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  • 昭和62年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
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雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったもの


(138) 雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定) (項)失業給付費
部局等の名称 北海道ほか24都府県(支給庁)
札幌公共職業安定所ほか184公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方 525人
失業給付金の支給額の合計 298,816,144円

 上記525人に失業給付金(基本手当及び再就職手当)298,816,144円を支給しているが、支給決定に当たって申告等に対する調査確認が十分でなかったため、147,695,922円(基本手当71,377,222円、再就職手当76,318,700円)が不適正に支給されていた。これらについては、本院の注意により、すべて返還の処置が執られた。これを都道府県ごとに集計して掲げると別表 のとおりである。 
   これは、北海道ほか24都府県(支給決定庁札幌公共職業安定所ほか238公共職業安定所)において失業給付金の支給を受けた者のうち、再就職した者18,903人について本院が調査した結果である。 

(説明)

 雇用保険は、原則としてすべての雇用労働者を被保険者とし、被保険者が失業したときにその生活の安定を図るなどのため失業給付金の支給を行うほか、雇用安定事業による雇用調整助成金及び特定求職者雇用開発助成金の支給等を行う給付金である。そして、失業保険には、基本手当、再就職手当のほか9種の手当等があり、このうち、

ア 基本手当は、受給資格者(注) が失業している日について所定給付日数を限度として支給するもので、公共職業安定所が、受給資格者から提出された失業認定申告書に記載されている就職、就労の有無等の事実について確認のうえ失業の認定を行って支給を決定し、

イ 再就職手当は、受給資格者が基本手当の所定給付日数の2分の1以上を残して安定した職業に就いた場合に支給するもので、公共職業安定所が、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書に記載されている雇入れ年月日等について調査確認を行って支給を決定し、
いずれもこれに基づいて、各都道府県が支給することとなっている。
 しかして、失業給付金の支給決定の適否について検査したところ、前記の239公共職業安定所のうち、

ア 基本手当については、札幌公共職業安定所ほか184公共職業安定所において、受給者が誠実でなく、再就職、就労していながらこれを失業認定申告書に記載していないため申告書の内容が事実と相違していたものなどがあったのに、申告書に対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行ったため、これに基づいて支給した基本手当が、北海道ほか24都府県で、本院が調査した受給者15,405人分の支給のうち522人分222,497,444円について71,377,222円、

イ 再就職手当については、札幌公共職業安定所ほか113公共職業安定所において、受給者が誠実でなく、再就職手当支給申請書に事実と相違した雇用年月日を記載していたものがあったのに、申請書に対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行ったため、これに基づいて支給した再就職手当が、北海道ほか24都府県で、本院が調査した受給者6,395人分の支給のうち240人分76,318,700円、それぞれ不適正に支給されていた。

(注)  受給資格者  事業所を管轄する公共職業安定所が事業主から提出された離職証明書に基づいて離職票を作成して離職した被保険者に交付し、その被保険者はこれを居住地方公共職業安定所に提出し、原則として離職日以前1年間に被保険者斯間が通算して6箇月以上あり、かつ、労働の意思及び能力があるにもかかわらず職業に就くことができない状態にあることなどの認定を受けることになっており、この認定を受けた者が受給資格者である。

(別表)

都道府県名 公共職業安定所 本院が調査した受給者数 不適正受給者数 左の受給者に支給した失業給付金 左のうち不適正失業給付金

北海道

札幌ほか17

1,324

51
千円
26,186
千円
7,596
札幌ほか5 189 7 2,615 2,615
小計 28,801 10,211
青森県 青森ほか4 500 16 2,859 1,092
青森ほか2 220 13 2,552 2,552
小計 5,411 3,644
秋田県 秋田ほか6 564 32 20,975 5,880
大曲ほか1 28 4 1,672 1,672
小計 22,647 7,553
群馬県 前橋ほか7 707 20 11,274 4,985
前橋ほか3 175 8 2,722 2,722
小計 13,996 7,707
埼玉県 川口ほか6 528 19 8,300 2,133
川口ほか4 269 10 3,123 3,123
小計 11,423 5,256
千葉県 千葉ほか7 837 23 6,284 2,732
千葉ほか5 443 20 7,731 7,731
小計 14,016 10,464
東京都 飯田橋ほか16 1,846 67 18,973 10,890
上野ほか14 1,301 54 18,144 18,144
小計 37,117 29,034
神奈川県 横浜ほか6 616 11 5,334 3,205
平塚ほか1 176 4 1,094 1,094
小計 6,429 4,300
山梨県 甲府ほか1 145 4 1,749 208
甲府 57 2 613 613
小計 2,363 822
岐阜県 岐阜ほか7 542 32 12,682 2,551
岐阜ほか4 185 9 3,015 3,015
小計 15,697 5,566
静岡県 静岡ほか5 420 17 6,284 1,889
静岡ほか5 305 9 3,657 3,657
小計 9,941 5,546
愛知県 名古屋東ほか11 808 28 15,897 2,820
名古屋東ほか8 547 18 6,071 6,071
小計 21,969 8,891
京都府 京都西陣ほか5 470 18 8,731 1,418
京都七条ほか2 113 4 407 407
小計 9,138 1,825
大阪府 大阪東ほか10 951 24 9,735 2,367
大阪東ほか7 501 15 4,386 4,386
小計 14,121 6,753
兵庫県 神戸ほか8 751 15 4,457 2,004
神戸ほか6 496 8 1,980 1,980
小計 6,437 3,984
島根県 松江ほか6 626 33 9,527 3,828
松江ほか3 210 10 2,452 2,452
小計 11,980 6,280
岡山県 岡山ほか6 433 12 5,987 1,246
岡山ほか5 283 8 3,269 3,269
小計 9,256 4,515
広島県 広島ほか7 646 14 9,845 3,216
広島ほか3 134 5 1,995 1,995
小計 11,841 5,212
香川県 高松ほか2 173 5 2,752 1,885
高松 49 2 370 370
小計 3,122 2,255
高知県 高知ほか2 269 7 2,955 1,182
高知 23 2 493 493
小計 3,448 1,675
福岡県 福岡中央ほか8 885 28 10,975 4,864
福岡中央ほか7 434 19 5,384 5,384
小計 16,360 10,249
長崎県 長崎ほか6 520 17 7,178 1,225
長崎ほか3 141 5 1,433 1,433
小計 8,611 2,659
熊本県 熊本ほか2 261 12 3,801 814
熊本 65 1 91 91
小計 3,892 905
大分県 大分ほか3 330 9 4,425 496
大分ほか1 48 2 811 811
小計 5,236 1,308
宮崎県 宮崎ほか2 253 8 5,321 838
高鍋 3 1 231 231
小計 5,552 1,069
合計  185箇所 15,405 522 222,497 71,377
 114箇所 6,395 240 76,318 76,318
298,816 147,695

(注1) 上段は基本手当に係る分、下段は再就職手当に係る分である。

(注2) 不適正受給者のうち、基本手当と再就職手当の双方に係る者が237人、基本手当のみの者が285人、再就職手当のみの者が3人おり、したがって、不適正受給の実人員は525人である。