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  • 昭和62年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
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医療費に係る国の負担が不当と認められるもの


(62)-(84) 医療費に係る国の負担が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生本省 (項)老人福祉費
(項)国民健康保険助成費
厚生保険特別会計(健康勘定) (項)保険給付費 (項)老人保健拠出金
(項)退職者給付拠出金
船員保険特別会計 (項)保険給付費 (項)老人保健拠出金
(項)退職者給付拠出金
部局等の名称 社会保険庁、北海道ほか12都府県
国庫負担の根拠 老人保健法(昭和57年法律第80号)、健康保険法(大正11年法律第70号)、
船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)
事業の種類 老人保健法に基づく医療の実施、医療保険各法に基づく療養の給付
事業主体 国、市82、区17、町95、村13、組合4、計212事業主体
医療機関 公立1、法人13、個人12、計26医療機関

 上記の事業主体において、医療費の支払に当たり、誤った室料、特定患者収容管理料等の診療報酬の請求に基づいて支払っていて医療費124,661,252円(国庫負担の額70,338,405円)が不当と認められる。これを都道府県別に掲げると別表 のとおりである。

(説明)

 厚生省所管の医療に係る事業は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が健康保険法等の医療保険各法に定める被保険者(被扶養者を含む。以下同じ。)のうち老人保健法の規定に基づき、当該市町村の区域内に居住する老人(70歳以上の者及び65歳以上70歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。以下同じ。)に対して老人保健事業の一部として実施するものと、医療保険各法に定める保険者が上記の者以外の被保険者に対して行う療養の給付等とである。同省では、医療に係る老人保健事業については、市町村が医療機関からの診療報酬の請求に基づいて支弁した医療に要する費用の一部を負担しているほか、市町村等が国民健康保険の保険者として拠出する資金の一部を負担するとともに、国が行う健康保険等の保険者として資金を拠出することとなってる。また、医療保険各法に基づく療養の給付等については、国が行う健康保険等の被保険者に係るものは療養に要する費用の額から一部負担金に相当する額を控除した額を、市町村等が行う国民健康保険の被保険者に係るものは療養に要する費用の額から一部負担金に相当する額を控除した額等に所定の率を乗じて得た額を、それぞれ負担することとなっている。

 しかして、これらの国の負担の対象となる医療費の支払について調査したところ、前記212事業主体が行った老人保健法に基づく医療の実施及び医療保険各法に基づく療養の給付において、医療機関からの誤った診療報酬の請求に基づいて支払っているものがあった。

 いま、これらについて診療報酬別に示すと次のとおりである。

誤った室料等の請求に基づいて支払っているもの
74事業(9医療機関) 不当と認めた国庫負担の額 24,031,999円
誤った特定患者収容管理料等の請求に基づいて支払っているもの
88事業(9医療機関) 不当と認めた国庫負担の額 20,979,247円
誤った入院時医学管理料等の請求に基づいて支払っているもの
14事業(3医療機関) 不当と認めた国庫負担の額 5,585,693円
誤った注射料の請求に基づいて支払っているもの
24事業(3医療機関) 不当と認めた国庫負担の額 2,986,401円
上記以外の誤った請求に基づいて支払っているもの
29事業(2医療機関) 不当と認めた国庫負担の額 16,755,065円

(別表)

都道府県名 事業主体 不当と認めた医療費の支払件数 不当と認めた医療費 不当と認めた国庫負担の額 摘要

(室料等)
 
千円 千円
(62) 岩手県 花巻市ほか9市町村等 358 4,311 2,502 誤った室料等の請求に基づく支払
(63) 新潟県 糸魚川市ほか3町等 418 6,433 4,318
(64) 富山県 富山市ほか13市町村等 620 8,087 5,041
(65) 兵庫県 明石市ほか9市町等 274 2,880 1,830
(66)  同 西宮市ほか5市等 369 3,752 2,210
(67) 佐賀県 佐賀市ほか27市町村等 526 5,681 3,250
(68) 佐賀県 鳥栖市ほか8町村等 404 5,349 2,547 誤った室料等の請求に基づく支払
(69)  同 佐賀郡富士町ほか8市町村等 251 3,632 2,331
小計 3,220 40,129 24,031

 入院患者の室料、看護料及び入院時医学管理料(以下「室料等」という。)は、診療所における入院患者の月平均の数が定数(注) を超過した月の翌月分の請求に当たっては、健康保険法及び老人保健法の規定に基づく診療報酬点数表の点数に100分の80を乗じて算定することになっている。

 しかし、上記の請求に当たり、花巻市ほか7市町に所在する9医療機関は入院患者の月平均の数が定数を超過していたのに翌月の室料等について上記の率を乗じることなく算定しており、これら3,220件の請求に係る花巻市ほか73市町村等の医療費40,129,736円の支払は適切を欠き、これに対する国庫負担の額24,031,999円は負担の要がなかったものである。


(注) 
定数  診療所の入院患者数が医療法(昭和23年法律第205号)の規定に基づく届出をした病床の数に5を加えて得た数

(特定患者収容管理料等)
 
(70) 東京都 清瀬市ほか26市区 767 4,344 2,082 誤った特定患者収容管理料の請求に基づく支払
(71) 神奈川県 横浜市ほか13市町村 488 2,773 1,491
(72) 大阪府 岸和田市ほか11市町 485 2,507 1,289 誤った特定患者収容管理料及び運動療法料の請求に基づく支払
(73) 兵庫県 神戸市ほか11市町 365 5,214 2,013 誤った特定患者収容管理料及び処置料の請求に基づく支払
(74)  同 姫路市ほか8市町 300 1,261 559
(75) 福岡県 福岡市ほか11市町 1,158 6,705 3,897 誤った特定患者収容管理料の請求に基づく支払
(76)  同 北九州市ほか7市町 2,938 17,093 9,645
小計 6,501 39,899 20,979

 特定患者収容管理料は、特例許可老人病院(注) が寝たきりであって自ら体位交換を行うことが困難であるなどの所定の心身の状態にある患者を、特例許可病棟に収容している場合に算定することになっている。

 しかし、上記の請求に当たり、清瀬市ほか6市町に所在する9医療機関は所定の心身の状態にない患者についてまで特定患者収容管理料を算定しており、このほか、運動療法料及び処置料の算定も誤っており、これら6,501件の請求に係る清瀬市ほか87市区町村の医療費39,899,800円の支払は適切を欠き、これに対する国庫負担の額20,979,247円は負担の要がなかったものである。


(注)
 特例許可老人病院  主として老人慢性疾患の患者を収容する病院として医療法第21条第1項ただし書により知事の許可を受けた病棟を有する病院

(入院時医学管理料等)
 
(77) 北海道 滝川市ほか4市町 460 3,184 1,682 誤った入院時医学管理料、処置料等の請求に基づく支払
(78) 青森県 北津軽郡金木町 340 4,536 2,404 誤った入院時医学管理料及び給食料の請求に基づく支払
(79) 福岡県 福岡市ほか7市町 830 2,698 1,499 誤った入院時医学管理料、注射料等の請求に基づく支払
小計 1,630 10,419 5,585

 入院時医学管理料は、特例許可老人病院が患者を特例許可病棟に収容している場合には老人診療報酬点数表のうち特例許可老人病院について定められている点数によって算定し、患者を一般病棟に収容している場合には、特例許可病棟について適用される点数よりも割高な点数によって算定することになっている。また、この入院時医学管理料は、入院期間に応じて点数が逓減されるものであり、入院期間の算定における起算日については入院の日とされているが、いったん退院した患者が同一疾病で同一病院に再入院した場合においては、初回の入院の日を起算日として算定することになっている。

 しかし、上記の請求に当たり、滝川市及び福岡市に所在する2医療機関は、特例許可病棟に収容している患者について一般病棟に収容している場合に適用される点数によって算定しており、また、北津軽郡金木町に所在する1医療機関は、いったん退院した患者が再入院した日を起算日として算定していた。このほか、これら医療機関では注射料、処置料及び給食料の算定を誤っているものなどがあり、これら1,630件の請求に係る滝川市ほか13市町の医療費10,419,827円の支払は適切を欠き、これに対する国庫負担の額5,585,693円は負担の要がなかったものである。


(注射料)
 
(80) 岩手県 盛岡市ほか21市町村 527 1,738 965 誤った注射料の請求に基づく支払
(81) 長野県 長野市 86 3,067 1,520
(82) 石川県 金沢市 46 1,000 500
小計 659 5,805 2,986

 注射料は、一般病院にあっては点滴注射料、皮下、筋肉内注射料及び静脈内注射料(以下「点滴注射料等」という。)の点数に、特例許可老人病院にあっては点滴注射料等又は特例許可老人病院注射料の点数に、これらの注射に使用した薬剤の価格相当の点数を加算して算定するものであるが、これらの注射料のうち、特例許可病棟に収容している患者については、症状が重篤な場合は点滴注射料等を、重篤でない場合は特例許可老人病院注射料をそれぞれ算定することになっている。また、注射に使用する薬剤については、厚生大臣が承認した用量、効能等によることを標準とし、かつ、患者個々の症状に応じて使用することになっている。

 しかし、上記の請求に当たり、紫波郡都南村に所在する特例許可老人病院は、注射料について点滴注射料等と特例許可老人病院注射料とを重ねて算定しており、長野市及び金沢市に所在する2医療機関は、標準とされている用量又は効能によることなく薬剤を使用してこれにより算定していた。このため当局の協力を得て患者個々の症状について調査したところ、症状が重篤ではないのに点滴注射料等をも請求するなどしていたものが527件、上記の使用方法によることなく薬剤を使用していると認められるものが132件あり、これら659件の請求に係る盛岡市ほか23市町村の医療費5,805,960円の支払は適切を欠き、これに対する国庫負担の額2,986,401円は負担の要がなかったものである。


(その他)
 
(83) 青森県 青森市 1,678 3,052 1,830 誤った処方せん料の請求に基づく支払
(84) 石川県 河北郡高松町ほか27市町等 467 25,353 14,924 誤った処置料の請求に基づく支払
小計 2,145 28,405 16,755

 処方せん料は、保険薬局において調剤を受けるために、医療機関が患者等に処方せんを交付した場合に算定することになっており、また、処置料は、酸素吸入等による処置を行った場合には使用した酸素の購入価格に基づき算出した額を加算して算定することになっている。

 しかし、上記の請求に当たり、青森市に所在する1医療機関は処方せん料を請求したもののうち1,678件については、いずれも処方せんを直接、保険薬局に交付しているのに、患者等に直接交付したとして算定しており、また、河北郡高松町に所在する1医療機関は処置料を請求したもののうち467件については、いずれも処置に使用した酸素の購入価格が1リットル当たり0.643円であるのに誤って6.43円として算出した額により算定しており、これら2,145件の請求に係る青森市ほか28市町等の医療費28,405,929円の支払は適切を欠き、これに対する国庫負担の額16,755,065円は負担の要がなかったものである。
 

14,172 124,661 70,338