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  • 昭和62年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第4 日本道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

トンネル工事で計測作業に使用するリフト車の運転に要する経費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


(1) トンネル工事で計測作業に使用するリフト車の運転に要する経費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (款)高速道路建設費 (項)建設工事費
部局等の名称

札幌、仙台、東京第一、東京第二、新潟、大阪、広島、高松、福岡各建設局

工事名 道央自動車道嵐山トンネル工事ほか57工事
工事の概要 高速道路建設事業の一環としてトンネルを新設するなどの工事
工事費 195,968,000,000円
請負人 大成建設株式会社・三井建設株式会社道央自動車道嵐山トンネル工事共同企業体ほか57共同企業体
契約 昭和60年4月〜63年3月 指名競争契約、随意契約

 上記の各工事において、トンネル工事で計測作業に使用するリフト車の運転に要する経費の積算が適切でなかったため、積算額が約1億4900万円過大になっていた。
  このように積算額が過大になっているのは、近年、トンネル内で使用する計測機器が機械式から電気式のものに変わっていて、足場としてリフト車を使用しないでも計測が可能となっていたり、リフト車を使用して計測する場合でも作業効率のよい伸縮タイプのリフト車が使用されていたりしていて、その使用時間が短くなっている状況であるのに、これを積算の基準に反映させていなかったことによるもので、施工の実態に即した積算をする要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

  日本道路公団(以下「公団」という。)では、高速道路等の建設工事を毎年多数実施しているが、このうち、札幌建設局ほか8建設局が昭和62事業年度に施行しているトンネル等の工事58工事(工事費総額1959億6800万円)について検査したところ、次のとおり、トンネル工事で使用するリフト車の運転に要する経費の積算について、適切でないと認められる点が見受けられた。
  すなわち、上記各工事は、高速道路建設事業の一環として、トンネル等の工事を施行するもので、このうち、トンネル工事はいずれもNATM(注) により施工することとしている。そのため、掘削に伴うトンネルの変形や、地山の挙動を現場で計測して確認し、支保部材の効果を的確に把握する必要があり、上記各工事においても計測作業として、掘削開始から掘削完了後覆工までの間(以下「計測期間」という。)、ロックボルトに働く引張力を計測するロックボルトの軸力測定、トンネル周辺の地山挙動を計測する地中変位測定、トンネル断面の変形量を計測する内空変位及び天端沈下の測定等を行うこととしている。
  そして、この計測作業にはトンネルアーチ部等の高所で行うものがあり、そのための足場としてリフト車を使用することとしているが、その運転に要する経費の積算についてみると、公団本社制定の「土木工事積算要領」(以下「積算要領」という。)に基づき、トンネル1本当たり計測期間中1日4時間使用するなどとして、リフト車の運転損料を算出し、これに燃料費、雑品費を加えて、この経費を総額299,071,426円と算定していた。

  しかしながら、近年、計測機器等の改良に伴い、ロックボルトの軸力測定及び地中変位測定については、トンネルアーチ部等に、従来は機械式の測定アンカーを設置し、リフト車を使用して各測定アンカーの設置箇所においてその変位を直接ダイヤルゲージで計測していたのに対し、最近は電気式の測定アンカーを設置し、これとケーブルで接続されている側壁下部に設けられたスイッチボックスに携帯用デジタル測定器を接続してその変位を読み取ることができるようになったことから、リフト車を使用する必要がなくなっていたり、内空変位及び天端沈下の測定等については、これに使用するリフト車が、従来はブームが屈折するタイプのものが多く使用されていたのに対し、最近はブームが伸縮するタイプのものが普及して、作動速度が速く、1箇所に留まって行う作業範囲も広くなったりしていることから、リフト車の使用時間が短くなっている状況である。

  現に、会計実地検査の際、施工の実態について調査したところ、ロックボルトの軸力測定及び地中変位測定に使用されている計器はほとんどが電気式のものであり、これらについてはリフト車を使用しておらず、また、内空変位及び天端沈下の測定等に使用されているリフト車も、そのほとんどが伸縮タイプのものとなっており、この結果リフト車の使用時間はトンネル1本当たり計測期間中1日2時同程度と大幅に減少している状況であった。
  したがって、上記各工事で使用するリフト車の運転に要する経費の積算については、施工の実態に即して行うのが適切であったと認められ、これにより積算したとすれば、積算額を約1億4900万円低減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、日本道路公団では、63年10月に積算要領を改正して、リフト車の運転に要する経費を施工の実態に即したものに改め、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

(注)  NATM  New Austrian Tunnelling Method の略でナトムと呼ばれている。トンネルを掘削した後、コンクリート吹付け、ロックボルトなどを適宜組み合わせ施工することにより、地山の持っている支持力を最大限に生かす工法

(参考図)

(参考図)