 61 504,911 252,455 3,737 1,868
(39)  同  同 米沢市 61 473,215 236,607 1,088 544 扶養義務者の認定を誤っていたものなど
(40) 栃木県  同 宇都宮市 61 616,656 308,328 7,068 3,534
(41) 栃木県 老人福祉施設保護事業 足利市 61 363,538 181,769 1,887 943 扶養義務者がいないとしていたものなど
(42)  同  同 小山市 61 261,041 130,520 1,803 901 扶養義務者の所得税額を誤認していたものなど
(43) 神奈川県  同 川崎市 61 1,349,677 674,838 1,274 637 老人の対象収入を過小に算定していたもの
(44) 福井県  同 福井市 61 1,149,412 574,706 1,456 728 老人の対象収入を過小に算定していたものなど
(45) 愛知県  同 春日井市 61 183,047 91,523 1,605 802 扶養義務者の認定を誤っていたものなど
(46) 大阪府  同 東大阪市 61 915,060 457,530 1,276 638 扶養義務者がいないとしていたものなど
(47) 鳥取県  同 米子市 61 359,120 179,560 1,675 837
(48) 福岡県  同 福岡県 60 5,767,472 4,037,230 1,880 1,316 老人の対象収入を過小に算定していたものなど
61 6,383,822 3,191,911 2,627 1,313
小計 12,151,295 7,229,142 4,507 2,630
(49)  同  同 北九州市 60 3,666,311 2,566,418 1,098 768
61 3,883,220 1,941,610 2,029 1,014
小計 7,549,532 4,508,028 3,127 1,783
(50) 佐賀県  同 佐賀市 61 574,636 287,318 2,500 1,250 扶養義務者の認定を誤っていたもなど
(51) 大分県  同 大分県 61 3,368,391 1,684,195 2,334 1,167 老人の対象収入を過小に算定していたものなど
(52)  同  同 別府市 61 774,650 387,325 2,780 1,390 老人の対象収入を過小に算定していたもの
(53) 大分県 老人福祉施設保護事業 宇佐市 61 262,802 131,401 2,078 1,039 老人の対象収入を過小に算定していたものなど
(54) 宮崎県  同 宮崎市 61 809,108 404,554 6,681 3,340 扶養義務者の認定を誤っていたものなど
(55)  同  同 日南市 61 293,177 146,588 2,319 1,159
(56)  同  同 日向市 61 273,181 136,590 3,091 1,545

〔2〕 費用の額を過大に算定していたもの(補助対象事業費等の金額は各々の事業主体の分の合計)
 

(57)

北海道

老人福祉施設保護事業
(注1)
北海道
ほか7市

61

21,343,884

10,671,942

3,098

1,549

民間施設給与等改善費の加算率の適用を誤っていたもの

(58)

佐賀県

 同
(注2)
佐賀県
ほか5市

61

4,073,691

2,036,845

3,018

1,509


(59)

大分県

 同
(注3)
大分県
ほか2市

61

4,748,974

2,374,487

2,473

1,236

(注4)

64,092,053

34,105,380

70,535

36,016

 この補助金は、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難な老人を特別養護老人ホームに、また、身体上若しくは精神上又は環境上の理由及び経済的理由により居宅において養護を受けることが困難な老人を養護老人ホームに、それぞれ入所させ養護した都道府県又は市町村に対して、当該措置に要する費用を補助するものである。そして、この交付額については、次の算式により求めることとしている。

補助事業の実施及び経理が不当と認められるものの図1

(対象収入 前年の収入から、租税、社会保険料、医療費等の必要経費を控除した後の収入)

 この場合、費用の額については、事業主体が施設の所在地域、入所定員等の別に応じて定められている1人当たり月額事務費と地域別に定められている1人当たり月額生活費とを加えた額に年間の入所人員を乗じて施設ごとに算出し、これに移送費等を加えて算定することとなっている。そして、当該施設が民間施設である場合、公立の施設に勤務する職員との給与格差を是正するなどして施設経営の安定を図るため、その施設について1人当たり月額事務費を算定する際には、施設の所在地の都道府県等が、当該民間施設に勤務する職員の平均勤続年数を基として別に定められた加算率により民間施設給与等改善費を算定し、これを加算することとなっている。

 しかして、上記の37事業主体のうち、〔1〕 北海道ほか23事業主体では、老人の対象収入を過小に算定していたり、費用徴収の対象となる扶養義務者の認定を誤っていたり、扶養義務者がいないとしていたりなどして徴収金の額を過小に算定したり、〔2〕 北海道ほか16事業主体では、誤って算出された民間施設給与等改善費を加算した1人当たり月額事務費を用いていたため、費用の額を過大に算定したりしていて、補助対象事業費を過大に精算していた。
 

(注1) 北海道ほか7市 北海道、札幌、小樽、北見、網走、江別、千歳、
富良野各市
(注2) 佐賀県ほか5市 佐賀県、佐賀、唐津、多久、伊万里、武雄各市
(注3) 大分県ほか2市 大分県、大分、津久見両市
(注4) 計の欄は、〔1〕 及び〔2〕 の合計であり、「補助対象事業費」及び「左に対する国庫補助金」の金額については、〔1〕 と〔2〕 の間で北海道、大分県、札幌、佐賀両市が重複しているので純計とした。

(戦傷病者福祉事業助成委託費)
 
(60) 鹿児島県 戦傷病者福祉事業 財団法人日本傷痍軍人会 47〜61 16,165 16,165 10,909 10,909 事業の一部不実施
支部:鹿児島県傷痍軍人会

 この委託費は、財団法人日本傷痍軍人会の支部である各都道府県傷痍軍人会が戦傷病者等に対して行う健康診査、健康相談等の戦傷病者福祉事業に要する費用を助成するもので、鹿児島県傷痍軍人会は、昭和47年度から61年度までの間に、委託費16,165,620円の交付を受け各年度の事業を実施したとしていた。

 しかし、実際は、一部の年度を除いては、事業を全く実施していなかったり、事業の一部を実施しただけとなったりしていて、この事業のために使用した経費は5,255,624円にすぎず、10,909,996円が過大に交付されていた。
 

合計 64,465,003 34,305,855 324,017 174,135