科目 | 蚕糸砂糖類価格安定事業団 (砂糖類価格安定勘定) (款)糖価安定事業費 |
部局等の名称 | 農林水産省 |
蚕糸砂糖類価格安定事業団 | |
業務の概要 | 蚕糸砂糖類価格安定事業団が国内産糖の価格支持を図るため沖縄県産甘しゃ糖をその製造事業者から買い入れ、買入価格より低額で直ちに売り戻しその売買差額を支払う業務 |
支払先 | 3甘しゃ糖製造事業者 |
支払売買差額 | 29,723,088,839円(昭和60事業年度〜62事業年度) |
蚕糸砂糖類価格安定事業団(以下「事業団」という。)では、沖縄本島産甘しゃ糖で沖縄本島(以下「本島」という。)内の甘しゃ糖製造事業者でもある精製糖製造業者が製造したもの及び同製造業者に販売されるもの(以下「本島内販売分等」という。)の買入れ及び売戻しに当たり、売戻価格が適切でなかったため、支払った売買差額が総額約1億2000万円過大になっていると認められた。
このような事態を生じているのは、農林水産省では、沖縄県産甘しゃ糖の売戻価格について、県外の精製糖製造業者等に販売されることを予定した売戻価格だけを定めていて、本島内販売分等の売戻価格を定めていなかったことによるもので、販売の実態に即した売戻価格を定める要があると認められた。
上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。
(説明)
農林水産省では、砂糖の価格安定等に関する法律(昭和40年法律第109号)に基づき、国内産糖(沖縄県産及び鹿児島県産の甘しゃ(注1) 糖並びに北海道産のてん菜糖をいう。)に係る関連産業の健全な発展を促進し、もって甘味資源作物に係る農業所得の確保と国民生活の安定に寄与することを目的として、国内産糖の価格を支持するために必要な措置等を講じており、その一環として事業団に対し、国内産糖の売買業務を、その製造事業者との間で当該事業者が製造した国内産糖を買い入れ直ちに当該事業者に売り戻すという方法で行わせている。
国内産甘しゃ糖の買入価格については、原料であるさとうきびの再生産を確保することを目的として定めた最低生産者価格にその買入れ及びそれを原料とする甘しゃ糖の製造に要する費用の額を加えた額を基準として、また、売戻価格については、国内産甘しゃ糖をその需要者である精製糖製造業者等へ国内産甘しゃ糖に比べて安価な輸入甘しゃ糖と同一水準の価格で販売できるようにするため、輸入甘しゃ糖の国内価格(注2)
から国内産甘しゃ糖製造事業者が負担する精製糖製造業者等への販売に要する標準的な費用の額(以下「販売経費」という。)を控除した額を基準として、それぞれ農林水産大臣が定めることとされており、その結果、売戻価格は買入価格より低く設定されることとなり、事業団は売買業務を通じてこの買入価格と売戻価格との差額を売買差額として甘しゃ糖製造事業者に支払っている。
そして、同省では、本島産甘しゃ糖に係る販売経費については、県外に移送し精製糖製造業者等に販売することを予定して、これに要する海上運賃、販売手数料、保管料等の標準的な費用を算定し、昭和60事業年度から62事業年度までの間については、1t当たり16,650円から17,100円としていた。
しかして、本院において、事業団が上記期間に本島内の3甘しゃ糖製造事業者との間で実施した甘しゃ糖総量181,760 t の売買業務(買入価格1t当たり256,200円から271,000円、売戻価格1t当たり94,852円から107,919円、売買差額総額297億2308万余円)について調査したところ、その売戻価格について、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
すなわち、上記甘しゃ糖のうち83,384 t は、甘しゃ糖製造事業者でもある県内唯一の精製糖製造業者が、自ら製造した72,628 t を事業団との間で売買し、また、他の2事業者と事業団との間で売買された10,756 t を購入して、精製糖に加工するなどしているものであるが、事業団では、これらの甘しゃ糖の売戻しに当たり、県外の精製糖製造業者等に販売されることとして定められた売戻価格をそのまま適用していた。しかし、この売戻価格の算定の基礎となった販売経費は、本島産甘しゃ糖を県外に移送し精製糖製造業者等に販売するのに要する費用として算定されたものであるから、県外に移送されることのない本島内販売分等について上記売戻価格を適用したことは適切とは認められない。
いま、仮に上記の 83,384 t について販売の実態に即した販売経費を算定すると1t当たり15,200円となるので、これを基礎とした売戻価格は1t当たり96,302円から109,369円となり、これにより売買差額を計算すると、総額は296億0218万余円となり、前記支払総額297億2308万余円は約1億2000万円過大になっていると認められた。
このような事態を生じているのは、農林水産省において、本島内販売分等について、その販売の実態に即した売戻価格を定めていなかったことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、63年11月に、沖縄県産甘しゃ糖に係る販売経費について、新たに本島内販売分等の区分を設けてその額を算定し、これを基礎とした売戻価格を昭和63年産以降に適用することとする処置を講じた。
(注1) 甘しゃ糖 さとうきびを原料として製造され、分みつされた砂糖で精製糖等以外のもの
(注2) 輸入甘しゃ糖の国内価格 事業団の輸入甘しゃ糖の買入価格である平均輸入価格に調整金等及び関税相当額を加えた額