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  • 昭和62年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第8 運輸省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

ケーソン製作における型枠損料及び外足場損料の積算を適正なものに改善させたもの


(1) ケーソン製作における型枠損料及び外足場損料の積算を適正なものに改善させたもの

会計名及び科目 港湾整備特別会計(港湾整備勘定) (項)港湾事業費
(項)北海道港湾事業費
(項)沖縄港湾事業費
国庫債務負担行為(港湾整備勘定) (事項)直轄港湾改修事業
  (事項)北海道直轄港湾改修事業
  (事項)沖縄直轄港湾改修事業
部局等の名称 第一港湾建設局ほか4港湾建設局
北海道開発局小樽開発建設部ほか7開発建設部、沖縄総合事務局
工事名 新潟港(東港地区)防波堤(西)工事(本体)ほか71工事
工事の概要 防波堤、岸壁等の築造に使用するケーソンを製作するなどの工事
工事費 昭和61年度国庫債務負担行為 3,933,656,000円
昭和62年度歳出 14,379,259,000円
昭和62年度国庫債務負担行為 1,378,000,000円
19,690,915,000円
請負人 東亜建設工業株式会社ほか14会社、南生・米盛建設共同企業体ほか
22建設共同企業体
契約 昭和61年10月〜63年3月 指名競争契約、指名競争後の随意契約

  上記の各工事において、ケーソン製作工事の型枠損料及び外足場損料の積算が適切でなかったため、積算額が約4830万円過大になっていた。
  このように積算額が過大になっているのは、積算基準において型枠及び外足場の損料対象期間に関する規定が不備であったことによるもので、積算基準を適正なものに改める要があると認められた。

  上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

 運輸省では、港湾施設の整備を計画的に推進するため、防波堤、岸壁等の築造工事を毎年度多数実施しているが、このうち、第一港湾建設局ほか4港湾建設局(注1) 、北海道開発局小樽開発建設部ほか7開発建設部(注2) 及び沖縄総合事務局において、昭和61、62両年度に施行している新潟港(東港地区)防波堤(西)工事(本体)ほか71工事(工事費総額196億9091万余円)は、新潟港ほか38港における防波堤、岸壁等の施設の本体となるケーソン(注3) 545函(製作費の積算額129億7610万余円)の製作等を実施したものである。
 ケーソンの製作工事は、通常、陸上、フローティングドック(注4) 等で、数函を同時に又は数函を繰り返し施工するもので、1函を数層に分割し、第1層から順次上の層ヘコンクリートを打ち継いで製作することとしているが、上記の各工事の積算について検査したところ、次のとおり、ケーソン製作における型枠損料及び外足場損料の積算について適切でないと認められる点が見受けられた。

(1) 型枠損料の積算についてみると、運輸省が制定した「港湾・空港請負工事積算基準 (港湾)」(以下「積算基準」という。)に基づき、鋼製型枠(長さ1.5mx幅0.3m)をケーソン製作現場に搬入後、ケーソンの形状に合わせてあらかじめ各層に繰り返し使用できるよう組み立てておき、これをコンクリートの打ち継ぎの都度スライドさせて、各層のコンクリートを打設することとしており、その損料は1日1m2当たりの型枠使用料に搬入される型枠の面積及び供用日数を乗じて算出し、72工事の型枠損料を6億5577万余円と算定していた。そして、この供用日数の算出についてみると、鉄筋組立てから型枠組立て、コンクリート打設、養生及び型枠外しまでの1層当たりの基本日数がケーソンの大きさにより4.5日から6.5日に定められており、これに休止率を考慮した日数を加えてから層数を乗じて得た日数に、据付現場等にえい航する際の衝撃等に耐え得る強度になるまでの進水前養生等に要する日数(以下「進水前養生等の日数」という。)として5日、進水に要する日数として1日(ただし、最終函については考慮しない。)及び数函を同時に製作する場合はその同時製作函数に応じた割増し日数を加えた日数を製作基本日数とし、さらにこの製作基本日数に搬入、搬出日を加えることとしている。

 しかしながら、上記によれば、型枠の供用日数として最終函についても進水前養生等の日数の5日を見込むことになるが、最終函の型枠外し後は、次函の製作のために現場に存置することなくケーソン製作現場から撤去することができるのであるから、最終函の供用日数としては型枠取外しまでの日数を計上すれば足り、型枠は通常、コンクリートが打設後3日程度を経過すればそれを取り外しても支障のない強度に達することから取り外しが可能であること及び最終層においても、他の各層と同様基本日数に養生のための日数1日が含まれていることから、最終函については進水前養生等の日数5日のうち型枠損料の対象となる供用日数としては、2日を計上すれば足りると認められた。

(2) 外足場損料の積算についてみると、積算基準では、ケーソン外壁面から0.5m離れた周囲に幅0.9mの鋼製枠組足場をケーソン天端まで設置することとして、その外足場損料は1日1m2 当たりの足場使用料に搬入される足場の面積及び供用日数を乗じて算出することとなっている。そして、この供用日数については積算基準において上記型枠損料と同一の製作基本日数に搬入、搬出日を加えた日数としており、本件72工事のうち51工事においてもこの方法により第1層の製作日数を供用日数に含めて外足場損料を5673万余円と算定していた。

 しかしながら、この51工事は、第1層の高さが2m未満であり、この場合鉄筋組立て、型枠組立て等に使用する足場は必要としないので、初函の第2層製作の際に搬入すれば足り、外足場の供用日数には初函の第1層の製作日数を計上すべきでなく、現に本件72工事においても一部の部局では計上しておらず、また、運輸省や他省庁の一般土木工事では、高さ2m未満については足場損料は計上しないことと定められている。
 いま、仮に上記により本件各工事の型枠損料及び外足場損料の積算を修正計算すると型枠損料において約4260万円、外足場損料において約560万円、計約4830万円低減できたと認められた。

  上記についての本院の指摘に基づき、運輸省では、63年11月に最終函の型枠供用日数及び第1層の高さが2m未満の場合における初函の外足場供用日数について積算基準を改訂し、64年1月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

(注1)  第一港湾建設局ほか4港湾建設局  第一、第二、第三、第四、第五各港湾建設局

(注2)  小樽開発建設部ほか7開発建設部  小樽、函館、室蘭、留萌、稚内、網走、帯広、釧路各開発建設部

(注3)  ケーソン  防波堤等の工事では、所定の個数の鉄筋コンクリート製の中空の箱をあらかじめ製作し、これを逐次現場にえい航して沈め、中に砂などを詰めて堤の主体とする工法が一般的に用いられている。この鉄筋コンクリート箱をケーソンという。

(注4)  フローティングドック  平らな甲板を利用してケーソンを製作し、両側及び底部の水室に注水して所定の深度まで沈め、ケーソンを進水させることができる作業用台船