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  • 昭和62年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第14 日本電信電話株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善、の処置を講じた事項

音声符号化多重変換装置の必要数の算定方法を適切なものに改善させたもの


(1) 音声符号化多重変換装置の必要数の算定方法を適切なものに改善させたもの

科目

建設投資勘定
部局等の名称

東京、関東、関西各総支社及び神奈川支社ほか11支社並びに中央、東海、関西各ネットワーク支社

購入物品

ディジタル通信網とアナログ通信網を接続するために必要な音声符号化多重変換装置を構成する音声チャネル盤81,570枚、信号チャネル盤32,457枚、チャネル変換部用品21,608個等の機器

購入価額 15,316,332,535円
契約の相手方 日本電気株式会社ほか3会社
契約 昭和60年3月基本契約

昭和61年7月〜63年5月個別契約

 上記の各部局では、音声符号化多重変換装置(以下「符号化装置」という。)の購入に当たって、実際に収容される回線数に対して機器の必要数を過大に算定したり、未利用機器の利活用について十分考慮していなかったりしたため、約3億5200万円相当の機器の購入が過大となっていた。
 このような事態を生じているのは、符号化装置が通信方式の異なるアナログ通信網とディジタル通信網を接続するための装置で両通信網の混在期に一時的に必要となる設備であり、通信網のディジタル化の進展に伴いいずれは購入の必要がなくなり、漸次廃棄されるものであるから、必要数の算定方法を明確にして可能な限りその購入を抑制すべきであるのに、これを示していなかったことなどによるもので、これを明確に示して適切な算定を行わせる要があると認められた。

上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

 日本電信電話株式会社では、高度情報通信システムの実現を図るため、通信網のディジタル化を逐次推進しており、その構成要素であるディジタル交換機の導入及び光ファイバケーブル等によるディジタル伝送路の構築に毎年度多額の設備投資を行っている。このため現在はアナログ通信網とディジタル通信網が混在している状況にあり、アナログ交換機とディジタル伝送路、ディジタル交換機とアナログ伝送路等をそれぞれ接続するため、アナログ信号からディジタル信号への変換又はディジタル信号からアナログ信号への変換を行うとともにこれらの信号を多重化するなどの機能を有する符号化装置を多数購入し、電話局、ネットワークセンタ等に設置している。

 この符号化装置は、〔1〕 アナログ信号からディジタル信号への変換又はディジタル信号からアナログ信号への変換を行う音声チャネル盤(以下「音声パネル」という。音声パネル1枚は6回線を収容できる。)、〔2〕 電話の接続等に必要な信号を送受する信号チャネル盤(以下「信号パネル」という。信号パネル1枚は12回線を収容できる。)、〔3〕 これらのパネルを装着するとともにディジタル信号を多重化するチャネル変換部用品(以下「変換用品」という。変換用品1個は音声パネル4枚及び信号パネル2枚まで装着でき、これにより24回線まで収容できる。)、及びその他の機器から構成されている。そして、符号化装置の購入要求を行う各総支社及び各支社並びに各ネットワーク支社では、当該年度に必要な回線数を定めた設備計画明細書(以下「明細書」という。)等において新増設することとなっている回線を既設又は新設の伝送路に収容するための設計、を行い、この設計に基づいて符号化装置を構成している音声パネル、信号パネル、変換用品等の必要数を算定することとしている。

 しかして、東京総支社ほか2総支社、神奈川支社ほか11支社(注) 及び中央ネットワーク支社ほか2ネットワーク支社(以下「総支社等」という。)が、丸の内電話局ほか240電話局等及び東京中央ネットワークセンタほか100ネットワークセンタ等に昭和62年度に設置した符号化装置(62年度に購入要求し63年度に設置したものを含む。)について、機器の必要数の算定方法、回線の収容状況等を調査したところ、次のとおり、適切でないと認められる事態が見受けられた。
 すなわち、総支社等では、音声パネル、信号パネル、変換用品等の必要数の算定に当たり、

(1)音声パネルは6回線単位で1枚必要であり、信号パネルは12回線単位で1枚必要であるとしてそれぞれ算定すれば足り、変換用品はこれにより算定された音声パネル及び信号パネルの数に応じて算定すれば足りるのに、実際に収容する回線とは関係なく各変換用品すべてにその最大装着枚数である音声パネル4枚及び信号パネル2枚を装着することとして、一律24回線単位で設計し、これにより機器の必要数を算定していたり、

(2)前記明細書等で示されている回線数のほかに、将来の変動分として過大に見込んだ回線数を基にして必要数を算定していたり、

(3)既設の符号化装置に設置されている機器のうちに回線が収容されていないものがあるのに、これらの未利用機器の利活用について十分考慮することなく必要数を算定していたりして、

これらの機器の必要数を音声パネル81,570枚、信号パネル32,457枚、変換用品21,608個等(購入価格15,316,332,535円)と算定し購入要求していた。その結果、会計実地検査当時、回線が収容されていない音声パネル等が多数見受けられる状況であった。

 このように、未利用の機器が生じるような設計を行い、この設計に基づいて購入、設置しているのは、本件符号化装置が、〔1〕 アナログ通信網とディジタル通信網の混在期に一時的に必要となる設備で、通信網のディジタル化の進展に伴いいずれは購入の必要がなくなって漸次廃棄されるものであり、〔2〕 技術革新等によりその価格が年々低下しているものであり、〔3〕 回線が増加する場合には、パネル単位で機器の増設が容易に行えるものであるので、可能な限りその購入は抑制されるべきであることからみて、経済的、効率的な設備投資とは認められない。

 いま、仮に、符号化装置の必要数の算定に当たっては、既設の未利用設備を利活用することとし、音声パネル等は一律24回線単位で算定していたものを6回線単位とするなどして必要数を算出することとして、これに明細書等の変更がある場合にも適切に対処できるように前年度の実績等に基づき算出される予備の回線数に応じた音声パネル等を加算して本件符号化装置の必要数及び購入金額を算定すれば、音声パネル78,299枚、信号パネル31,358枚、変換用品21,297個等14,964,330,599円で足りたこととなり、音声パネル3,271枚、信号パネル1,099枚、変換用品311個等約3億5200万円相当の購入が過大であったと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、日本電信電話株式会社では、63年11月、「PCM形多重変換装置購入等の適正化の徹底について」の通知等を発し、符号化装置の適正な購入を図るための処置を講じた。

(注)  神奈川支社ほか11支社  神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、横浜、京都地方、兵庫、奈良、滋賀、京都、神戸各支社